第20話:決着ヘラクレス
イーグルがヘラクレスへ向かって行くのを、アトラス小隊の生き残り二機も確認していた。
『中尉! 敵の蒼十字がヘラクレスへ――うわっ!』
そう叫んだ瞬間、ガーゴイルに衝撃が襲った。
それはガーゴイルの腕が吹き飛んだ衝撃だった。
そしてアトラス小隊は、攻撃が来たであろう方向を向いた。
そこにいたのはカタストロを担いだエクリプスと、ビームガンを向けるイーグルヘッドⅡKがいた。
「隊長の所に行かせない!!」
「ここは我等イーグル隊が相手です!」
『えぇい! 新手か!』
放たれるカタストロを避けながら、ガーゴイルに乗るパイロットは焦っていた。
ヘラクレスは完全に沈める訳にはいかない。
しかし、それを阻止するには戦力が足りなかった。
「絶対に行かせない!!」
カレンは叫びと共にビームブレードを展開すると、そのままエクリプスはガーゴイルへと飛んでいく。
『馬鹿め! 勝利を焦ったか! そんな馬鹿でかいビームガンを持ったまま接近とは!!』
ガーゴイルは好機と判断し、エクリプスへ両腕からビーム刃を放出しながら迎え撃った。
「馬鹿はあんたよ! 私だってカタストロの使い方が分かって来たんだから!」
エクリプスは接近を急停止し、カタストロをガーゴイルへと再度向けた。
そして銃口からビームが拡散しながら放たれ、ガーゴイルを襲った。
カレンもカタストロの使い方を分かって来たのだ。
調整次第で、こういう攻撃も出来ると。
接近戦と見せかけての拡散ビームは、そのままガーゴイルを呑み込んだ。
『ば、馬鹿な!? 私が嵌められたとは――』
そう言ったと同時に、ガーゴイルはビームの雨に呑まれ、手足が捥がれながら爆散して消えた。
『隊長!? 己! 良くも!!』
「隻腕でも挑むか! その意気や良し! しかし、これは戦場だ!!」
クロックは敵を褒めた。
隻腕でもビーム刃で挑む意気を。しかし、これは戦争なのだ。
クロックは愛機の機動力を利用し、一気に腕のない左側面へと回った。
そして一気に接近して蹴り、バランスを崩させた。
『あ、ああぁぁ!!』
「哀れな……眠れ!!」
クロックはそう言って、ビームガンの引き金を引いた。
そのままビームはガーゴイルを貫き、数秒後に爆散する。
「これで敵は全部!」
「イーグル2! まだヘラクレスは健在ですよ!」
「大丈夫よ……隊長なら」
クロックの言葉に、カレンはそう言ってヘラクレスを見た。
そこでは既にヘラクレスが黒煙を上げ、その中心でイーグルがアクティオンを振り回していた。
♦♦♦♦
ヘラクレスへ迫ったレインは、可能な限り破壊を尽くしていた。
近くにある機銃や砲台。目に付いたら全て、アクティオンで切り裂いた。
そしてエンジン部と思う場所へアクティオンを突き刺すと、黒煙を上げながら周囲から爆発が起こり始める。
『ヘラクレス! 損耗率70を突破! 限界です!』
『ま、まさかヘラクレスが……たった1機のASによって落とされると言うのか!! この公国の守護神がぁ……!!』
『将軍!! 退避を!――退避! 総員退避!!』
発狂した様に叫び上官へ最後まで言葉を掛けるが、無理だと分かると艦内放送で退避命令を連邦兵は出した。
しかし、その直後にヘラクレスは大きな爆発を起こす。
その爆発から飛び出す様に空へとイーグルが飛んでいき、レインは上空からヘラクレスの最後を目撃した。
『イーグル1がヘラクレスを撃破! やりました! イーグル1がやりました!!』
オペレーターの喜ぶ声を聞きながら、レインはヘラクレスの最後をずっと見ていた。
爆発炎上し、砲台にも誘爆。
最後は爆弾の様に強烈な衝撃波を生み、ヘラクレスは爆発して消えていった。
「隊長!」
「イーグル1! 無事ですか?!」
「……あぁ、終わったよ」
カレンとクロックの言葉に、レインは通信で弱弱しい声で頷いた。
また沢山の命が終わった。
その光景にレインは胸に穴が開いたような、虚無感に襲われる。
この感覚が嫌で戦いから逃げたのに。
レインはそう思いながら、何をしているのか一瞬分からなくなった。
しかし、傍にいるカレンとクロックを見て我に返った。
――あぁ、俺は守れたのか。そうだ彼等を守ったんだ、仲間を。
一瞬、戦争の闇に呑まれかけた――否、思い出しそうになったがカレン達が無事なのを見て、レインは嬉しそうにほほ笑んだ。
こうして公国の国境――その一つの防衛を崩した事で、友軍は国境周辺を掌握。
徐々に、戦局は圧倒的劣勢から、互角になろうとしていた。
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