第10話 飛び入りの参加者(ドタ参加・・・)

女神アマネア大神殿内礼拝堂(上記省略・・)

アマネア歴3512年12月9日

午後12時30分頃


アマニエリスは12時頃に休憩から戻った。伯父である国王と父親である宰相も戻って、彼女の隣に立っていた。1時間ほど前、東の大陸アーモレアにあるアーモレア連邦合衆国の魔法科学飛行戦艦、パイーゾン号は同国の大統領、ダネルド・シュランプス閣下をエリテリア宗教国の海岸線に運んできたという知らせが入った。それから国王のカイゼンはエリテリア宗教国の最新の魔法飛行船アーテリアス号を向かわせた。


パイーゾン号を海岸沿いに留まらせた狙いは3つあった。

一つ目は他国の威圧的な巨大な飛行戦艦を領土内に入れないこと。二つ目は上位魔法である転移魔法を簡単に見せないこと、特に敵味方がわからない超大国相手に。そして三つ目の狙いは自国には同様の飛行戦艦がないことを思わせたいためであった。


大統領がこちらに向かっている間、この大陸の小国の王族、貴族、地域や種族の代表者が簡単な挨拶を行っていた。30分以内ですべての挨拶が終わって、たった今は大神殿の中庭に到着したアーテリアス号からダネルド・シュランプス大統領が下りるのは待つのみとなった。


「国王、行かなくてよろしいでしょうか?」


アマニエリスは緊張した声で伯父である国王に聞いた。


「無粋な外交を礼儀で応える必要がない。魔法飛行戦艦で圧力をかけてくる無礼な指導者には実務官の出迎えは丁度いい。」


カイゼンは毅然とした声で答えた。


その時、実務官の男性エルフ、ドーノン・ルーイズより念話が入った。


「大統領閣下を今から礼拝堂へ案内致します。」


「わかった。」


国王は短い返事をした。


5分もしないうちに礼拝堂の入り口の扉が開いた。

実務官を先頭にアーモレア連邦合衆国の現大統領、その補佐官と8人の警護官は入場してきた。


ダネルド・シュランプス大統領は大男だった。身長は191センチで赤みのかかった白い肌と金髪の独特なヘルメットヘアスタイルをしていた。超(ハイパー)人間(ヒューマン)とオーガのハーフで実年齢は98歳だった。見た目はまだ40歳を少し過ぎたところにしか見えず、人間の上位種と肉食亜人の混血のため、寿命は普通の人間より遥かに長く、強靭な肉体をしていた。

彼の隣には女性補佐官のセーサヌ・ウエルズが歩いていた。彼女は大統領同様、超(ハイパー)人間(ヒューマン)とオーガのハーフで身長は180センチを超えていた。比較的若く、実年齢は70歳で見た目は20代後半にしか見えなかった。

護衛官たちのうちの7名は大統領同様、超(ハイパー)人間(ヒューマン)とオーガのハーフで、一人のみだった女性護衛官は超(ハイパー)人間(ヒューマン)と灰色(グレイ)エルフのハーフだった。


補佐官と護衛官たちは女神アマネアの巨大な像の元に急遽作られた王座の遥か手前に立ち、大統領のみは堂々とした歩き方で3人の前に立った。


「大神官猊下、国王陛下、宰相閣下、遥か遠い東の大陸アーモレア、大陸一偉大な大国であるアーモレア連邦合衆国、第17代大統領、ダネルド・シュランプスと申します。お見知りおきください。」


自信満々と強いエゴを覗かせる声で堂々と挨拶した。


「遥々遠い大陸よりお越しいただき、ありがとうございます。こちらこそよろしくお願い申し上げます。」


アマニエリスは挨拶に答えた。


「遥々遠いところからお越しいただきありがとうございます・・・ですが、巨大で強力な魔法飛行戦艦で我が領土の前までで来るのはいささか外交プロトコルを軽く考えているじゃありませんか、大統領閣下?」


国王であるカイゼンは目の笑ってない笑顔で大統領に質問した。


「大変失礼致しました、国王陛下。すぐに参加したくて、一番早い移動手段を使ったまでのことですよ。」


「なるほどですね。承知いたしました。そういうことにしましょう。」


「恐れながら国王陛下、私の出迎えには実務官いかがなものでしょうか。」


「大変失礼いたしました、大統領閣下。こちらは謁見の最中で抜けられなくて、申し訳ございません。」


「なんのこれしき、気にしないでいただきたい。」


「宰相閣下、後ほど私の補佐官とお話していただけらと思います。両国の国交について、至急話さなければならないと考えています。」


「では、謁見が終わり次第、場所の用意をしましょう。」


突然話が振られたカイテンはすぐに返事した。


「あなたは噂以上の美しさ、大神官、アマニエリス・エーオマー猊下。」


「ありがとうございます。遠い大陸には私の噂は届くものでしょうか?」


「もちろんですとも、ケータス帝国と盛んに交易しているので、あなたの美しさと強力な神聖魔法の話が多く届くものですよ。」


「そうでしたか。確かにお互いの国に大使館を置かれているものですね。」


「はい、美しいエーオマー猊下。それと我が国に一番大きな港町にはケータス人の商人とその家族の区画が出来ているぐらいです。」


「それは素晴らしいことですね。」


「ケータス帝国の港町にはわが国民の区画も出来ていると聞く。」


「本当に盛んと交易していますね。」


「はい、それからですね、我が国には女神アマネア教の教徒が増えているので、首都と港町に神殿を作ろうかと考えています。信仰の自由は我が国の憲法で保障されているので。」


「素晴らしいですね。」


「それでは猊下とこの後はそれについてお話ができればと思っています。」


「では教会の幹部との会談を用意いたしましょう。」


「エーオマー猊下は参加しないのでしょうか?」


「時間ができたら、少し話を聞けるかも知れませんが、何しろ、今は大神官婚期祝福際の最中で時間がかなり限られています。」


「そうでしたか。お時間ができるといいですね。」


「そうですね。」


「エーオマー猊下、我が国は一夫多妻制度を法的に認めてませんが、禁止もしていませんので、帰国したら法的整備を必ずします。」


「そうですか。それはすごいことですね。」


「全てはあなたを大統領夫人に迎えるためです、アマニエリス・エーオマー猊下。」


ダネルド・シュランプス大統領は素早くアマニエリスの手を取り、手の甲にキスをした。

アマニエリスはあっけにとられて、赤面になること以外何も出来なかった。


「大統領閣下?!」


「ではまた会いましょう、愛しいアマニエリス・エーオマー猊下。」


大統領は3人に軽く会釈をした後、補佐官たちが待っているところへ向かった。


「どうでしたでしょうか、大統領閣下?」


セーサヌ・ウエルズ補佐官が大統領に質問した。


「まだわからん、取り合えずもう一度会う必要がある。二人きりでだ。」


「それでは手配いたします、シュランプス大統領閣下。」


「頼んだぞ、セーサヌよ。我が国を偉大にするのにあのハイエルフが必要なのだ。」


「承知しました。では奥様をどうしますか?」


「心配いらん、既に話してあるのだ。」


「承知いたしました。」


「忘れるな、セーサヌ・・・アーモレアを偉大な国家に!!」


「アーモレアを偉大な国家に!!」


エルフの実務官は大統領ご一行に礼拝堂の真ん中辺りの位置まで案内した。



アマニエリスはまた軽いパニックに襲われていた。


「大丈夫か?」


父親であるカイテンは聞いてきた。


「大丈夫なわけないでしょうが・・・まずまず大変なことになっているのではないか。」


「安心しろ、アマニエリス・・・父親を信じろ。」


「信じられるわけないよ・・・このクソオヤジ・・・」


アマニエリスは念話でカイテンに抗議した。


カイテンは振り向いて、笑顔を浮かべた。


ここからまたアマニエリスの脳内ボケ・ツッコミがスタート:


ツ「何をその余裕な笑み!!」


ボ「娘の幸せを願う父親じゃないの・・・」


ツ「私は男だよ・・・忘れたのか?」


ボ「ちょっと・・・忘れてた。」


ツ「てめ・・他人事みたいに・・・てめのことだろうが・・・」


ボ「お前もな・・・」


ボケはツッコミをツッコんでお終い。


宰相であるカイテンは礼拝堂に集まった各国の来賓たちに向けて、発言した。


「それはご来賓の皆様方、今夜は国王陛下のエリアステス宮殿で舞踏会及び晩餐会を開きますので、夜の19時にまたお会いしましょう。」


各国の要人は誘導され、ゆっくりと礼拝堂を後にした。

アマニエリスも女神アマネアの巨大な像の裏にあった控室へ戻った。

彼女は椅子に座り、頭を抱えて、つぶやいた。


「このまま・・・本当に結婚するハメになりそうじゃないの・・・」


アマニエリスの困っている仕草と表情は更にその美しさを引き立っていた。


「どうかなさいました、猊下?」


ソンヤ神官は質問した。


「大丈夫・・・問題ないわ・・・ちょっと近距離転移魔法で寝室に戻る。」


「承知いたしました。」


彼女の護衛であり、身の世話をする4人の神官は同時に返答した。


寝室に戻ったアマニエリスは衣装を脱いで、裸になり、仰向けでベッドに倒れこむように天井にある鏡に映る自分の姿を見つめた。そして下部へと右手を動かして、あるものを手にした。


「これがあっても・・・男であることを確証持ってなくなくってきたわ・・・」


天井の鏡に映る自分はその下部の部分を除いて、完全に完璧な女性にしか見えなかった。

この世界の最も美しい女性の姿に。

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