祝祭にありて歌姫に寄する歌 6

 不幸な記事を書き続ける。

 不幸な記事を書き続けることがつらい。

「最近書くスピード遅くなっているんじゃ無いか?」

 そう言われてしまった。

 それはミクに指摘されてしまったからだ。

『人の不幸で生きてるってどんな感じ?』 と。

 考える。

 彼らの不幸について。

 そして、不幸な記事を書く度に、実際に不幸になった人たちのことを考えるようになってしまった。

 以前は考えられなかったことだ。

 今では、不幸な人に感情移入してしまって、手が震えるときがある。

 でも仕事だ。

 自分を押し殺す。

 押し殺さなければこんなことできない。

 不幸な記事に涙がにじむことすらある。

 ……。自分は仕事に集中しよう。

「……」


 いや、本当につらい。ため息をつく。それにサキちゃんからの入店情報は必死さを増していた。それでもう一度ため息。身近にいる、不幸な女の子。

「しょうがない、たまには顔を出すか」

 誰とはなしにそう言って、仕事を途中で切り上げた。


 まだ時間は早かった。どこかで食事をして、時間を潰そう。ドートルに入ってコーヒーと軽食を頼む。また時間は午後の四時頃。

 コーヒーをすすり、メッセを開く。ミクからの新着があった。


「外に出るってどういう気持ち」

「出てみりゃわかるよ」

 返事する。

「ひどい」

「?」

「鬼!」

 よくわからないやりとりが続いた。

 ……。少し考えてみる。

 もしかして物理的に外に出られない子なのかも。足に障害があるとか。それなら失礼したなと思う。

「ごめんごめん、君のことを思いやれなかった。君にも事情はあるだろうし、さっきの言葉は謝るよ」

 そう送り、反応を待つ。

 しかし、返事はなかった。

「まあ、しょうがないか」

 いずれ機嫌を直すこともあるだろうと思い、今度は杏奈にメッセを送った。

「サキちゃんに久しぶりに会いに行くよ」

「そ」

「さて、どうなるかね」

「怒られるんじゃない?」

「そうだろうね、怒られに行くのはいやかなぁ」

「でも、気になるんでしょ」

「まあね」

「それで今日は?」

「演奏するわ。いつものところで」

「じゃあ、会えたら行くね」

「そ」

 時間は潰れた。キャバクラに行くか。

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