第5話 魔族貴公子の正体(まさかの日本人?!)

別の世界、アマーネス

中央大陸アルメンダリース

北の最果て、魔王領

魔王城のある魔族の大都市ヴェイロナ

アマネア歴3423年7月14日

午後14時頃

夏季の平均気温、7度


魔王メリック・ヘストファーは生まれたばかりのわが子を抱いた。


「お前の名はマラックだ・・・マラック・ヘストファーだ。」


妻である魔族と超(ハイパー)人間(ヒューマン)のハーフのマラーリス・ディーン・ヘストファーには感謝していた。顔には出さなかったが、男子が生まれて、嬉しかった。

自分の親であった先代魔王から続く人間と亜人国家とのこ戦争には飽き飽きしていた。


魔王領の位置は5000年前に巨大な自然災害で滅んだ伝説の魔族・人間・亜人の連合国家旧レムラントス王国そのままだった。痩せこけた極寒な土地のため、植物が育てにくく、魔石と鉱物だけは豊富でそのおかげ鍛冶、魔法が発展していた。


先代の魔王は初代魔王の不可侵条約を破棄し、人間や亜人国家の領域へ侵攻した。

250年続く戦争は今思えば、愚者の所業だった。


「俺の代でこんな無意味な戦争を終わらせる。」


わが子を抱えながら、魔王が考えていた。

生まれたばかりの男子を妻の手に渡した。


「ちょっと行ってくる、2週間後に戻る。」


魔王の妻は寂しそうな表情を浮かべたが、引き留める言葉を発しなかった。

魔王メリック・ヘストファーは一時同盟をした人間最強国家のドマーゴン公国と人間最大商業国家のケータス帝国に対しての遠征を指揮するため魔王城を後にした。



【生まれたばかりの子どもの視点】


母親に抱かれ、授乳し、少し眠くなったものの、頭をフル回転させていた。


「落ち着け、俺・・・何故生まれたての赤ちゃんになっている?まさか異世界転生した?」


まだよく見えない目を思い切り開いて、周りを見た。


「俺は人間に転生したわけじゃないな・・・人間には近いけどな。」


母親らしき女性を見た。薄い紫色の肌、紫色の目、長い白髪。どこか人間っぽさがあったものの、

明らかに別の種族だった。そして美しかった。


「まさか・・・コンビニ帰りに襲われている女子高生を助けようとして、その暴漢に刺されて・・・こんなことになった・・・信じられない・・・」


母親は彼の優しく頬を撫でてた。


「先ずは俺、山中龍一、27歳、彼女いないの独身で一人暮らしだったな。」


母親は何かつぶやいた。


「マラック、私の可愛い、マラック・・・」


子どもは母親を見た。


「そうか・・・俺はこの世界での名はマラックだな。」


頭の中で考えた。

そしてもう一つ思い出した。生を受ける前にある女性とあった。


「もう一度生を受け、エルフの神官と一緒になり、仲間を集め、90年後、地獄より解き放たれた闇の勢力からアマーネスを救うのです。」


おぼろげな記憶だが、確かにその女性(女神?)に言われたのを思い出した。


「人に近い何かに転生し、この世界を救う?・・・なろう系ラノベの世界じゃないか・・」


母親は赤ちゃんの頬にキスをした後、子守唄を歌いだした。


生まれて間もない、魔王の長男、魔族マラック・ヘストファーの正体は日本から転生した元サラリーマンの山中龍一だった。彼は生前の記憶を持ったまま、エルフの神官とその仲間に、異世界アマーネスを救う運命を背負った者たちの一人だった。



現代

女神アマネア大神殿内礼拝堂

アマネア歴3512年12月9日

午前10時25分頃


この国で宰相であるカイテン・エーオマーは前に出た。


「魔王、メリック・ヘストファーのご子息、魔族貴公子、マラック・ヘストファー陛下。」


礼拝堂には驚き、怒り、安堵、懸念など、様々な感情が一気に沸いた。

魔族でありながら平和主義者のマラックが堂々とアマニエリスの前へと向かった。

魔族でありながら転生者であり、生前は日本人だったマラックがアマニエリスを見つめた。


「魔族の王子、マラック・ヘストファーと申します。美しいで大評判の女神アマネア教の大神官の目にかかれて、光栄です。」


魔族の王子は深いお辞儀をしながら上記の言葉を述べた。


「アマニエリス・エーオマー大神官です。こちらこそ平和に尽力を注げる、マラック・ヘストファー陛下にお会い出来て、光栄です。」


大神官は深いお辞儀と上記の言葉が返答した。


マラックは緊張していた、美しいハイエルフであることを知っていたが、近くで見るとやはりその容姿に圧倒された。


「もうほぼ90年にこの世界で生きているが、ここの住民のフェロモン効果が生前いた世界を遥か遠くに凌駕している。」


マラックは頭の中で考えていた。


アマニエリスは先ほど会ったヴァンパイアの王子より、魔族であるマラックに対して、魅力を感じていた。自分は男子だが、この魔族が放つオーラをもっと近くで感じたい、この魔族と2人きりになりたいとさえ思った。


「大神官婚期祝福際中で是非、大神官猊下とまた会えたらと思っています。」


「私もです。殿下と話せたらと思っています。」


2人ともは紛れもなく、本音を話した。


「では、また後ほど・・猊下。」


「はい・・・殿下・・・」


マラックは優雅に立っていた位置に戻った。

憎しみのこもった視線を多く感じたが、特に強い感情を露わにしていたドマーゴン公国陣営の勇者とその従者に睨まれていることをまったく気にしない振る舞いを見せた。


「あの二人は俺と同じ日本人か・・・戦争終結以来・・話し合う必要がありそう。」


アマニエリスはマラックを目で追った。この瞬間はあの魔族が好きだと自覚した。


「本気で男が好きになった・・・」


アマニエリスは一瞬パニックになりそうと感じたが、深呼吸して、隣に立っていた、国王を見た。


「大丈夫か?」


「大丈夫です・・・国王陛下・・・」


伯父上である国王はアマニエリスを優しく見つめた後、目で宰相へ次の要人を呼ぶように促した。


カイテンは再び前に出て、次の要人を呼んだ。


「ケータス帝国の王子レナン・レ・ケータス殿下。」


礼拝堂が再びざわついた。

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