第四章:巨大戦車ヘラクレス
第17話:変化する戦況と大陸用戦車
艦隊撃破から数日後、レイン達は再びブリーフィングルームへ集まっていた。
クロックを始め、補充されたイーグル隊の面々。
彼等ブリーフィングルームにいるので、随分と賑やかになったなとレインは思った。
――何人が生き残るんだろうか。
それは当然の想いであった。
全員が生きて帰る事はないだろう。
もしかしたら自分が死ぬかもしれない。
レインはそう思いながらも、それでも頑張ってカレン達を守ろうと誓った時だった。
ブリーフィングルームにアール大佐と、彼の秘書官が入って来た。
「諸君! 早速だが始めよう。――まず、喜んでくれ。我々の活躍もあって各地で反撃作戦が始まった」
アールはそう言ってディスプレイに情報を表示させた。
当初、奇襲によって陥落した基地が幾つかは奪還されており、全ての国と地域で反撃が開始されていた。
特にレイン達の活躍が大きいのだろう。
共和国の猟犬・ガルム中隊・共和国の怪物・カリュブディス艦隊。
それらの活動地域だった場所の反撃は凄まじく、基地を幾つも奪還していた。
海上も既に正規軍の領域となり、海上補給が可能になったのもある。
このまま上手く行く。
そう思いたいが、レインは気付いた。
ディスピア公国との国境付近。
そこでは各軍が撃破されたマークが表示されて、明らかに何かが起こっている事に。
「このディスピア公国付近の、これはなんだ? 何かがあったとか見えないんだが?」
「……実は、今回の作戦はまさにそれだ」
少し表情を険しくしながらアールは画面へ表示した。
そこに映ったのは一台の戦車だった。
「戦車……? けど、なんか……」
「付近の山とかと大きさを見ると……」
カレンとクロックは戦車の違和感に気付いた。
そして他の隊員達も違和感の正体に気付き、ざわざわし始めた。
それを見て、レインも意味が分かったと呆れるしかなかった。
「遠近感狂うな……デカすぎる」
「そうだ。嘗てディスピアが作った言われていた大陸攻略用戦車――ヘラクレス級。全長は500mはあるらしい」
アールの言葉を聞いてカレンが驚いて立ち上がった。
「500!? それ戦車じゃなく、大型の戦艦レベルじゃない!?」
「セルバンテスよりも大きいとは……!」
クロックもドン引きしていた。
同時に嫌な予感も。
それを彼等の代わりに聞いたのはレインだった。
「大佐……さっき作戦と言ったな。つまり、次の俺達の相手は……」
「……あぁ、このヘラクレスだ」
アールの言葉に周囲はざわつきが強くなった。
明らかに相手がデカすぎるのだ。ASでも、どこまで優位性が取れるか疑問でもある。
「作戦はあるのか? 見たところ、巨大な主砲。それ以外にも多数の火器を搭載している様に見える。だから突破できなかったんだろ?」
「その通りだ。主砲――アルケイデスは、超大型のビームキャノン砲だ。ビームを圧縮し、一気に放つ。これによって近付く前に味方は壊滅したそうだ」
恐らく射程も長いのだろう。
レインはそうなると、どうやって近付くのかがカギだと思った。
「作戦はあるんですか!?」
「ある!――だが、それを可能とするパイロットは一人だけだ」
カレンの言葉にアールはそう言うと、レインの方を向いた。
それをレインは笑うしかなかった。
「ハッキリ命令すれば良いんだよ。全く、お前は本当に変わらないな」
「……すみません」
アールは申し訳ない様に瞳を閉じながら言った。
しかし、レインは別に怒っていない。
そうなると分かっていたから、既に覚悟は出来ていた。
「さぁ、教えてくれ。勝つ為の作戦を」
レインはそう言ってアールを見る。
今、ヘラクレス攻略が始まろうとしていた。
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