第26話

洋館の方はともかく、純和風の――茅葺かやぶき屋根ってやつだろうか――日本家屋の方は、横長の建物に沿って並ぶ障子をすべて開け払い、その奥には開放的な畳の空間が広がっていた。



開放的すぎて、いつでも誰でも入れる状態だった。



門構えすらない――正直、どこまでが山で、どこからが庭なんだって感じの家屋だと言うのに、そんな風に無防備な感じに開け放たれた状態な事に驚いた。



「心配しなくても電気もガスもちゃんとある。もちろん水道もな」



からかうような口調でそう言ったスオウは、見渡す限りの森林と、その中に建つ和風と洋風の建物の前に立ち尽くす私の隣に並んだ。



「ただ、TVは1チャンネルしか映らないしネットなんて言語道断。もちろん電話も圏外だ」



スオウの口調はどこか楽しげだったけど、ちょっとだけ私は悪寒を覚えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る