第3話 謁見の儀(婚活パーティー的な・・・)

中央大陸アルメンダリース

エルフ国家、エリテリア宗教国

首都エリアステス市

女神アマネア大神殿

アマネア歴3512年12月9日

午前9時ごろ


アマニエリスは自分の寝室で祭服に着替えていた。

純白の透けストッキングを身に着けた後、豪華だが履き心地の良い純白のブーツを履き、

純白の透け透け下着の上に同じく純白のアルバを着た。

その上、金色の線が描かれている純白のチャジブルを着用した。

女神アマネアを模したイコンの飾りを首からかけて、大神官の地位を示す純白をミトラを被った。

ゆったりとした大神官の祭服が好きだった。神官の前開きの白いキャソックの下で部屋や書斎で使う体にフィットする女性神官用の白い全身タイツとレギンスを着ると男性神官や男性信者の目線がすごく気になるものだった。


アマニエリスは思い出した、数日前、長老会で正式に大神官婚期祝福際が本日、12月9日の10時から開催されることを告知された。それと同時に女神アマネア教の大神殿長老会の一番若い会員で期待の星だった、ジェオバード・エーオマー神官の引退発表の場となった。

長老会の会員は合計10名(今は9名)の男女の神官たちで最高齢の女性神官、エヴァリス・ペロニエーは900歳のエルフだった。


鏡に映る自分の姿を見て、相変わらず華奢な女性のハイエルフにしか見えないことにため息をついた。

その時、部屋のドアがノックされた。


「エーオマー大神官猊下、もうお時間ですよ。入ってもよろしいでしょうか。」


声の主はローシェア・ヴィサロッテ神官だった。


「入っていいよ。」


ローシェア・ヴィサロッテ神官はソンヤ・マリーセ神官と共に大神官の寝室に入った。


「失礼いたします。」


二人の神官が同時に言った。


ヘンリック・クアドロース神官とコリーナー・メジーナー神官はドアの外で警戒に当たっていた。

一応平和な時代になっていたとはいえ、暗殺は未だに頻繁に起きている世の中だった。


神聖魔法使用者であるエルフの女性神官たちは魔石入りの長い魔法杖を持っていた。

神聖魔法が使えないエルフの男性神官たちは女性神官は強力な神聖魔法付与をした短刀を携帯していた。女神アマネアの神官になるエルフの女性は神聖魔法以外に光魔法、風魔法か水魔法のいずれかの使用者でなければならない。エルフの男性神官は同様、光魔法、風魔法か水魔法のいずれかの使用者でなければならない掟があった。それ以外に体術、弓術、剣術の上級者であることも条件だった。


二人の補佐官はアマニエリスの祭服の細かい直しなどをした後、彼女の両サイドに立った。


「それでは礼拝堂へ参りましょう。」


アマニエリスは嘘の笑顔を浮かべて、補佐官二人に伝えた。


部屋を出た後、4人は礼拝堂に向けて、儀式的な歩き方でゆっくりと向かった。

神殿の宿泊用施設の入り口に女神アマネア教の聖騎士団の一個小隊が待機していた。

聖騎士たちは50名だった。様々な種族のエルフの男女半分ずつだった。全員は銀色のアダマンタイトの全身鎧を着ていた。


神官は宗教の布教活動をするに対して、聖騎士はその神官を守る役目を行う。

神官が不在の際、女性聖騎士であれば神聖魔法の中級使用者、男性聖騎士であれば光魔法の上級使用者の騎士が神官の役目を代理することが認められていた。


聖騎士の小隊に守られながら、ご一行は礼拝堂に入場した。


広い礼拝堂の奥に、女神アマネアの巨大な像の元に急遽王座が設置されていた。そこにはこのエルフ連合国家で宗教国の国王、エーオマー王朝の3代目の国王である、ハイエルフのカイゼン1世だった。その隣に第一夫人の王妃である、森エルフのタルニーヤ・ゴーン・エーオマー。国王のほかの妻たち、全員、王座の両側に並んでいた。

成人した5人の王子たちも王座の周りに並んでいた。140歳以下の未成年者の王子たちは後ろに並んでいた。第3王子に戻ったジェオバードはアマニエリスを見かけた後、遠くからウインクしてきた。


「あああ、ウザイ・・あご魔人め。」


アマニエリスは笑顔を崩さず、心の中悪態をついた。


礼拝堂の奥に向かう途中、赤い絨毯の周りに各国の要人たちが立っていた。

アマニエリスは笑顔を振りまきながら、短い時間でなるべく多くの情報を得ようとしていた。


彼女の右側にサーラン王国の王子、レストス・サーランが自国の紺色の軍礼服を着ていて、彼女を憧れ、欲望、緊張の眼差しで見ていた。彼の護衛と思われる5人の軍人も立っていた。


「硬派の評判だが、むっつり助平っぽいかな。」


同じく右側に自国の赤い軍礼服のヴァンパイアの王子、ロスカーン・ヴァラドランとその護衛の4人のヴァンパイアが立っていた。彼の眼差しはヴァンパイアにして、大らかで優しいものだった。


「不健康な顔色を除いて、いい人かも。」


その隣に日本という異世界の国から召喚された勇者、トヨヒコ・ハラダが立っていた。黒いドマーゴン公国の軍礼服を身にまとっていた。彼の視線から何も読み取れず、空虚な眼差しだった。それ以上に目立ったのは勇者の従者で、彼と同じ異世界から召喚された女性、シエル・アオヤマ女史だった。黒髪でボブの髪型、見た目は20歳ぐらいで大きく青い目、細身の体で150センチの低身長だった。アマニエリスは彼女の目で明確、明白な敵対心と憎悪を感じ取った。


「異世界のハゲ勇者はともかく、この女性・・・やばいわ。」


王座に近い位置に立っていたのはケータス帝国の王子、レナン・レ・ケータスだった。彼は6人の女性戦士の護衛兼愛人と一緒に立っていた。青の上着と白いズボンの自国の軍礼服を着ていた。終始笑顔だったが彼の眼差しはどこか悲しみが漂っていた。


「女たらしには悲しい過去あり・・・知りたいが・・・話したくないわ・・・」


左側の一番後ろに立っていたのはイルナン王国の姫君、パートリシエ・イルンナン・カレーラだった。唯一の女性参加者。彼女の国は先進的国だったので同性婚などが法的に認められていた。全員予備軍の政策も実施されていた国であったため、彼女はドレスではなく、自国の茶色の軍礼服を着ていた。6人の護衛たちは彼女を守っていた。彼女の目線に対して、アマニエリスは少し寒気を感じた。時々感じている変態的な視線(アマニエリスは知らないがそんな目線が送っているのは補佐官で変態的な女性同士の恋愛に憧れる、ソンヤ神官だった)と同様の気配を感じ取った。


「二人きりに絶対になりたくないわ・・・」


その次に立っていたのはオステア共和国の第20代大統領、ジュアン・テレスコンだった。共和国の緑色の軍礼服を着ていた。雰囲気的に野生感がまったくなかったものの、目線が違った。明らかにアマニエリスに対して性的欲望を感じていた。4人の犬、狐、熊と虎の獣人の護衛が彼の囲んでいた。


「絶対に気を付けないとこいつに犯される・・・」


その後、魔王の息子のマラック・ヘストファーがいた。魔王軍の赤と黒の礼服を着こなし、2人の男女の魔族護衛が彼の両サイドに立っていた。彼の参加を歓迎しない視線が多く感じ取られたが、当の本人は気にしてない様子だった。特に勇者の陣営の女性従者と他の二人の筋肉モリモリマッチョの護衛たちから伝わってくる敵意が凄まじいものだった。アマニエリスは彼の視線から穏やかな心を感じ取った。そして平和を願う気持ちも感じた。彼女(彼だが)は認めたくなかったが魔族にときめいた。


「なによ・・このときめき感・・・やめてよ・・・わたし。」


彼女の左側、王座に一番近い位置に両親のカイテンとヘイランが立っていた。母の姿を見るのは久しぶりだったので嬉しかったが、父親の顔を見て、怒りが湧いてきた。


「全部お前のせいじゃないか・・・クソオヤジ・・・」


女神の像と王座の前に着いた彼女が深いお辞儀をした後、集まった各国の王族と貴族に振り向いた。


国王は王座から立ち上がり、彼女の隣に並んだ。


「元気か?アマニエリス。」


「はい、国王陛下。」


「伯父さんでいいだろう。」


「いけません。ここは公式な場所なので。」


「宣言しなきゃならないけど・・・問題ないかい?」


「大問題ですよ・・・でも大神官になったことで必ず来るとわかっていた。」


「無理はするな、アマニエリス。」


「無理はしません、でもすべてが終わったら、クソオヤジどのをぶん殴るのです・・」


国王は笑いを堪えるのは必死だった。


「では開催宣言をするよ。」


「はい、国王陛下。」


エルフ連合国家のエリテリア宗教国のハイエルフの国王、カイゼン1世は礼拝堂に集まった各国の人々に向けて、拡声器魔法を使って。


「300年ぶりの大神官婚期祝福際を開催します!!」


と宣言したのです。

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