第13話 消失する記録
神社での発見から幹線道路へ向かう三木の心は、不安と決意が交錯していた。鈴の音は封印の鍵であり、消えた人々は封印の崩壊によって道の中に囚われている可能性が高い。彼はその真相に迫り、彼らを救い出さなければならないという強い思いに駆られていた。
夜の闇に包まれた幹線道路は相変わらず不気味だった。三木は道の狭まり具合を注意深く観察しながら歩みを進めた。いつもより鈴の音が強く、そして近く感じられる。道の周囲には薄い霧が漂い、どこか異世界への入り口のような雰囲気を漂わせていた。
歩きながら、三木はふと気づいた。以前は道路沿いに並んでいた標識や建物が、少しずつ消え始めている。まるで道そのものが現実から切り離され、何か別の空間に飲み込まれていくかのようだった。
「これは一体…」
彼の胸に冷たい汗が流れる。さらに歩みを進めると、ある地点で道の中央に何かが落ちているのを発見した。それは、くしゃくしゃになった古い新聞だった。拾い上げてみると、そこにはかつて幹線道路で行方不明になった人々についての記事が書かれていた。
しかし、記事の内容は何かがおかしかった。重要な部分が滲んで読めなくなっており、行方不明者の名前や出来事の詳細が欠けている。まるで記録そのものが消失しつつあるかのように感じられた。
「記録が…消えている…?」
三木はその不可解な現象に戸惑いを覚えた。この道に関する記録や証拠が、時間とともに現実から消え去っていく。もし記録が完全に失われたとき、この道の真実も永遠に闇の中に葬られるのではないかという恐怖が湧き上がった。
鈴の音が再び耳元で響いた。「チリン…チリン…」音はさらに強くなり、彼を導くように道の奥へと誘っている。三木は新聞をポケットに押し込み、鈴の音の先へ進むことを決意した。
進むうちに、霧がさらに濃くなり、視界がほとんど効かなくなった。その中でふと目に入ったのは、錆びついた古い標識だった。「幅員 2.0m」と書かれているが、その数字もかすれて消えかかっている。道がますます狭まっていることを感じ、三木の足は自然と止まった。
「こんな場所が、かつて普通の幹線道路だったなんて信じられない…」
道の中で起こる異変に翻弄されながらも、彼はふと地面に目をやった。そこには小さな箱が埋まっていた。箱を掘り出し、開けてみると、中にはまた別の古い手帳が入っていた。
その手帳は、彼が以前に見つけた吉田の手帳と似ており、同じく幹線道路を調査していた人物のものだった。手帳を開くと、次のような文章が目に飛び込んできた。
「記録が消えていく。鈴の音が聞こえるたびに、現実が削られていくようだ。この道には何かが潜んでいる。私もこの記録を書き続けることができるのか、わからない…」
その文字は乱れ、途中で途切れていた。手帳の最後のページは真っ白だった。書こうとした言葉すらも、この道に飲み込まれたのかもしれない。
三木は震える手で手帳を閉じ、深く息を吸った。この道の真実を解き明かさない限り、自分もまた記録とともに消えてしまうのではないかという恐怖が、彼を支配していた。
「逃げるわけにはいかない…」
そう自分に言い聞かせ、彼は再び道の奥へと歩みを進めた。鈴の音は彼を追い、霧の中で響き渡っている。次第に音は彼の鼓動と共鳴し、どこからともなく誰かの声が聞こえるような気がした。
「来い…真実を見届けろ…」
その声が彼をさらに奥へと引きずり込む。三木は覚悟を決め、影に覆われた道のさらに深い部分へと進んでいった。真実は、もうすぐそこにある——だが、それが彼に何をもたらすのか、まだ誰も知らない。
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