第14話 舞踏会と晩餐会・パート2(会場に到着・・・)

エリアステス宮殿内

パーティー会場・エリアステス大ホール

アマネア歴3512年12月9日

午後19時00分頃


警備していた聖騎士隊の隊員は会場の大扉を開いた。

聖騎士隊の隊長2名を先頭に、大神官で今回の主役であるアマニエリス、国王、宰相、継承権のある3人の王子と警備担当していた8人の聖騎士が堂々と入場した。


神殿の礼拝堂に比べれば、会場は少し小さかったが、それでも十分な広さを持っていた。

このエリアステス大ホールは宮殿内で最も豪華な会場であり、王国の歴史的な出来事がこの会場内で起きたのは言うまでもない。

エリテリア宗教国の初代国王、現国王の祖父であったエーオマー王朝のアガニス1世はこの宮殿の建設時に各国の要人をもてなすために作ったと言われていた。

そしてこの会場の別名はアガニス王大ホールだった。


今朝の礼拝堂の時と違い、この世界の各国の要人たちは国際礼儀に基づいたドレスコードをしていた。

男性はホワイト・タイ、女性はイブニングドレスだった。


アマニエリスはマラックを目で探した。


「アマニエリス、君の右側にいるよ。」


頭の中に彼の声が届いた。


「ありがとう・・・会いたかった。」


「俺も・・・」


2人は使っていた古い魔法は一種の念話だったが、完全に探知、盗聴不可能な魔法だった。

アマニエリスは考えていた、既に決まった人がいるので、この【大神官婚期祭】を今夜で終わることにしたかった。


「ここであなたとの婚約を発表するわ・・・」


「いいのか?歴史上で一番短い大神官婚期祭になるよ。」


「そうなってもいいと思うの・・・」


「そうだな・・・例の件もうある、ここで発表するか否かを考えよう。」


「まさか・・・」


「異端者がいる以上、この世界は危険な状況にある。」


「わかったわ。」


2人は秘密の回路で会話している時、国王と宰相は舞踏会の開始宣言を行った。


会場にいる全員の視線はアマニエリスに向けられた。

演奏が始まり、彼女を狙っている全員は前に出た。


「それでは大神官婚期祭名物、ダンス誘い!!」


宰相であるカイテンは大きな声で宣言した。


ケータス帝国皇太子であるレナン・レ・ケータスをはじめ、オステア共和国大統領のジュアン・テレスコン、ヴァイオリン帝国の皇太子のロスカーン・ヴァラドラン、イルナン王国王女のパートリシエ・イルンナン・カレーラ姫、ドマーゴン公国の異世界人勇者のトヨヒコ・ハラダ、サーラン王国皇太子のレストス・サーラン、別の大陸のドタ参加者でアーモレア連邦合衆のダネルド・シュランプス大統領、そして魔王領の皇太子のマラック・ヘストファーが更前に出て、アマニエリスの近くまで歩み寄り、両足をきちんと揃え、軽くお辞儀し、ほぼ同時に言葉を発した。


「私と踊っていただけませんか?アマニエリス・エーオマー猊下。」


それ以外にジェオバード・エーオマー第三王子を筆頭に小国の皇太子や種族の族長も前に出て、

並んだ。


アマニエリスは並んでいる彼らの前で優雅に歩き、魔族であるマラックの前に立った。

彼女は嬉しそうな笑顔を浮かべた後、頭を横に傾けるようにうなずいて、了承した。


「よろしくお願い申し上げます、マラック・ヘストファー殿下。」


アマニエリスの手を握り、マラックは彼女と踊りだした。


会場は一瞬、静まり返った。こんなに早く踊る相手を決めて、おまけに笑顔で了承したのは史上初だった。それから全員は言えないが、祝福するように盛大に拍手喝采した。


国王と宰相は嬉しそうな表情を浮かべていた。まるでこうなることが分かっていたかのようだった。


「選んでくれて、ありがとう・・・アマニエリス。」


「こちらこそ・・・私のことを知った上、私を選んでくれてありがとう、マラック・・・」


「この世界に転生した時から、俺たちが一緒になる運命だった。」


「そうみたいですね・・・」


「愛しているアマニエリス・・・出会う前からずっと・・・」


「私もそう感じているわ・・・愛している、マラック。」


マラックはアマニエリスを優しく見つめた後、踊りながら、彼女とキスした。

そのキスはとても情熱的で2人の気持ちの表れだった。


2人の踊りを見守ってた会場の参加者たちのほとんどから拍手喝采が起きた。


国王は宰相を見た。


「カイテン・・・女神の予言通り。」


「はい、兄上。嬉しいのだが、これからは大変になる。」


「ああ・・その通り。例の封印された神々が再びこの世に放たれてはならない。」


演奏が終わり、会場の中央で踊っていた2人は手を握り、お辞儀をした。


「私、アマニエリス・エーオマー、女神アマネア教の大神官であり、エリテリア宗教国の王族の一員でもあり、ここで宣言する。魔族領の皇太子、マラック・ヘストファーと婚姻関係を結ぶ。」


国王であるカイゼンは前に出た。


「マラック・ヘストファー殿下、ご返事は?」


「喜んで、アマニエリス・エーオマー猊下との婚姻関係をお受けいたします。」


マラックは深いお辞儀をした後、話した。


国王は周りに立っていた各国の要人たちを鋭く見た。


「史上初、一番短い大神官婚期祭だが、この婚姻関係に対して意見ある者は前に出よ。」


カイゼンは反対する者がいるとわかっていたが、このまま、その者たちは何も言わないことを願った。


「反対です。」


ケータス帝国皇太子であるレナン・レ・ケータスは声を上げた。


「俺も反対だ!!魔族と決闘だ!!」


東の大陸、アーモレアのアーモレア連邦合衆のダネルド・シュランプス大統領も反対声を上げた。


「反対だ!!そうだ、そうだ!!魔族との決闘だ!!」


オステア共和国大統領のジュアン・テレスコンも反対意見を叫んだ。


「俺も大反対!!人族の敵である魔族如きは女神教の最高指導者と婚姻関係になるのはあり得ない!!魔族が討伐されるべきだ!!」


ドマーゴン公国に住む異世界の勇者のトヨヒコ・ハラダが憎しみがにじみ出ている声を上げた。


「私も反対だが、これ以上、この茶番劇に付き合いたくないので参加辞退し、これから自国へ戻ります。」


サーラン王国のレストス・サーランは不気味な表情を浮かべて、意見を述べた。


宰相は前に出た。


「では、昔の慣らしに沿って、これだけ反対意見が出たところ、決闘を行います。日程は調整した後、全員に告知されます。ヘストファー殿下、ご自分で決闘に参加しますか?それとも代理人を立てますか?」


「私は自分で決闘を・・・」


「ちょっと待った!!!」


マラックの答えを遮って、イルナン王国王女のパートリシエ・イルンナン・カレーラ姫は叫んだ。


「どうしたのでしょうか?・・パートリシエ・イルンナン・カレーラ王女殿下?」


カイテンは彼女を見て、質問した。


「私はマラック殿下の代理人になります。元々は選ばれた方のために、代理人になる前提で参加した。」


「どうでしょうか?・・ヘストファー殿下?」


「異論はない。感謝致します。」


マラックはこの展開になるとはなんとなくわかっていた。


王女はアマニエリスを見て、笑顔を見せた。


「驚かせてごめんね、アマニエリスちゃん・・・最初から結婚を狙ってたわけじゃないの・・あなたと夫になる人物を守るように父に言われたの・・・更なる試練に備えるために。」


アマニエリスは驚いていたが、すぐに理解した。

このイルナン王国の姫も例の太古の神々のことを知ってたのと仲間の一人になることが嬉しかった。

馴れ馴れしかったのは以外だったけど。


「代理人は一人だけだと心細くなりませんか?」


ヴァイオリン帝国の皇太子のロスカーン・ヴァラドランは話した。


「では、ヴァラドラン殿下も代理人になりますでしょうか?」


宰相であるカイテンは質問した。


「却下されない限り、最初からそのつもりです。」


「異論ない、むしろ、嬉しいです。」


「では、決闘の日程が決まり次第、この会場にいる全員にお知らせいたします。皆様方には立会人になっていただく。これで舞踏会は中止になります、晩餐会はこのまま継続して開催しますが、大神官、選ばれた婚約者及び決闘参加者と辞退者は退室します。」


アマニエリスはマラックと再びキスをして、4人の世話係の神官と聖騎士たちに囲まれて、会場を後にした。

反対を述べた4人は聖騎士たちに囲まれて、各自の大使館及び宿泊先へ案内された。


「作戦練りますか?マラック殿下?」


ロスカーンはマラックに声をかけた。


「私も作戦会議に参加するわ。」


パートリシエも声をかけた。


「そうですね、では我が魔族領の大使館へ行きますか?」


「それでは、私は警護致します。そして最後の代理人になります。」


神殿の警備責任者で聖騎士の隊長であるパメレーン・キナー神官が3人と共に会場を後にした。



すぐ会場を後にしたレストスは青山シェルに念話で連絡した。


「大使館内の秘密の転移魔法陣で帰る。後は頼んだぞ、あの者を何とかして、こちらの陣営へ誘い込め、シェイラよ・・・」


「任せて、アリステール。」


シェイラ・メールスこと青山シェルは念話を切った後、晩餐会に残った要人たちに近づいた。


「ジェオバード・エーオマー第三王子殿下、お話しませんか?」


さり気なくジェオバードの肩と腕を触った後、少ししゃがませて、耳元に囁いた。


「ドマーゴン公爵家の公女殿は継承権があっても王にならない三男坊の王子に何の用だ?」


ジェオバードは警戒しながら乱暴に返事した。


「王子殿下は大変興味が持てそうなお話ですわ・・」


シェルはジェオバードにだけ最大限の色気を出した。

これは彼女の能力(スキル)の一つ、その名は【虜(チャーム)】だった。


ジェオバードは圧倒的な色気ですぐにメロメロになった。


「ドマーゴン公国大使館の私の部屋に来て。後1時間ね。大使館の裏口から入ってね。通すように手配しとくわ・・・」


誰も見てないを確認した後、能力(スキル)の影響で大きくなったジェオバードの下半身をなでなでしながら触った。


「何を話すのか?」


メロメロ状態のジェオバードは間抜けな質問した。


「とてもいいことで気持ちのいいことだわ・・・殿下。」


シェルはその後すぐ、会場を後にした。

大使館に戻って、おもちゃである表向きの勇者に魔法をかけて、眠らせることが先決だった。


「エルフのバカ王子とのセックスは邪魔されては困る・・・眠ってもらうわ・・トヨ。」


器用のホムンクルス作成に必要な材料を手に入れるためにジェオバードとのセックスも必須だった。

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