第4話 チェリー君、腰を止めるな。

『地球再生計画』の効果を期待出来るのは200年後だと誰も分っているが、北極や南極の氷山は昔の姿に戻らないまま時間だけが過ぎていく。温暖化で氷山が溶けて上昇した海水を真水化で農業用水に再利用する計画が進んでも、海水面の上昇が止まり、国土の面積を減少させた島国が息を吹き返すのはいつの事だろう。


過去に発展途上国の人口増加に因る食糧危機は、地球環境の破壊から人口減少で不安が少なくなった結果オーライに過ぎない。

極地のオゾン層と太陽光を遮断できる地球の大気回復も未だみたいで、猛暑を避ける熱帯の国民は地上の生活を諦めて地下へ居住空間を広めた。昔で言う所の空調された地下街はとても快適に過ごせる。


それでも地上の移動手段は従来からの鉄道と電力モーターのバスと自動車に移行して、化石燃料のガソリン、軽油で走行する自家用車や路線バスは過去の遺物として博物館のみで動体保存されている。

しかし衣類や生活用品など石油製品の原材料以外を規制された産油国は、嘗ての砂漠が緑地化された広大な農地の産物で経済を賄っている。


21世紀の半ば、高齢者の過失運転に因る痛ましい交通事故対策には、自動車運転免許証の70歳定年化で移動手段を失った高齢者にはロボット技術の進歩から、国が運営する自動運転無料タクシーをチャーターできるシステムが始まった。

それより先に新開発された薬効でアルツハイマー型認知症の高齢者も減るには減ったが・・・

「シャワーなんて要らない、時間が無いわ、早く子作り始めましょう」

不用意に童貞を自白して我を忘れた僕へミーシャさんの言葉が強い。


「ちょっと待ってください、未だ確認事項が有って」

「初めは自己注入でセルフ受胎の選択だったけど、チェリー君が新品なら『初物を食べないのは女の恥』でしょう?」


我を忘れているのは僕の方だけじゃないみたいで、急かすミーシャさんが先に下着姿に成り、

「本当は男性が先に全て脱いで、女性のランジェリーを優しく外すのが男と女の礼儀よ」


男女の礼の礼儀とか言われても未経験の僕は疑う余地も無く、ミーシャさんより先に一糸纏わぬ全裸に成った。

「女性のランジェリーは心のガード、全てを男性に見せたら次行動は一つ、焦らず優しく、そうよ初めてにしては上手ね」

ブラとショーツを脱がす僕へ優しく微笑む、その言葉に体中の血液が沸騰する。

研修では女性型の人形、愛玩人形セクシードールで性交を体験したが血の通った人間の女性は柔らかく温かい、そして男性を誘う様な甘く好い匂いがする。


初任務と初体験の緊張とで意識は薄れていく僕の手を引いてミーシャさんはベッドへ押し倒した。

「初めてでしょ、何処が目標なの分からなくても大丈夫、全部私が教えてあげるわ」

完全にマウントを取られた僕をリードする囁きに僕の相棒<愛棒>は臨戦態勢へ変化している。


「ちょっと待って、僕はいつでもOKですが、ミーシャさんの準備は?」

少しでも冷静に思考できる時間が欲しい僕の問いに、

「私は既に濡れ濡れのウエルカム状態、さぁ行くわよ」


ベッドに押し倒された僕を上から襲うミーシャさんは腰を沈めた。

あ~これはホース・ライディング・ポーズの騎乗位だ、などと考える余裕も無く。


「ちょっと待ってください」

必死に訴える僕へ、

「ダメ、待て無いから」

一定のリズムで前後に動くミーシャさん、


「あ~~~~」

童貞とは言え余りに早い屈辱の早漏、三コスリ半も絶えられず僕の相棒は暴発した。


「我慢できずに出ちゃったのね、初めてのチェリー君」

あぁ、色んな意味で僕はチェリーだ・・・


僕の身体から離れないミーシャさんは、

「繁殖行為は時間内に一回だけなの?」

え、二時間と言う規定は有るが回数については規則に無いと記憶している。


「多分回数制限はありません」

「じゃあ、このまま続けても好いわね、若いから二回や三回、もっともっと出来るよね」


確実な受胎を願うならそれは当然の申し出で、暴発した僕の相棒はミーシャさんの胎内で臨戦体制をキープしている。

「はい、是非とも面目躍如を」

草食系男子や植物系男子が多い学生時代には、一日何度も自慰している話題に性欲が強いのは恥かしい雰囲気があった。


今の僕は『男の値打ちは質より回数だ』と思考を切り替えた。

「今度はチェリー君が動いてね、抜かずの二発目からもっと長い時間をかけてよ」


ミーシャさんの性的指導を受ける僕は言われたままに子種が漏れないよう、一度も離れる事無く体位を入れ替えて何度も爆発させた。


「凄いねチェリー君、五回連続って私も始めてよ、これで満足できた?」

初めての感激で自分の満足を理解出来ない僕は、

「ミーシャさんが気持ち好過ぎて、満足の意味が分かりません」

正直な感想を告げると、

「まぁ、可愛い子ね、チェリー君が満足できるまで任務の延長は可能なの?」


そうだ、これは公務で人口増加計画の一環、上司の許可と施設の使用許可が必要で、多分それは認められないだろう。

その思いが表情に出てたと自分でも思う。


「無理なら良いけど、一生に一度の筆おろし、童貞卒業記念日でしょ」

そこまで言われると僕も引けないから、上司の細川課長へ『始めての任務に少々手間取りまして時間を延長しても宜しいか?』と音声通話でなく文章ツールで送った。


直ぐに『今日の任務は一件、延長後は直帰しても良いから、施設の使用許可はこちらから届ける』

の返信を受けて。

「ミーシャさん、時間延長で大丈夫みたいです」


上司の許可を得て、スイートルームに備え付けのインターフォンからフロントへ時間延長の確認を取った。

「その件は伺っております、何か精の付く昼食ランチを御用意しましょうか?」

ホテル側の気配りに感謝した僕は、最近は大豆加工肉ばかりで本物の牛肉を食べて無いな、折角なので精の付く良質な動物性タンパクをリクエストした。


勿論、依頼者のミーシャさんも黒毛和牛のサーロインを堪能して、午後から人口増加計画の延長戦に挑んだ。

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