第9話 朽ちていく国の王子(ムッツリ男の正体・・・)
女神アマネア大神殿内礼拝堂(上記省略・・)
アマネア歴3512年12月9日
午前11時10分頃
サーラン王国の紺色の軍礼服を着た皇太子、レストス・サーランが前へと向かって歩いていた。
礼拝堂に集まった各国や各種族及び部族の代表、王族、貴族などが、彼に注目していた。
朽ちていく王国の王子である彼は堂々としていたが、周りから聞こえてくるひそひそ話は不快だった。
「後50年もすれば、王国自体、なくなるんじゃないの?」
「滅びていく過去の覇権国家だわ。」
「ケータス帝国に強制合併されるらしいと聞いたぞ。」
「ドマーゴン公国の衛星国に成り下がった王国だね。」
レストスは人間だったが、超(ハイパー)人間(ヒューマン)でなくても人体能力が鍛錬によって、
大幅に向上していた。視力、腕力、脚力、聴力など。彼の耳はそのひそひそ話の全て拾い上げていた。
レストスは剣術の天才と呼ばれていたのもまた事実。彼の剣は無敵と言われていた。
ケータス帝国のコロセウムで定期的に行われる全大陸の頂点を争う【剣士(ソードマン)の頂点(プライム)】で彼は連続優勝していた。
ドマーゴン公国の異世界勇者は剣士の大会に出なかったのもまた事実だが、今でも大陸全体であの二人が戦ったらと期待している人々がいた。
皇太子は大神官、国王と宰相が立っているところまで歩いて、彼らに対して、深いお辞儀をした。
「サーラン王国皇太子、レストス・サーランと申します。美しい大神官猊下のお目にかかれて、光栄です。」
アマニエリスは建前的な笑顔を浮かべた。
「こちらこそ、レストス・サーラン皇太子殿下。お会いできて、光栄でございます。」
レストスは硬派で有名だったが、どうしてもアマニエリスには違うと思う直感があった。
「エーオマー大神官猊下とは是非、開催中にまたお話ができたらと思っています。」
「そうですね、サーラン殿下、時間があればまた話せると思います。」
アマニエリスは少しけん制をかけてみた。
「今夜の晩餐会では時間があると思いますので楽しみにしています。」
「そうですね、晩餐会でもし時間ができたら、話しましょう。」
アマニエリスは驚いた。謁見した要人たちは誰も晩餐会の話をしなかった。この皇太子以外。
彼女(いや・・彼?)は自分の直感がやはり正しかったと思った。
レストスは再び3名に深いお辞儀をしてから、元の位置へと戻っていった。
アマニエリスは最初、ムッツリな王子だと思っていたが、今の話でそれ以上、危険な男であると直感が警告を鳴らしていた。そしてアマニエリスは間違っていなかった。
レストスが怒っていた、注意深く自分の本性を隠蔽してきたことがあのハイエルフの女にはバレているのではないかと感じた。
硬派なイメージはあくまでも偽装だった。彼は剣の才能だけじゃなく、人間を間引く才能にも優れていた。そして性欲の塊のような男だった。
非合法な剣士の仕合に積極的に出て、血へ要求を満たし、どんな種族の女性も犯し、最後殺していた。
裏社会の犯罪組織の長でもあった彼は自分の王国より中央大陸と東の大陸にまたがり、暗躍する犯罪ネットワークの利益を好んでいた。
「そろそろ硬派の装いが終わりか・・・早いとこ、あのハイエルフ女を俺の物にし、表の名声を手に入れないと・・・本性はバレてもいいや・・俺にはすべての記憶や本来の性格を消す闇魔法があるからな。。。俺の操り人形のエルフができるわけだ。」
彼は頭の中で考えていた。
レストス・サーランは硬派な皇太子の表の顔以外本性である大陸間の巨大な犯罪組織【
元の位置に戻った彼に他者が探知不可能な魔法隠蔽の念話が届いた。
「アリステール君、やはりあのエルフの女は殺すべきだよね?」
ドマーゴン公国の養女で公女の勇者の従者である青山シェルからだった。
「そうだね、でも先にその影響力を手にしなとね、我が副官、シェイラ・メールスさんよ。」
「いくら探知不可能な念話でも、今はその名で呼ばないでよ。」
「問題ないだろう。それからそれだけのためで俺に念話をよこしたわけじゃないよな?」
「はい、実は旧(オルド)支配者(ルーラー)を解放するための秘宝(パーツ)を手に入った。」
「素晴らしいことじゃないか!!この世界を本来の神々たちへ帰すことができる。」
「それからね・・・このつまらない謁見が終わったら、部屋に来てほしいの。」
「お前にはおもちゃの勇者がいるだろう?」
「本物の男がほしいの。」
「わかった。あのおもちゃを眠らせておけよ。」
「はい・・後で私とセックスした記憶を植え付けるわ。」
「準備して待ってろよ。」
「たっぷり愛液(ローション)を塗っておくわ。」
「楽しみにだ。」
本当の異世界の勇者は青山シェルだったが、60年前には彼女ではなく、偶然巻き込まれた彼女の客の男を勇者に祭り上げ、偉業を押し付けられた。男の娘(こ)である彼女は裏方となり、公国を手に入れた。それを成すため、【邪神(イビル)の手(ハンド)】という犯罪組織及び邪教の首領だった前世のアリステール・ケイーンと接点を持った。そして首領がサーラン王国の第一王子に生まれ変わった時、真っ先に忠誠を誓った。その首領から旧(オルド)支配者(ルーラー)の手先である証の名ももらった。その名はシェイラ・メールスだった。
カイゼン国王は弟である宰相カイテンに目をやった。これから小国の王族や貴族、地域、部族の長たちを順番で呼ぶようの合図だった。その時、アマニエリスも含めて、緊急な軍事用魔法念話が届いた。
「国王陛下、宰相閣下、大神官猊下、緊急事態です!!」
国防省の大臣でワイルドエルフの女性、デアニア・バーンからだった。
「何かあった、デアニア?」
国王は聞いてきた。
「東の大陸アーモレアの大国、アーモレア連邦合衆国の魔法科学飛行戦艦、パイーゾン号がエリテリア宗教国領土内に入った。エイーストン海の海岸線、ドーム港の近くです。」
「東の大陸?」
宰相は聞いた。
「はい、宰相閣下。」
「侵略目的か?」
国王は心配そうに聞いた。
「違います。アーモレア連邦合衆国の大統領、ダネルド・シュランプス閣下が婚期祝福際に参加するため、連れてきたと言っています。」
2人はアマニエリスを見た。
「何よ・・・私のせいだと言うの?」
アマニエリスは念話で言ってきた。
「違う、違う・・・婚期祝福際はこの大陸の国家だけが参加していたが、明確な制限はなかったな。最近魔法科学の発展がすさまじく、他の大陸の国家が参加してもおかしくないと思っただけ。」
アマニエリスの父親であるカイテンは説明っぽく話した。
「兎に角、飛行戦艦はそこで待たせて、こちらの最新の魔法飛行船を派遣しろ。それに大統領とその護衛を乗せて、エリアステス市へ向かわせろ。いいな・・デアニア。」
国王は素早く判断した。
「承知いたしました。仰せの通りに国王陛下。」
「カイテン、アマニエリスよ、それまで一旦休憩を挟もう。いいな。」
「はい!!」
2人同時は念話で答えた。
宰相であるカイテンは礼拝堂に集まった来賓たちに一旦休憩をすることと説明した。
但し理由はあえて、説明しなかった。
幸い座れる椅子はあったため、来賓たちはゆったりと座り、休んだ。
「何でわざわざ違う大陸から来るのよ・・・まずまず大変な状況になるじゃないの・・・私との結婚・・私は男だよ・・・」
アマニエリスは頭を抱えて、軽いパニックになった。
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