第8話 野心家な野獣(ダシャレじゃないよ・・・)
女神アマネア大神殿内礼拝堂(上記省略・・)
アマネア歴3512年12月9日
午前11時00分頃
呼ばれたオステア共和国の第20代大統領、ジュアン・テレスコンは堂々とした歩き方で前へ向かっていった。知識と自信溢れる表情していた。彼はライオンの獣人だったが、野性的な雰囲気はまったくなかった。どちらかというとインテリな雰囲気を醸し出していたと言っても過言ではない。
民主的な選挙で選ばれ、8年任期の3年目だった。今まで行った改革は国力を底上げするものばかりだった。圧倒的なカリスマ性、魅力的な話術と豪胆な外交術でいつも大陸の大国中でいつもビリだった共和国を順当を上げた手腕は各国が注目していた。
今回の婚期祝福際では名実ともにサーラン王国より上の位置付けを勝ち取った。経済的にケータス帝国、エリテリア宗教国とイルナン王国には負けていたものの、秘密裏に進めていた軍事力拡大ではドマーゴン公国、ケータス帝国とエリテリア宗教国を遥かに凌いでいた。
ジュアン・テレスコンは大統領の席に大人しく収まる男ではなかった。彼はかつて6千年前の肉食系獣人を筆頭に獣人連合の大陸大進撃の再来を成し遂げるつもりでいたからだ。影響力拡大のため、女神アマネア教の女性エルフ大神官と結婚する必要があった。
彼は民間の大統領のはずだったが、今回の祝福際には共和国の緑色の軍礼服を着こなしていた。
「女神アマネア教の大神官、アマニエリス・エーオマー猊下にお会いできて、光栄にございます。」
上品尚且つ紳士的な挨拶を行い、アマニエリスに手を差し伸べ、彼女が自分の手を出した時に軽くに、手の甲に軽くキスをした。
「私もお会いできて、光栄です、大統領閣下。」
アマニエリスは笑顔で挨拶した。
「ジュアンと呼んでいただけたら、幸いです。アマニエリス猊下。」
アマニエリスはまた呼び捨てにされたと思った。
「はい、喜んで、ジュアン閣下。」
「ありがとうございます。嬉しいです。」
ジュアンは獣人であるため、異性フェロモンに敏感だった。そしてアマニエリスの体から発されるフェロモンは強烈なものだった。女性的、彼から言わせれば、雌的の強いフェロモンだった。理性的な文官、民間の大統領の装いが崩れそうになるほどのものだった。
「アマニエリス猊下は子どもが好きなのでしょうか?」
ジュアンは唐突に質問した。虚を突かれたアマニエリスは一瞬驚いた。
「はい、好きですが、何故でしょうか。」
「自分はまだ独身でありまして、結婚したら、たくさんの子どもがほしいと思っただけです、失礼しました。」
ジュアンはフェロモンの影響で失言したと思った。
「頼もしい父親になると思いますよ、ジュアン閣下。」
アマニエリスは社交辞令的称賛の言葉を述べたつもりだったが、ジュアンには本気に聞こえた。
「ありがとうございます。励みになります。」
アマニエリスの頭の中ボケとツッコミの声は以下:
ボ「何が励み?・・・ヤバいじゃん・・この人・・・」
ツ「お前もな・・・」
ボ「まさか・・・私と子を作りたい?・・・」
ツ「今更確認すんの?・・はいに決まっているよ・・」
ボ「私は男だよ・・・お・と・こ・・・」
ツ「そりゃあそうだが・・・見た目は理想的すぎる女だ・・お・ん・な・・・だ。」
ボ「面倒くさいので言っちゃおうかな・・」
ツ「国滅ぼす気か?貴様!!」
アマニエリスは深呼吸して、嘘の笑顔を浮かべた。
「また婚期祝福際中に話しましょう。」
「はい、では失礼いたします。」
ジュアンは限界だった。彼女の強いフェロモンに体が反応しそうになり、手袋に隠して持ってきた精神安定剤をさり気なくかいで、自分を落ち着かせた。挨拶の後、自分の位置へと戻っていった。
「彼女と結ばれないとな・・・たくさんの子どもを作らないと・・・神聖魔法が使えるハーフ獣人、ハーフエルフの子どもが必要だ。」
彼の頭の中はそのことでいっぱいになった。
アマニエリスは彼を目で追った。あの獣人を明らかに自分を欲していた。強烈に。
「疲れたわ・・・」
「大丈夫か?」
「問題ないわ・・・伯父・・失礼、国王陛下。」
カイゼンは弟である宰相を見て、次の来賓を呼ぶように促した。
カイテンは前に出た。
「サーラン王国皇太子、レストス・サーラン殿下。」
サーラン王国の紺色の軍礼服を着た、黒髪の長身青年が前に向けて歩き出した。
中央大陸アルメンダリース
エルフ国家、エリテリア宗教国
エイーストン海の海岸線
同時刻
東の大陸アーモレアの大国、アーモレア連邦合衆国の魔法科学飛行戦艦で第7飛行艦隊の旗艦であるパイーゾン号がエリテリア宗教国領土内に入った。
「こちらはエリテリア宗教国海岸警備隊所属、エフェーミス号艦長、ロメナエス・タイフェン中佐である。未確認飛行物体、応答せよ。」
魔法通信が船橋(ブリッジ)に届いた。
「どこのどいつだ?ノウーム提督。」
不機嫌そうな口調で艦長の席の隣に座っていたスーツを着た男が質問した。
「エリテリア宗教国の警備哨戒艇です。海上から空を行く我々に気づいたのでしょう。大統領閣下。」
緑色の目と美しい金髪をした女性艦長が答えた。
「面倒は困る。俺は婚期祝福際に参加することを伝えるのだ。」
「承知致しました、大統領閣下。」
女性提督は魔法通信機で応答した。
「こちらはアーモレア連邦合衆国、魔法科学飛行戦艦、第7艦隊旗艦、パイーゾン号艦長、コリスティ・ノウーム提督だ。我が国の大統領、ダネルド・シュランプス閣下を貴国の婚期祝福際へ連れていく最中である。我が国は貴国と国交関係がない故、突然の訪問となり、申し訳なく思っています。敵意ありません。」
「こちらロメナエス・タイフェン中佐。本国に確認致します。しばらく今の位置で待機せよ。以上。」
「了解。待機します。以上。」
魔法通信を聞いていた、ダネルド・シュランプス、アーモレア連邦合衆国は神経質な笑顔を浮かべた。
「早くしろ、エルフどもよ。私は待たされるのは好きではないのだ。」
大統領は船橋(ブリッジ)の窓から見えるエリテリア宗教国海岸を眺めていた。
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