君が遺したモノがあるから
風宮 翠霞
柊日記
「……久しぶり」
ピーポー、ピーポー……。
とびっきりの懐かしさと、そして感傷。
薄暗い間接照明の明かりだけが灯る自室で、そんな複雑な感情を全て込めて呟いた一言。
その声は、孤独な部屋で誰にも届かず……そのまま近くを走る緊急車両のサイレンに
唯一僕の言葉を知っているのは、声をかけた先の木箱。
先程机の引き出しから出した、その箱中に入っているのは……一度仕舞い込んだ、一冊の手帳。
『
それだけ書かれた、【君】の日記帳だ。
病院で書いた日記なはずなのに、病の字が一つもないその日記タイトルは「
君とたった半月以下の付き合いの僕だけど、この日記を見る度に本当にそう思う。
「やっと、君の願いが叶えられたよ……」
つい数日前の事を思い出して
意を決して、ずっと封印していたその日記の表紙を、
『貴方は、いつも何かを諦めたような……そんな、暗い目をしていた。
そういう、人だった。』
最初は、窓の向こうの木の写真と共に病気の記録が書かれていたけれど……半分程進んだところ。そんな書き出しで始まる一
僕は、この先の内容を知っている。
君が、僕に隠していた事も。
君が、僕に伝えたかった事も。
全て知った上で、僕はもう一度君の
そうしなければ、ならないから。
そうしたいと、思うから。
君が生きた記録を受け止めようと……
『優しい貴方へ。』
そう銘打たれた、僕へ宛てたメッセージがあるその先を……。
何一つ取り
君が遺したモノがあるから 風宮 翠霞 @7320
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。君が遺したモノがあるからの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます