2-2
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アランはしっかりと
ガラスドームの
つくづく、
靴箱館に置いている特別性の靴箱は、番号通りの靴を入れることではじめて効力を示す。靴の性質に合った魔術をかけることでより
そもそも、箱が壊れること自体ありえないことだったのだが……。
ディセント家の
ならばあの夜、『ありえないことが起こる』
何かおかしなことがあったとすれば、あの少女がその場にいたということくらい。
先ほど、エデル・アンダーソンがアランの執務室をたずね、
今のところ、彼女は
まだ彼女が働き始めてほんの数日だが、
ひとつは、彼女が赤い靴をあれほど求めていながらも、魔力の
赤い靴は動き回り、おそらくエデルに自分を
(それに、赤い靴に対するあの
うつむき、つらい思い出に
あの赤い靴は母の遺品と言っていた。母親はあの靴を履いて、帰らぬ人となったのかもしれない。
アランは目を閉じ、とん、と机を爪で
もうひとつ気になっていたのは、才能と比例しない、彼女の
技術試験でアランを
いくら伝説の職人が
作業は
(あの歳であそこまでできるのなら、もう少しうぬぼれてもよさそうなものだが)
祖父のデルタについてそれとなくたずねてみれば、回答は「
(そういえば、父親はどうしたんだ。母は
アランはエデルの横顔を思い
本当に彼女のことは、よく分からない。
まぁ、女といえばみんなそういうものだが──すぐ
しかしそれと経営とは別のことだ。靴店の利用客のほとんどが女性であるし、能力のある職人を性別で差別するべきではない。
そういうわけで、エデルの採用を認めたのだが──。
セスから耳に痛い言葉をもらったが、オーナーは職人を守り導いていかねばならない。それが経営者の仕事であり、
アランは頭を
これ以上職人が
それぞれの仕事量が増え、職人たちに余裕がなくなればぎすぎすした空気が生まれる。それはおのずと利用客に伝わり、客足が遠のいてゆく。
(それは絶対に
やってきたばかりのエデルに手を差し
職人という種類の人間は、
うまく
(見習いたちはまだ仕事をさせるには未熟。
同じ靴作りをする仕事とはいえ、場所が違えば感覚も違う。まっさらな新人よりもよそで修業した職人の方が
しかし、メリットもある。
よそで経験を積んだ職人が入ることで、新しい技術を吸収できるのだ。
靴職人が
雇う側はその経験に大きな期待をする。リスクはあるが、大きく得るものもある。これが経験者採用というものだ。
アランは
(エデルは、デルタ・アンダーソンから受け継いだ技術をガラスドームにもたらしてくれるかもしれない)
それに、エデル自身もここで学べることが数多くある。導き方さえ間違えなければ、双方に大きな利を生むことになるはずだ。
エデルは靴を作るとき、どこか表情に
(これはあまり、よくない
まずはガラスドームの仕事を順に経験させ、彼女と
通常、作業は分業制だが、仕事の全体像が分かった方がエデルも仕事がしやすいだろう。
「とりあえず、研修計画表でも作るか」
アランはペンをとり、さらさらと文字を連ね始めた。
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