祝祭にありて歌姫に寄する歌 9
不幸な記事を書き続け、日は過ぎていった。
「お金貸してよぉ、こっそり、ヤらせてあげるから」
サキちゃんはからの通信は、もう、なりふり構わなくなってきた。無視しつづける。自分が不幸だと思い知ればいい。不幸なんだよ、君は、サキちゃん、不幸なんだ。
そして自分も不幸だった。
不幸な記事に耐えられなくなってきた。とてもとてもイライラする。
「……」
ふと、新しいページを開いてみた。
小説を、書いてみようと思ったのだ。
小説……。
を。
自分だけの、話を。
誰かの不幸に、頼らない話を。
でも、できなくて。小一時間は経っただろうか。
「おーい、手が止まってるぞ」
指摘されてはっとなり、白紙のままの画面を消し、作業に戻った。
ブログってさ、幸せなことを書いた方がいいよ。
後で見返したときに、力になるから。
つらいこともたまには吐き出していいけど、努めて明るく振る舞った方がいい。
ブログは他人じゃ無くて、むしろ自分のために書くべきだと思うんだ。
「変なの」
「そうかな」
「不幸で売ってるライターさんが、そんなことをいうなんて」
「そうかも、でもさっきメッセで伝えたことは、本当のことだよ」
「はいはい、なるべく明るいことを書く。これね」
「そうだ、明るいことを書いていれば自然と明るい気持ちになれるし、ね」
「なるほどねー」
「なんだい?」
含みのありそうな言葉に少し噛みついてみた。
「不幸な記事を書いているあなたは、やっぱり不幸なのかなって」
「……そうだね、最近そう思うようになってきた。君らに指摘されてからさ」
「もしかして、言わない方が良かった?」
「そんなことは、ないさ。知れて良かった」
「なら、よかった」
へたるほど思い知らされているけどな。そう思いながらメッセのやりとりはだらだらと続いた。
それが最後のやりとりとなるとは思いもせずに。
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