第13話:海上の怪物

 潜水空母の登場により、戦場は混乱に包まれようとしていた。

 原因は、もう少しで壊滅まで追い込められた艦隊への援軍――潜水空母から出た敵AS部隊だ。


 その中でサイクロプスのシンボルを刻むエースは、セルバンテスからの迎撃を回避しながら急速に接近して来ていた。


「アッハッハッハ! このバーク・バークライの駆る、サイクロスには追い付けん様だな!」


 サイクロス――それは共和国が使っていたAS<サイクロン>をベースとした機体だった。

 高機動型AS――空の王者を目標として生産された機体を、バーク専用に一から製造された発展機だ。


 背部の大型の翼のバックパック、各部のスラスターにより、空を高機動で支配する怪物であった。


 その開発経緯は伊達ではない高機動で、サイクロスはセルバンテスの領空を獲った。


『敵AS接近! セルバンテスの上空にいます!』


『迎撃しろ! 甲板のイーグル隊にも伝えろ!』


 ブリッジではアールの檄が飛ぶ。

 そして甲板の<イーグルヘッドⅡ>で形成されたAS部隊は、一斉に上空のサイクロスへビームガンやマシンガンを撃ち始める。


 しかし、その攻撃をサイクロスは嘲笑うように回避した。

 実際、パイロットのバークはコックピットで大笑いしていた。


『アッハッハッハ! 犬共を始末した部隊! その実力はそんなもんか!――フンッ! この程度では俺の出る幕ではないが、仕事はせねばな! 全部隊! とっとと来い! この戦艦を落とすぞ!』


 バークの言葉に敵AS部隊――サイクロンとアウェスで形成された部隊は、次々と空母から発進し上空へと上がっていく。


 そしてバークの指示に従い、セルバンテスへ接近した時であった。

 接近した三機を巨大なビームが、薙ぎ払うように貫いた。 


『なんだと!?』


 爆散する部下の姿に驚き、バークはすぐにビームの方を見た。

 そこにいたのは、洗練された翼のバックパックを付け、肩に鎖の様な傷が付いた<赤い鳥>のマークがある機体――エクリプスだった。


「セルバンテスはやらせない!」


 カレンはそう叫び、カタストロは再び敵AS部隊へと放った。


『チッ! 大した火力だ……!』


 カタストロのビームをサイクロスは避けたが、背後にいた機体は避けられず爆散する。

 

 そこから甲板にいたイーグル隊の者達も上空へと上がり、敵AS部隊と交戦を開始した。


 それを見てバークは周囲の状況を見ながら、思わず舌打ちをする。


『チッ! 艦隊の馬鹿共の対空射撃のせいで思うように動けん! だが狙う相手は理解したぞ!』


『副隊長! 気を付けて下さい! 奴はエースです!』  


『分かってる!』


 クロックの言葉に頷きながら、エクリプスはサイクロスへカタストロを放ち、イーグルヘッドⅡ・Kもビームや胸部機銃で援護する。


『甘いんだよ!!』


 しかしサイクロスは、それすらも螺旋に飛行して回避した。

 そして一気に両機に間合いを詰め、狙いをカレンのエクリプスに定めた。


「チッ! 速い……!」


 カレンは間合いへ入られるとすぐに判断し、ビームブレードを抜いた。

 それと同じタイミングでサイクロスも従来よりも大きい、中型のビームブレードを抜いてエクリプスへと振り下ろした。


 それに対し、カレンもビームブレードで応戦した。


「クッ! なんで出力! カタストロを失いたくないのに!」


『アッハッハッハ! そんなに、そのビームガンが大事か! 判断が遅いパイロットは死ぬぞ!!』


 バークはそう叫び、徐々に鍔迫り合いをするエクリプスを押し始める。

 そこへクロックが援護しようと、ビームガンを放とうとすると、サイクロスの頭部がイーグルヘッドⅡ・Kの方を向いた。


「副隊長!!」


『雑魚は引っ込んでろ!!』


 バークが叫んだ瞬間、サイクロスの頭部――その一つ目の部分からされた。

 そのビームはイーグルヘッドⅡ・Kの左腕を貫き、軽い爆発を起こす。


「ぐうぅっ! まさか、そんな所から隠し武器を!?」


『頭部にあるのがカメラだけと言った覚えはない! さぁ! 消えろ! 鎖付き――ぐおぉっ!!?』


 エクリプスへトドメを刺そうとしたサイクロスに、強烈な衝撃が襲った。

 サイクロスは、そのまま吹き飛び、エクリプスと距離が開く。


 だがそこはエースだ。バークは態勢を、すぐに戻すと自身を攻撃した犯人を捉えた。


『成程な、ここから本番か!』


 そこにいたのは四枚の翼を持ち、蒼い渡り鳥が刻まれたイーグル・ストラトスEがいた。

 バークはすぐに自身が奴に蹴られた分かり、思わず獣の様な笑みを浮かべた。


 そして逆にカレンは、レインが来た事で嬉しそうに笑顔を向ける。


「隊長!」


「待たせたイーグル2! よく耐えた! こいつの相手は俺がする! お前はイーグル4から7を率いて艦隊を潰せ! イーグル3! お前は甲板に降りて指揮を執ってくれ!」


「了解! イーグル4、5、6、7! 着いてきなさい!」


「了解です!」


 レインの指示を聞き、カレン達は一気に動き始めた。

 そしてレインの駆るイーグルは、右手にビームガンを、左手にビームブレードを持ってサイクロス――バークと対峙する


「貴様がこの艦隊のエースか!」


『その蒼い渡り鳥……! 成程、貴様が魔犬を駆った奴だな! 話では伝説のエース――レイン・アライトと聞いているが、どうなんだ?』


「さぁどうだろうな。試した方が早いと思うが……?」


「クククッ……その通りだな!!」


 その言葉を発端に、両機は互いにビームブレードを振るい激突した。

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