第1章27話:タメ攻撃

「そのような減らず口は、この剣を受けてから言うんだな!!」


ヴェルナンがすくいあげるような斬撃で斬りかかってくる。


俺は、それを避けた。


続くヴェルナンの上段斬じょうだんぎり。


……からの切り上げ。


これも避ける。


俺は反撃の斬撃を放つ。


ヴェルナンも斬撃を放ってきて、打ち合う。


次の攻撃も打ち合う。


打ち合う。


打ち合う。


ステータス的には、俺のほうが衛兵隊長よりやや低い。


だから普通に斬りあったら、俺がパワーで押し負けてしまう。


しかし。


(ステータスはあくまで目安だ)


たとえば俺の攻撃力は15ある。


腕輪のリングとショートソードを足せば攻撃力は27となる。


しかし、数字上はそうというだけで、出せる攻撃力の最大は27ではない。


実際には、剣術の技量も、攻撃力に大きく関わってくるのだ。


剣術がたくみなら、斬撃の威力も高くなるし……


ヘタクソな剣を振るったら攻撃力はガクンと落ちてしまう。


――――これは考えてみれば当たり前のことだ。


「完璧なタイミングで決まった斬撃」と「くるまぎれに決まった斬撃」が、同じ攻撃力であっていいわけがない。


だから通常攻撃力つうじょうこうげきりょくは27というだけで、技術、タイミング、クリティカルの有無によって、威力は大幅に変わってくる。


つまり。


(重要なのは、俺のプレイヤースキルが高いかどうかってことだな)


俺がゲームで一番上手いプレイヤーかというと、自信はない。


しかしRTAでは日本最速にほんさいそくレベルだ。


ある程度の上級プレイヤーだという自負がある。


ゆえに、ステータスではヴェルナンに劣っていても、斬りあいで押し負けるつもりはない。


そして。


「……!」


ヴェルナンが回転斬かいてんぎりのモーションに入った。


そのまま水平にはらってくるかと思いきや、いったん動きを止めるヴェルナン。


(来たか……ディレイ)


ヴェルナンは回転斬りの際、ディレイを使ってくる。


ディレイとは、攻撃のタイミングをわざと遅らせるフェイントのことだ。


いわばタメ攻撃。


ヴェルナンのディレイ攻撃は、初見だとうっかり引っかかってしまうものだが……


慣れると、逆にこちらの攻撃チャンスに変えることができる。


俺はディレイ攻撃を確実に避けつつ、カウンターの一撃をぶちこんだ。


「ぬっ!!?」


ヴェルナンの肩が切り裂かれ、血がき出した。


「俺のタメ攻撃を、初見で見切っただと!?」


と驚愕するヴェルナン。


まあ、初見じゃないからな。


ゲームで何度も見た攻撃だから、カウンターを決められただけだ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る