第4話 獅子堂 一真の特訓: 「旋風の獅子」への道

 試合が決まったその日から、獅子堂 一真は風間 修羅との戦いに備え、これまでにない特訓に打ち込んでいた。対戦相手である風間は、圧倒的なパワーと耐久力を誇る強敵。彼のような「嵐」のような相手を倒すため、獅子堂は自身のスタイルであるスピードと回避力、そして冷静な判断力を最大限に活かす特訓メニューを組んだ。


 早朝、まだ霧が立ちこめる中、獅子堂 一真は険しい山道をひたすら駆け抜けていた。息を切らしながらも、彼は一歩一歩を確実に進める。

「風間 修羅…あいつは嵐みたいな男だ。俺が真正面からぶつかっても、簡単にねじ伏せられるだろう。でも、俺には俺の戦い方がある。風のように、相手を受け流して、隙を突く。それが俺の強さだ。」

 霧が風に揺れる中、彼は自分もまた風の一部となったかのような感覚に包まれた。足元は不安定で、少しの油断が命取りになる。それでも、風を感じ、山の起伏を読み取りながら進んでいく。

「俺はただのレスラーじゃない。観客に、応援してくれるみんなに、勇気を与えたいんだ。だからこそ、俺は絶対に倒れられない。」

 彼は山道の険しさが、自分の体をさらに鍛え、足腰を強化していくのを感じていた。転倒しそうになるたびに体を立て直し、そのたびに確信が強まっていく。

「この足で立ち続ける限り、風間には絶対に負けない。」


 冷たい川の中で、獅子堂は両手を伸ばし、小石や枝を掴むために集中力を研ぎ澄ませていた。流れてくる小石は予測不可能な速度で目の前を通り過ぎる。

「風間の攻撃は、きっとこの川の流れのように一瞬で迫ってくる。俺が油断すれば、一瞬で捕まってしまうだろう。でも、集中していれば、必ずどんな攻撃も受け流せる。」

 冷たい水が手を刺すように流れ、小石が流れる方向も変わり続ける。それでも、獅子堂は息を整え、ひとつひとつを確実に掴んでいく。

「ここで逃げるわけにはいかない。この試合に勝つために、俺は今、風間と戦っているんだ。」

 彼の手が水を切り、次々に小石を掴んでいく。水の流れを感じることによって、彼は風間の攻撃に対する感覚も同時に鍛えられていった。

「たとえどんなに速い攻撃でも、俺がしっかり見ていれば恐れることはない。風間、俺はお前の攻撃をかわしきってやる。」


 トレーニングパートナーが風間を想定して突進してくる。その圧倒的なパワーと体重が一気に襲いかかる瞬間、獅子堂は一瞬だけ冷静に体を捻り、巧みにかわした。

「こんな突進が、試合では何度も繰り返されるんだろう。でも、俺は怯まない。何度でもこの突進をかわせる自信をつける。それが俺の必殺技を決めるカギになるんだ。」

 トレーニングパートナーの突進は容赦なく、数を重ねるごとに体力も奪われていく。それでも獅子堂は休まず、次々に攻撃をかわし続けた。

「力でぶつかり合うだけがプロレスじゃない。俺には俺の戦い方がある。風間のパワーに飲み込まれることなく、俺のタイミングで反撃に出る。」

 心身が限界に近づくたびに、自分の中に眠っている力が目を覚ましてくるのを感じた。風間に押されても、必ず自分は立ち上がる。

「この技術さえ磨き上げれば、俺は勝てる。風間の突進を乗り越えて、必ずあいつに一撃を見舞ってやる。」


 月明かりだけが照らす静かな夜の山道。獅子堂は周囲の暗闇に身を置き、風の音や気配を感じながら歩き始めた。

「風間の威圧感は、まるで暗闇の中に潜む脅威のようだ。だが、この静寂の中で冷静さを保てれば、リング上でも必ず冷静に対処できる。」

 視覚に頼らず、音や空気の流れを感じ取ることで、風間の巨体が迫ってくる感覚を想像しながら、一歩一歩を踏みしめる。

「恐れる必要はない。俺はこの風の影の中で、何度も心を試されてきた。どんなに威圧感が強くても、俺は飲まれることなく立ち向かう。」

 暗闇の中、彼は自分の心が研ぎ澄まされていくのを感じた。風間の圧力に押されても、最後まで冷静さを保ち続ける覚悟が、胸に刻まれる。

「俺はもう、ただの若手レスラーじゃない。俺はヒーローとして、この試合で勝利を手にし、ファンに勇気を届けるんだ。」


 特訓を終えた獅子堂 一真は、試合への覚悟と自信を胸に、風間 修羅との戦いに挑む準備が整った。彼は「旋風の獅子」として自らのスタイルを磨き上げ、風間という「嵐」に対抗する力を手に入れた。そして、彼の心には、ただ勝つだけではなく、観客に「ヒーローとしての強さ」を見せるという強い決意が宿っていた。


■インタビュー:獅子堂 一真と共に特訓を積んだ選手・田辺 健太


インタビュアー:「田辺さん、今日はお時間いただきありがとうございます。今回の風間 修羅選手との試合に向け、獅子堂選手と一緒に特訓をされたとのことですが、実際の練習風景はどのようなものでしたか?」


田辺 健太:「こちらこそ、ありがとうございます。そうですね、一真と一緒に取り組んだ特訓は想像以上にハードなものでした。特に山での走り込みや川での反射練習は、見た目以上に体力を消耗するんです。でも、一真はどんなに辛くても決して音を上げず、常に先を見据えた視線でトレーニングを続けていました。見ていて、自分も自然と力が入ってしまいましたね。」


インタビュアー:「田辺さんもかなり練習に参加されたんですね!風間選手は非常に強力なパワーを誇る選手ですが、獅子堂選手はそのパワーにどう対抗しようとしているのでしょうか?」


田辺 健太:「風間選手は確かにパワーでは抜きん出ています。でも、一真はただ力でぶつかるのではなく、自分のスピードと俊敏さを生かして相手の攻撃を冷静に受け流す戦術を徹底しています。彼は特に『突進への対応』の練習を徹底的に繰り返していて、僕が全力でぶつかっても、ことごとく避けられてしまうんですよ(笑)。」


インタビュアー:「それはすごいですね!彼の対応力がそこまで向上しているとなると、風間選手も簡単には攻撃を決められないのではないでしょうか?」


田辺 健太:「その通りです。実際、僕も彼の対応力には驚かされました。何度も彼に突進をかけましたが、彼は冷静に動きを読み、無駄な動き一つせずにかわしてみせたんです。一真にはリングの中で風のように動く力がありますし、彼はその力を極限まで引き出せる状態に仕上がっています。あの冷静さがあれば、風間選手の強烈な一撃もかわしきれるはずです。」


インタビュアー:「彼の成長ぶりには、さぞかし驚かれているのではないでしょうか?」


田辺 健太:「本当にそうです。彼がここまでの集中力と覚悟を持って特訓に臨む姿勢は、以前とはまるで違います。『風の影』として夜の山道を走り抜ける練習では、見ているこちらが思わず息を呑むほどでした。視覚に頼らず、ただ風や気配だけで判断して動く姿勢を見て、『これはヒーローとしての新しい領域に達している』と感じました。」


インタビュアー:「そうした取り組みがあれば、風間選手の威圧感にも圧倒されることはなさそうですね。」


田辺 健太:「ええ。彼にはもう、恐怖なんてものは存在しないかのようです。彼はただ勝利を目指すだけでなく、ファンのために全力で戦う覚悟を持っています。僕たちが試合に向けて一緒に準備してきた全てを見てきたので、正直、今の一真が負けるなんて考えられません。風間選手も簡単に倒れる相手ではないでしょうが、それでも、一真には十分な準備が整っています。」


インタビュアー:「なるほど、彼の姿勢がそこまで徹底されていると、負けるはずがないと感じさせられますね。ファンにとっても、見逃せない試合になりそうです。」


田辺 健太:「はい、ファンの皆さんにもぜひ彼の勇姿を見届けてほしいです。一真はリング上で、観客に夢と勇気を与える準備をしっかりと整えています。僕も一真の勝利を信じて、応援しています。」


インタビュアー:「田辺さん、ありがとうございました。獅子堂選手が風間選手にどのような戦いを見せるのか、とても楽しみです!」

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