第5話 少しずつ変わり始める日常
もし戻ったら誰もいなかったらとか、怖い人達がいてあんな目こんな目に合わされたりだとか少し疑心暗記に陥りながら部屋に戻ると彼女はまた楽しそうに部屋で1人お酒を楽しんでいた。
「遅いよーお兄さん」
「風呂くらいゆっくり入らせてくれ、久しぶりの湯船だったんだ」
疑心暗鬼になっていた心を隠すように、平然を装う。
「さあさあ夜は長いよ、何する?映画みる?お話しする?つまみもいっぱいあるよ!」
机の上に置かれたレジ袋の中にはビールとつまみでパンパンに膨れていた。
「いやいや、2人で飲み食いする量じゃねーだろこれ」
「僕だってさっきよりかマシだけど、そんな飲めないし」
「お姉さんを舐めるな。お仕事で鍛え上げられた胃と肝臓の前には敵では無いのだ」
「仕事でそんなに飲むんだったら、別にそんな飲みたいとかならないんじゃないの?」
「趣味で飲むお酒は別格に美味しいの」
なんだこいつ化け物か?
「天職についてるみたいで何よりだよ」
コンビニ袋の中から度数の少ないサワーを探し、彼女の腰掛けるベットの横に座った。
「じゃあ少しだけ貰うよ」
「いっぱい飲ん大きくなるんだよ」
「もう成長期は過ぎたよ」
そのままダラダラとくだらない、取り止めの無い会話をしばらくしていた。
昔の僕達もこんな楽しい時間を過ごして居たのだろうか?
なんの思惑もなく自分を偽らなくてもいいこの空間はとても居心地が良かった。
彼女が髪を耳にかけたり、子供っぽく笑ったかと思えば急にドキッとする仕草をしたりとにかくかけがえのない時間だった。
夜も深くなり、椿も疲れが溜まっていたようで少しうとうとし始めた。
「そろそろ寝ようか」
「えーやだ。まだお話しするー」
駄々をこねてはいるが、こうなってだんだんと口数も少なく、テンションも目に見えて落ちている。
こうなると、寝るまで時間の問題だろう。
「分かったよ。ただ話すのはいいけどベッドには一旦入ろう」
ベットの上に置かれているツマミをどかして、彼女にベットに入るように促す。
「仕方ないなー。昔からワガママなんだから」
「予想だけど、多分どっちかと言えば僕はワガママに付き合わされてたと思うな」
ベットを這うように登って行き、布団の中にモゾモゾと潜りこむ。
「早く来なよ」
ぽんぽんと横を叩く。
「分かってるよ」
彼女と少し間を開けて布団に潜り込む。
この大きさのベットはどれくらいのサイズ何だろうか。
部屋にある固くて使い古された小さい敷布団を思うと少しため息をこぼす。
「なんでそんな離れるの?お姉さんのこと嫌いになった?」
「そうゆう訳じゃないけど…近いと寝ずらいだろ」
まあ実際は俺の理性と心臓が持たないだけなのだが。
「そんなことない」
よいしょと体を動かして体温が伝わる距離まで近寄ってくる。
近づいて来て上目使いでこちらを見る彼女の視線に耐えられなくて天井に視線をそらす。
「ねえ、これからずっと一緒だよね」
「そうゆう約束だしな」
「これから楽しいこといっぱいあるよね」
「怠惰な学生を満喫している身だからな。いつでも付き合うよ」
「あ…その、彼女とかいたら無理して付き合わなくて良いからね」
「今は居ないよ」
本当は一度もいたことは無いけど少しでも見栄を貼ってしまう。
悲しいけど僕、男の子なのよね
「そっかなら良かった、って言って良いのかな?」
「どうせ寂しい文化祭を過ごす予定だったしこんな美人な幼馴染の彼氏役が出来るんだ」
「良かったよ」
「そっかなら良かった」
そっと手に柔らかい手の感触が触れる。
「これからまたよろしくね楓」
「ああ、こっちこそよろしく椿」
ーーーーーーーーーーー
気だるい講義も終わり彼女との待ち合わせ場所であるカフェで1人スマートフォンをいじりながら待っていた。
あれから実際に学校で会うことは無かったから少し緊張しているのは内緒のお話し。
椿との夜を過ごした後、タバコにもお酒も一切しなくなった。
そのせいで切れてしまった仲も無かったが、新しく繋がった仲も少なく無かった。
むしろ今の関係の方が素の自分を出せている気がして過ごし安い気がもした。
少し物足りなく感じる日もあるけど。
あれから椿とはこまめに連絡を取り合っている。
こんな番組面白かっただとか、駅の近くに美味しいスイーツのお店が出来ただとか。
たまに意味不明なのが来て頭を悩ませるがそれもまた楽しかった。
「ごめん、待ったかな?」
「いやそんなに」
ついに来たかと声の方を見ると言葉がで無かった。
あの時の酒焼けした猫撫で声とはまるで違う張りのある声に、露出は抑えながらも華やかにまとめた服装。
髪も前合った時のように、髪をふわふわにしておろしたものではなく、ストレスートで編み込みのある形にしている。
確かに派手さは無いかもしてないが、これでモテないとゆうのはおかしな話だ。
絶対に彼女レベルであればすれ違った後も目で追ってしまうし、噂になってもおかしくは無い。
その証拠に現にこのカフェで彼女と俺にそこそこの視線が集まっている。
「えへへ、今日は初めてのデートなので気合い入れてメイクも服装も気合いれちゃいました」
くるりとその場で回って見せる。
「可愛い彼女さんになんか言うことは無いですか?」
死ぬほど聞いて、これ以上無いほどベタな感想しか出ない。
「よく似合ってるよ」
叶うのであれば彼女の隣を胸を張って歩ける男になりたいと思った。
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