第12話 封印の記録
三木は町外れの神社へと足を運び、幹線道路の謎を解き明かす手がかりを得るため、古い記録を求めていた。神社はひっそりと佇んでおり、夜の闇に包まれた境内には、まるで見えない力が漂っているかのような不気味さがあった。
社務所に入ると、年老いた神主が三木を出迎えた。彼は三木の求めに応じ、町の歴史が記録された巻物や古い帳簿を丁寧に取り出し、三木の前に並べた。神主の静かな態度にはどこか重みがあり、三木はこの神社が町にとって重要な意味を持っていることを感じた。
「幹線道路にあった寺院と、その鈴の音について知りたいんです。失踪者のことも関係があるかもしれません」
三木が切り出すと、神主はしばらく沈黙し、思案するように目を閉じた。そして、低く重い声で語り始めた。
「あの場所には、かつて『安息寺』と呼ばれる寺院がありました。この寺院は、悪霊や怨念を封じ込める役割を担っていたと伝えられています。古い言い伝えによれば、その寺院は『鈴の音』によって結界を保っていたそうです」
三木は鈴の音が結界を維持していたという話に興味を抱いた。もしそれが真実なら、道で響く鈴の音は何かを封じ込めようとする力の名残か、あるいは封印が弱まりつつある兆候なのかもしれない。
神主はさらに、古びた巻物を広げ、安息寺の封印について記された部分を三木に見せてくれた。
「ここには、安息寺が幾多の悪霊を封じ込め、鈴の音でそれらを眠らせ続けたとあります。しかし、寺院が廃れ、道が作られるとともに結界が乱れ始め、鈴の音が断続的に響くようになったとも書かれています」
三木は息をのんで、記述に目を走らせた。「では、封印が弱まっているということですか?」
神主は頷いた。「そうかもしれません。そして、封印が完全に解かれると、封じられた怨念が再びこの世に影響を及ぼし、行方不明者たちはその影響下にあると考えられます」
それを聞いた三木は背筋が凍る思いだった。鈴の音が響くたび、道が狭まり、人々が消えていくのは、まさに封印が崩壊しつつある証拠かもしれない。行方不明になった人々は、ただ道に迷ったわけではなく、封印に囚われ、異次元のような空間に閉じ込められているのではないかと、三木は考えた。
「もし封印が完全に解かれたら…どうなるのでしょうか?」
神主はしばらく考え込み、答えた。「封印が解かれれば、かつて安息寺が封じていた悪霊や怨念が現世に溢れ出すでしょう。そして、それに触れた者は、肉体も魂も飲み込まれ、二度と戻れなくなる…」
三木の中で恐怖が広がった。すでに道に囚われた行方不明者たちも、その怨念の影響下にあるのかもしれない。そして、彼自身もまた、すでにその境界に足を踏み入れていることを感じた。
「鈴の音が響き渡る夜は、封印がさらに弱まる兆候です」と神主が告げた。「もしあの道で鈴の音が止むとき、封印が完全に解かれ、道に飲み込まれた者たちは永久に失われるかもしれません」
三木はその言葉に焦燥感を覚え、神主に頭を下げた後、神社を後にした。幹線道路に隠された真実と行方不明者を救うために、彼は急がなければならないと感じた。
その夜、幹線道路に向かう三木の耳には、すでに鈴の音が遠くから聞こえ始めていた。まるで彼を呼び寄せるかのように、鈴の音は彼の中に恐怖と決意を沸き立たせていた。封印の謎を解き、行方不明者を救うために——三木は再び、闇の中へと足を踏み出した。
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