#22 アリエの日記 12月12日2138年

中央街に着いた! 中央街は都会だって聞いてたけれど、思ったより全然廃れてる、っていうか、活気がなかった。

治安が悪い! なんだかごろつきみたいな人たちもいるし、良い身なりをしてる人は決まって護衛を脇に立たせてた。

それになんだか嫌な臭いがするなあ。私はちょっと残念がっていたけど、デイルおじさんは懐かしそうな顔をしていた。おじさんにとってはずっと住んでた町だもんね。

一応、だけど以前のおじさんの住んでた部屋に行ってみた。ドアにはもう、新しい住人の表札がかけられていて、私たちは黙ってその場を後にした。

おじさんはほんの少しだけ寂しそうだった。


しょうがないのでホテルに部屋を取って、外でファストフードを食べながら今後の事を話すことにした。

「とりあえず、エリーさんのお墓参りしたいな。ね、ね、私のこと、紹介してよ。相棒だって」

おじさんは「そうだな……」と薄く笑った。

その時だった。「アリエちゃん!! 中央街まで来てたのか!」私の名前が呼ばれたのは。

「あ、あれ、エルマンさん、奇遇だね! こんなところで……」

「デイル! お前の奥さん殺した奴、もう捕まってたぞ!」エルマンさんは私たちのテーブルに着くなり、そう叫んだ。

デイルおじさんは、驚いていた。「……犯人が?」

「ああ。……俺もお前さんの探してる犯人の情報を追っていたんだ。そしたら、指名手配犯と同一だって情報があってな。目撃情報を頼りに南に向かったんだ。そしたら……」

エルマンさんはバン! とポスターをテーブルに叩きつける。指名手配のポスターだ。

「こいつが警官の車に乗ってるところに偶然遭遇したんだ! 奴はとっくに捕まって、この町に護送中だ」

「なるほどな……。いつ来るか、分かるか?」おじさんはいつになく怖い顔をしていた。私はおじさんのその言葉の意味を理解した。

「おじさん、もう止めようよ……。捕まってるんだから、いいじゃん……」

「そんなわけにはいかない。言っただろう。普通の生活を送るのは、何の手がかりも無かったら、の条件付きだ、って」おじさんは冷たく言い放った。私の顔を見ようともしない。

「今日中には、門に到着するだろう」

「分かった。……アリエ、お前は来るな」おじさんはテーブルを立つと、お金を置いた。「情報料だ」そう言った。

「ブルーのミニクーパーだ! 気を付けろよ!」エルマンさんがデイルおじさんの背中に声をかける。私は、おじさんを追いかけることができなかった。

「なんで……。なんで行っちゃうのかな……」

エルマンさんはキザったらしく答えた。「男にはな……命を懸けてでもやらなきゃいけないことがあるんだよ……」

「エルマンさんのバカ!」私は頭を抱える。エルマンさんは優しい口調で話し始めた。

「大丈夫だ。心配すんな。――アリエちゃんはどうしてほしかったんだ?」

「わ、私はおじさんに復讐なんて、諦めてほしかった……。わざわざ人殺しなんてするんじゃなくて、私と一緒にいてほしかっただけ……」

「それじゃあ、デイルがかわいそうだ」エルマンさんはすっぱりとそう言いきった。かわいそう……?

「デイルはな、きっと、けじめをつけるために、復讐が必要なんだ。過去を切り捨て、自分が生きるために」

「で、でも、おじさんは復讐が済んだら自分も死ぬって……」

「あいつの目、以前会ったときとまるで変わってやがったよ」

「目……?」私はデイルおじさんの、炎が燃えるような赤い目を思い出す。

「ああ、生きた目だ。きっとデイルを変えたのは、アリエちゃん、君なんだろうな……」

その言葉を聞いて、私は立ち上がった。

「ありがと、エルマンさん!」そう言って、店を飛び出した。


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