第6話 名の由来。

少子高齢化の原因として新開発された医薬品の効能から寿命が伸び、子供を望まない若い世代のカップルが急増したのも性交後に服用する100%避妊薬の影響からか、その数年前に国は保健体育の授業でそれまでの避妊から積極的な妊活を奨励した。もちろん避妊用具のコンドームは製造販売中止と使用禁止させた。

半世紀前の日本では若い世代の性欲を高める目的でモザイク処理の要らない動画も認められたが、結果的に性犯罪が増えただけで出生数は増加しなかった。

初の任務を終えた翌日、出社した僕へ細川課長から、

「始めての職務はどうだった?」

「戸惑うことばかりで時間は掛かりましたが、出来る限りの努力はしました」

昨日デビューの新人に多くを期待されても、僕はこう答えるしかない。


「そうか上手く行ったなら何より、これからの支援依頼が続いてる、今日も頼むぞ」

そんな流れで月曜から金曜まで朝九時から午後五時までの公務定時刻で、僕のエージェント・ワークが始まった。

同じ支部で活動できる期間は長くて一年、短い場合だと三ヶ月で転勤に成る、その理由としては将来的に同じ遺伝子を父に持つ子供同士でカップルに成らない様の近親交配を防ぐ為らしい。


先輩の木村さんは僕が着任して凡そ二ヶ月で遠方の支部へ異動辞令が出た。

「大山、身体に負担のかかる仕事だけど、若いから未だ未だ頑張れよ」


最後の挨拶に僕は以前からの疑問を訊いてみたかった

「木村さんと会えなくなる前に『チェリー』の由来を教えてください」

「そうだな、知っておいた方が良いな」


今から三年前、僕が採用される二年以上も前に『人口増加計画』が建ち上がり、試験的に『支援課』が新設された。ある程度の学歴と人並み以上の容姿若しくは体力を兼ね備え、そして先祖から受け継いだ長寿の遺伝子要素を厚労省のマザーAIが審査した。それに適任な職員が選抜されてエージェントに任命された。


勿論僕は大きな病気や風邪をひいた経験の無い体力系で、対して木村先輩は女性に人気な細マッチョのタレント風イケメンだった。


僕が着任するより以前にコードナンバー007、前任者の桜田さんの名前由来でエージェントネームの『チェリー』が命名された。


この時点で短期勤務地移動の計画は無く、桜田さんと木村さんは与えられた職務に励んだが、試験的に設立された支援課へ独身の木村さん、婚約から半年の桜田さんはパートナーに職務の内容を告げてなかった理由は『職務における守秘義務』だったが、ある日の事、チェリーこと桜田さんの職務を婚約者の女性が知った。

誰にも言って無い秘密を知ったには、桜田さんは任務のプレッシャーから業務の夢を見た中で、うわ言で関係した女性の仮名を口走り、それは自白したも同然で入籍直前の婚約者は烈火の如く怒った。


女性と受胎交尾する職務を嫌悪したより『何故私に黙っていた、それが許せない』が理由から悲しい事件が起きた。


翌朝出勤しない桜田チェリーさんの端末に支援課長から何回もの着信が有り、正午まで待っても返信が来ない悪い予感の課長が所轄警察へ安否確認をお願いした。


自宅を捜索した警察から細川課長へ連絡が入った内容は、桜田さんは自宅のベッドで全身を滅多刺しで血の海で心配停止状態。

婚約者の女性はリストカットしたが死に切れず、殺意と犯行を認めて犯行動機を語った。


「つまり、大山君の『チェリー』は前任者の桜田さんを偲ぶ意味から引継ぎだよ」

それが僕のエージェントネームの由来なんだ、亡くなられた桜田さんを気の毒と思いながら婚約者も悲劇の犠牲者だと同情する。


もしも悲劇で誰かを不幸にしない為にも、僕は一生パートナーを作らないと心に決めた。


同じ支援課に所属しても班が違うエージェントは交流も面識も無い、ぼくの属する一班から五班まで凡そ十人を細川課長が管理する、所属は二人組でも職務は個人毎、どの班に誰が居るとは何も知らされて無い。


 木村先輩を見送った翌日から職務に没頭して月日が流れ二ヶ月が経ち、僕に異動辞令が出たが、

『幾らなんでも少し早くないか』と言う細川課長の言葉が気に成った。

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