第14話 羞恥の先

 まだ動揺が残るまま臨んだ第一ゲーム。悠は幸運にも早々に手札を使い切り、1抜けを果たした。しかし、それからの展開に息を呑むことになる。


 最後に残ったのは沙希と由紀。沙希の手札はわずか2枚。どちらがジョーカーなのかを決める運命の一瞬が訪れる。由紀は悠然と沙希の手元を眺め、左側のカードをスッと引き抜いた。そして、にっこりと微笑む。


「私の勝ちですわ。」


「残念!約束だから脱ぐね。」


 沙希は潔く立ち上がり、カーディガンを肩から滑らせて脱いだ。その仕草のひとつひとつが、悠にはスローモーションのように見えた。


(お、おい……本当に脱ぐのかよ!? これ、どこまで脱ぐんだ!? 上着だけで終わりだよな? でももし、もっと脱ぎ始めたら……いやいや、考えるな!)


 心臓が耳元で鳴り響くような感覚に襲われる悠。沙希が上着を脱ぎ捨てた瞬間、襟元から覗く肌がまるでスポットライトを浴びたかのように輝いて見えた。

 その眩しさに目を逸らそうとするが、どうしても意識が吸い寄せられてしまう。


(やばい、こんなこと考えてたら絶対バレる……!)


 焦る悠は、膨らみかけた男子としての象徴を隠すべく、慌てて座っていたクッションを膝に乗せた。しかし、その動きが妙に不自然だったのか、沙希が首をかしげて見つめてくる。


「どうしたの?悠ちゃん、顔赤いよ?」


「い、いや、なんでもない! ちょっと暑くて!」


 なんとか誤魔化したものの、冷や汗は止まらない。沙希の笑顔がまるでからかうように見えるのも、由紀とアリーナがじっとこちらを見ているのも、全てが悠の心をさらに追い詰めていくのだった。


 続く第2ゲームで悠は運悪く敗北し、仕方なく靴下を脱いだ。靴下程度ならば恥ずかしさも少なく、悠は気を取り直したものの、負けた悔しさはじんわりと残る。運ゲーだから仕方ない、と自分に言い聞かせつつも、負けるたびに体が軽くなる恐怖が心の片隅に忍び寄る。


 続く第3ゲームでは、場の雰囲気は明るく、女子たちはゴールデンウィークの予定について談笑しながらゲームを楽しんでいた。沙希は旅行の話をし、由紀は家族で行く美術館の話をする。その中、悠は徐々にプレッシャーを感じ始める。気づけば、自分とアリーナだけが残り、勝負は最終局面を迎えていた。


「さて、どっちを選ぼうかしら?」


 アリーナは真剣な表情を装いながらも、悠をからかうようにカードの上で指を行き来させる。その動きにはどこか余裕があり、まるで勝利を確信しているかのようだった。

 悠は必死にポーカーフェイスを保とうとするが、心臓の鼓動が速まるのを止められない。


(頼む、ジョーカーを引いてくれ!)


 アリーナの指がジョーカーのカードの上で一瞬止まる。悠はその動きに全神経を集中させ、冷や汗が背中を流れるのを感じた。


「Hmm... やっぱり、こっちかしら?」


 ジョーカーのカードを引き抜こうとする直前、アリーナはにやりと笑みを浮かべ、もう一方のカードに手をかけた。

 彼女は自信満々にそのカードをペアにしてテーブルに置き、大きくうなずいた。


「Good! やっぱり正解ね。」


 その一連の仕草は勝利への喜び以上に、悠を弄んで楽しんでいるように見えた。


 悠は3人の視線を背中に感じながら、重い手つきでブラウスのボタンを外した。上着を脱ぎ終え、キャミソール姿になると、3人の視線はますます輝きを増したように感じた。その瞳には好奇心と期待、そして少しのいたずら心が宿っている。


「さあ、続きをしましょ?」


 沙希は楽しそうに笑いながらカードをシャッフルし始めた。その手さばきはまるで次の勝負に期待を込めているかのようで、悠には妙に落ち着かなかった。


第4ゲームが進み、負けたのは由紀だった。


「仕方ありませんわね。」


 由紀は優雅に微笑むと、座ったままストッキングに手をかけた。その仕草は自然でありながら、どこか意図的に見えるほど洗練されていた。


(見ちゃダメだ!いや、ストッキングを脱ぐところぐらいセーフだろう)


 悠は心の中で葛藤しつつも、目が勝手に動いてしまう。由紀がストッキングを足首までゆっくりと下げていくと、その動きに悠の視線は吸い寄せられた。


 悠の視線に気づいた由紀が小悪魔のような微笑みを浮かべ、バツが悪くなった悠は慌てて目を逸らした。


 由紀はそんな悠の反応を楽しむかのように、最後にスッとストッキングを足から抜き去った。


 悠は膝の上のクッションをぎゅっと握りしめながら、次のゲームに向けて気を取り直そうとするのだった。


 続く第5ゲーム、沙希と悠の一騎打ちとなった。沙希の指は悠の持つジョーカーとハートのキングの間を行ったり来たりしている。その仕草に悠は微妙な焦りを覚えた。


「悠ちゃん、ジョーカーはこっち?」


 沙希がジョーカーを指でさしながら、甘えるような上目遣いで問いかけてきた。その瞳はまるで悠の心を読んでいるかのように輝いている。


(う、上目遣いなんて反則だろ……!)


 悠の鼓動は一気に早くなり、思わず喉が詰まるような感覚に襲われた。冷静に対応しなければと思うのに、頭の中は真っ白だ。


「そ……それは、ジョーカーじゃないよ!」


 何とか言葉を絞り出すが、その声は微妙に震えていた。ジョーカーを引かせるための嘘だが、自分でも隠し切れていないと感じていた。


「ふーん、そうなんだ」


 沙希は一瞬だけ考えるそぶりを見せると、「それじゃ、こっちだね」と言ってハートのキングを引いた。


「悠ちゃん、嘘つくの、ほんとにへたくそ」


 沙希は楽しそうに微笑むと、ハートとスペードのキングをテーブルにそっと並べた。その仕草は悠を完全に見透かしているかのようだ。


 脱ぐべきはキャミソールか、それともスカートか。迷いに迷った末、上半身ならまだ耐えられるだろうと覚悟を決めた悠は、震える手でキャミソールの裾に手をかけた。そして、思い切って一気に脱ぎ捨てる。


 その瞬間、3人の視線が悠の平らな胸とピンク色のブラジャーに集中した。


「悠ちゃんのブラ、私より全然かわいいんだけど!」


 沙希は目を輝かせながら嬉しそうに声を上げる。

「とってもcuteね! 」


 アリーナが両手を合わせながら褒め称える。


「悠さん、胸がないのにブラジャーまでしてるとは……見えないところまで気を配るなんて、本当に感心しますわ」


 由紀は感心したように微笑みながら、悠に視線を注ぐ。


 悠は彼女たちの言葉を聞くたびに顔がどんどん赤くなっていく。


(う、海やプールでは裸でもなんとも思わないのに……なんでだよ。これ、ただの下着だろ……なのに、こんなに恥ずかしいのはなんでなんだ!)


 胸にかかる3人の熱い視線に耐えきれず、悠は思わず両腕で自分を抱きかかえた。

 黒川の方に視線を移すとは、クスリと笑みを浮かべワイングラスに口を付けていた。


修正版


 第6ゲームのカードが配られると、悠は最初の13枚の手札を確認した。幸運にも最初から4つのペアがそろい、残りは5枚。さらに、ジョーカーも手元にはない。悪くないスタートだと胸を撫で下ろす。


 ゲームが進み、3巡目に悠が由紀の手札を引いたとき、引いたカードを見てほんの一瞬だけ眉をひそめた。その表情を沙希はしっかりと見逃さなかった。


「悠ちゃん、今ジョーカー引いたでしょ?」


 沙希の鋭い指摘に、悠は内心焦りながらも否定する。

「ち、違うよ」

「だからさ、悠ちゃんの嘘って本当に分かりやすいんだよね」


 沙希は悠をからかうような笑みを浮かべながら、悠の手札からスペードの3を迷いなく抜き取った。その後も沙希は悠のカードを引くたびにジョーカーを避け、見事に1抜けを果たした。


 次にカードを引く番となったアリーナも、なぜか悠のジョーカーだけは引かずにほかのカードを狙い続ける。


(なんでみんなこんなにスムーズなんだ?これが親ガチャ成功者の運命力ってやつなのかよ……)


 心の中でそうぼやきながら、悠はジョーカーを握りしめる手に汗が滲んだ。


 ついに、最後のカードを引く番が由紀に回る。「失礼します」と礼儀正しく一言添えて、悠の手札からハートのQを抜いた瞬間、ゲームが終了した。


 3人の期待する視線を浴びながら悠はスカートを脱いだ。美女たちに囲まれて見られるのは、女性の下着を身に付けた裸を見られている。


 羞恥を通り越すと興奮するというを初めて知った。思わず下半身が大きくなってきたが、バレるわけにはいかないので、股で挟み込んで誤魔化す。


ワイングラスを空にした黒川が、微笑みながら声をかけた。

「そろそろ終わりにしようかしら?これ以上やると瀬川さんが、学校に来られなくなっちゃうでしょうから」


 黒川の一言に、3人の女子たちは名残惜しそうな表情を浮かべながらも素直に従い、カードを片付け始めた。その様子に悠はほっと胸を撫で下ろす。


 珍しく助け舟を出してくれた黒川に心の中で感謝しながら、悠は慌てて散らかった服を手に取り、スカートを履き直し始めた。けれど、ふくらんだシンボルが収まらないのを必死に隠そうとする手つきはぎこちなく、動揺が丸わかりだ。


 スカートのホックを留めている最中、由紀が優雅な動きでキャミソールを拾い、悠に手渡してくれた。

「あっ、ありがとう……」


 お礼を言ったその瞬間、由紀がふわりと身を寄せ、耳元で甘い声でささやく。

「ねえ、大きくなった下半身、小さくするお手伝いをしましょうか?」


 その囁きが悠の頭の中でぐるぐると回り、体が一気に熱くなった。耳元どころか顔全体まで真っ赤になるのが自分でもはっきりわかる。

 その真っ赤になった悠をみて、3人の美女はクスクスと笑った。その笑い声に悠はますますいたたまれなくなった。


 

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