第三章:カリュブディス艦隊攻略

第10話:攻略、そして新たなる戦場へ

 ガルム中隊が壊滅し、周囲の敵勢ASも軒並み撃破すると、アンダーアス基地は降伏した。

 

 そして周囲で陽動をしてくれた友軍や、周囲でゲリラ活動をしていた部隊も戻ってきた事で、基地は完全にレイン達――正規軍が確保することに成功した。


 そこへ敗走した軍や、周囲で徹底抗戦していた者達も集まった事で、アンダーアス基地は強固な基地へと変わり一大拠点となる。


 けれどレイン達に休みはなかった。

 短期間でのエース達の損失。

 そして、今だ確保できていない要人達を確保する為、バルトロ共和国――否、クレセント連合へ寝返った艦隊が動き出そうとしていた。


♦♦♦♦


 セルバンテスのブリーフィングルームにて、アールは労いの言葉と共に、現在の状況を話そうとしていた。


「諸君! 本当に良くやってくれた。君達の活躍のお陰で、多くの兵站や装備を確保する事ができた。これにより周囲の友軍も集まってきている。イーグル隊も補充が出来る事だろう」


「その割に暗い顔をしてますね、大佐」


 少し疲れた表情のレインは、アールの顔を見てそう言った。

 するとアールは無理した明るい顔ではなく、少し疲れた様な顔を浮かべる。


「……本来ならば、このタイミングで言うべきか迷った。だが、それで結果が変わる訳ではない。――つい先程、入った情報だ」


 アールはそう言ってディスプレイへ何かを表示させた。

 それはこの周辺の地図であり、同時にヘブンクラウド基地へ迫る集団をアップにさせた。


 それは一言で言えば艦隊であった。

 中心に大きな旗艦を置き、周囲には護衛艦や戦艦。ASを積んだ輸送艦すらも大量に映っていた。


 その映像を見て思わずカレンや、他のイーグル隊員は立ち上がった。


「これって……艦隊!?」


「しかも、この動き……間違いなくヘブンクラウド基地へ向かっているぞ!」


「友軍……って動きじゃないよな?」


 皆、顔が曇っていた。

 嫌な予感がすると、表情に出ていた。

 そんな彼等に代わり、手を上げて口を開いたのはレインだった。


「大佐、は誰ですか?」


「バルトロ共和国の最大、最強の艦隊――カリュブディス艦隊だ」


「カリュブディス艦隊!? 共和国最大の艦隊で、最大の海上戦力じゃない! そんな人達まで連合に寝返ったの!?」


「それだけの不満が彼等にもあったんだな……」


 驚愕するカレンを他所に、レインは先程まで戦っていたガルム中隊――エリックの言葉を思い出していた。


 彼等は不満を抱いていた。

 この三大国家上層部、戦場に来た事もない連中が作り上げた偽りの平和に。


 戦いによって傷ついた心――エース達、人の想い。

 戦勝国・敗戦国。それらが関係なく集まった者達がクレセント連合なのだろう。


 レインは敵は手強いと、思わず溜息を吐いた。


「どうりで三大国家が劣勢な筈だ。連中が裏切ったなら、周囲の海域は落ちたも同然。空からトップエース、海には最強艦隊。普通でも絶望だな」


 どうりで三大国家を同時進行出来る訳だと、レインは腑に落ちた。


「それで、大佐はどうやって落とす気なのですか? この三大国家の一角――その最強艦隊を」


「……この艦隊を叩ければ、海上からの移送や補給も楽になる。だが攻略は楽ではないな。この旗艦――カテドラル級は海中の探知も当然だが、ASを含めた対空装備も充実している。それは周囲の艦も同様だ。無策で空から攻めればハチの巣だ」


「じゃあどうやって……海も空も全て封じられた状態なんて」


 カレンの言葉に他の者達も静かに頷いた。

 セルバンテスは海中も走れる艦だ。だが、潜水してもバレるなら意味はない。


「これを使うのさ」


 しかしアールは自信満々に地図の一部を示した。

 それは一つの巨大な海流であった。


「世界最大の海流――リヴァイア海流を使う」


 アールの言葉にレインは笑みを浮かべ、カレン達は首を傾げるのだった。

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