日本の未来、人口増加計画

鮎川 晴

第1話 21XX年の日本。

西暦21XX年、日本女性の生涯平均出生数は0,3人と成り、そして海外居住者を含めた日本の全人口は六千万人を切った。

過去の西暦2000年前後は一億三千万人まで増加したが、それ以降は減少の一歩。


学歴格差と収入格差から貧富の差も顕著に成り、自身の生活が精一杯で結婚しない結婚出来ない若者には、趣味に没頭したい草食系男子の存在も無視出来ない。

更に有りとあらゆる疾病に対応した医学の進歩から益々高齢化も進み、日本人の平均年齢は妊活を望めない四十五歳を越えた。


先細りの日本、このままでは日本人種の絶滅、人的レッドデータブックに絶滅危惧種と掲載されるのも時間の問題と政治家を初め有識者も口を揃えて言うが、『それならお前ら権力者が子供を産め』と若者中心に世論は荒れた。


過去の子育て世帯への補助金支援など生温い政策では日本の危機を救えないのは誰の目にも明らかで、遂に国家プロジェクトとして『人口増加政策』が発令された。


新生児を出産した女性には出産費を含む一時金と養育費を無償支給、育児に専念できる様に母親の住居費を含めた生活費も一括支給する。


子供が無事に誕生日を迎えられたならお祝いボーナスをプレゼント、勿論の事、二人目以降の子供も対象に、表現は悪いが職場の人間関係に恵まれなく退職した女性でも出産して育児をすれば生活の金銭的な保障される。


多額の予算を投入した政府は、その効果を期待しないと言えば嘘に成ると自身満々だったが、現実はそうでなかった。


出産適齢期の女性が言うには『私たちは子供が欲しいけど夫は要らない』『外れを引くかもしれない夫ガッチャは真っ平ゴメン』『その場の雰囲気と勘違いで結婚しても必ず倦怠期は来る』などと女性議員が調べた世論調査の発表が世の男性を驚かせた。


人口増加の出産奨励の前に婚姻を前提のカップリングが必要でも、今からでは結果的に時間が足りない。


そこで政府が打ち出した次の政策は『パートナーの居ないシングルマザーを応援』に国民の誰もが現実的な緊急性を感じた。


それでも自分の産んだ子供が将来に事件、犯罪を犯す可能性を不安した女性達は『ハイスペックの遺伝子を持つ男性を政府が推薦して』と声をあげた。


そして緊急立法として翌年四月一日より国家プロジェクトの『優良遺伝提供支援』が発動されることと成った。


自分の名は大山大介、『心・技・体』の身体と心を鍛える為に中学高校と柔道を続けて、大学はスポーツ推薦でなく一般入試を受けた。

その理由は高校時代の公式戦で膝を負傷して能力の限界を悟った。


柔道をやめて現在は身長182cm、体重の75kg、それでもこれまでの習慣で身体を動かすのは好きだった。

無事に四年間で大学生活を終えて公務員試験に合格で、安定した人生設計を望んだが結婚する予定は無いと言うより、中学高校の頃から女性と出会いの無い柔道部、男子学生が圧倒的に多い理系大学出身で今もパートナーが居ない。


新年度の配属された部署は『厚労省人口対策部、シングルマザー支援課』だった。

入省式初日に配属課へ出勤する新人の僕へ、

「ようこそ、大山君、君に日本の未来が掛かっているから、頑張ってくれ」

シングルマザー支援課の細川課長が僕の右肩を叩く。


え・え・え・それってどういう事でしょうか?

言葉に詰まる僕を見て先輩らしき男性が、

「俺は大山君より三年先輩の木村、まぁ気楽にやろうよ」


またまた、え・え・え、と謎は解けないままの僕に細川課長は、

「君達の遺伝子を希望する女性を受胎させるのが仕事だから」


それってTVニュースで見た『優良遺伝提供支援』なんですか、確かに採用試験の際に血液・尿・呼吸器・心臓を含めた画像診断を受けたが、自分自身が優良遺伝子と想像すらしてなかった。


「あのぅ、僕は女性経験の無い未使用ですが・・・」

恥かしくて消え入りそうな声で応えたが、

「大丈夫、男は誰でも最初は童貞だから、経験を積めば立派な種牡馬しゅぼばに成れるから」


え~種牡馬って・・・一応これでも人間なんですけど・・・

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