第2話 未来の技術。
21XX年、二十二世紀と呼ばれ初めた頃に数々の分野で日本を含めた世界は多種多様の分野で進歩した。
日本国内で言えば、財務省と日銀が協議して資源保護の観点と初期の電子マネーから紙幣の発行を取り止めが、子供の社会学習と金銭感覚を経験させる目的から一部の硬貨発行を継続した。
紙幣の代わりに採用されたのは、と、その前に、六歳以上の国民全てに個人情報を管理できる通信端末機、ポイホ<ポイント・スマホ>が支給されて、百年前に始動したマイナンバーカードは移行し、個人資産と廃止された現金の全てを日銀が管理するがジャパン・ポイント制になった。
銀行預金も資産運用の株式もすべてジャポイホことジャパン・ポイント・スマホで管理されて、国外のアメリカのドル・ポイ、欧州諸国のユーロ、ポイ、世界一の経済大国中国の元・ポイも相互システムに因り、外貨為替が安定してそれまでのFX事業は終了した。
◇
厚労省に新規採用され、『厚労省人口対策部、シングルマザー支援課』に着任した僕は数週間の研修を受けて、現場デビューと成った。
ただ冷静に考えてみれば、僕の職務は少子化の日本に子供を望む女性を妊娠させる大儀であるが、昔のAVに登場するサオ師では無いのか、そこの疑問は新人研修を終えた今でも払拭できなかった。
業務初日の朝、『厚労省人口対策部、シングルマザー支援課』に出勤した僕は細川課長から任務用のカジュアルなスポーツウエアとフォーマルなスーツのツーパターンを入れたスーツケースを手渡され、
「依頼者の要望で君は着衣を選択し、行為の手順は全て君のポイ・ホで確認できる、交尾依頼者の個人情報は明かせない、エージェントは依頼者から氏名年齢を訊かれても言えない
007と伝えられて、名作洋画の諜報部員を連想した僕は『ジェームス』若しくは『ボンド』と名乗れるのかと想像した。
「君のエージェント・ネームは『チェリー』だ、これは相手の女性を警戒させない為で特に理由は無い」
いやいや、僕が女性未経験の童貞だからチェリーなんだろう、前世紀の虐めかパワハラが今も続いていると感じた。
課長の指示を受けた僕はポイホで受胎行為の手順を確認した。
1、受胎を依頼する女性の同意書にサインを求め、業務専用端末から支援課へデータ送信する
2、依頼女性へ唾液か尿で排卵確認を終えた後に二時間のタイマーを設定し、受胎作業を開始する。
3、受精のための精子注入方法として自然な男女の交尾、もしくはエージェントが依頼者の前で自慰行為に採取した精子を専用シリコン器具で胎内へ注入する方法は医療行為に該当する為に依頼者が自己注入で行う。
4、依頼女性の不安から『必要最低限の脱衣、それ以外は着衣での行為』『胸など性器以外の接触禁止』『デリケートゾーンに触れない』『唇へキスの禁止』など、依頼者の希望を最大限に尊重する。
5、無事に受胎が成功しても僕達エージェントには報告されない。
6、開始から終了までの所要時間は二時間まで。
数々の規則と入り女性への対応に不安と緊張が混じる僕は、
「はい、国の役にたてる頑張ります」
と課長へ答えて任務の指定施設へ出発した。
国が管理する宿泊施設は妊活を目的とした格安ホテルで若い世代には人気だと聞く。
後日談・・・
一年前から試験的に開始された人口増加計画の精子提供エージェントの僕には前任者が居て、その男性のエージェント・ネームが『チェリー』だと、先輩の木村さんから聞いたが、なぜ先代のチェリーさんが辞職したのか、その理由は教えてもらえなかった。
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