第16話:僅かな休息
艦隊は沈んだ。
蘇ったエース・レインと、新たなるエース・カレン達の活躍によって。
この戦果の影響は大きく、各国の軍は海上からも連携を強め、各地で反撃を開始。
一部では攻勢に出たことで、クレセント連合の勢いを止める程であった。
既に敵エースも、バルトロの猟犬・ガルム中隊・バルトロの怪物がレインの手によって撃墜されている。
その情報は各地の軍の士気を上げ、徐々に流れを変え始めていた。
『死んだとされた伝説のエースが蘇った』
その噂も各地に行き渡り始め、彼等も勝てるという活力が沸いていた。
――けれど、その功労者であるレインが現在、セルバンテスの食堂でせっせと調理をしている事など、彼等は知る由もない。
♦♦♦♦
現在、セルバンテスの食堂では勝利の宴が開かれていた。
レインが全員に奢ると言った約束もだが、アール大佐も今日までの功労者達へのご褒美として許可してくれたのだ。
「は~い、ハンバーグカレー、たこ焼きカレー、スタミナ丼、海鮮丼上がったぞ! 悪いが自分で持って行ってくれよ!」
そんな中でレインは食堂で調理に勤しんでいた。
他の食堂係がレインも休むように言ったが、レインはこっちの方がストレス解消だと言って聞かなかった。
その結果、皆もレインもお陰で命があるのだからと強くは言わなかった。
カレンに関しては、既に大盛りのハンバーグカレーに食らい付いていた。
その食いっぷりは他の男性パイロットが思わず立ち止まる程であり、まさに豪傑の食べ方だ。
「アハハ……パイロットはお腹が減りますからね」
クロックは静かに海鮮丼を食べていたが、時折、カレンの方を見ては苦笑している。
けれど、当のカレンはパイロットで腹が減るんだと、周りを気にせずに食らい続けた。
「すっごいおいしい……! ハンバーグの肉汁も、カレーのスパイスの深みも最高!――お代わりお願いします! 次はカツカレー丼で!」
「はぁ~い」
レインも気にしない事を選んだ。
寧ろ勝負だと言わんばかりに料理を作り、それを彼女へ提供をし続ける。
いつ死ぬか分からない現状だ。
満足に食べさせてやりたい。そんな気持ちもレインにはあった。
きっとここからは更に大変な戦いとなる筈だからだ。
結果を出した部隊は、更に険しい戦いに駆り出される。
それと同時に敵も警戒を強める事を、レインは知っている。
だから可能な限り、食事だけは満足させてやりたいと思い、彼は今も鍋やフライパンを振るうのだった。
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