第11話 夜に響く鈴の音
幹線道路に響き渡る鈴の音と、消えた人々の影に取り囲まれた三木の心は、次第に恐怖と混乱で支配されていった。その夜、影が消えた後も、鈴の音は彼の耳に残り続け、まるでその音が彼を追いかけてくるかのようだった。
翌朝、三木は自宅に戻っても不安が消えることはなかった。昨夜の出来事が頭から離れず、道に飲み込まれたかのような錯覚に苛まれていた。彼は自分が見たもの、感じたものを正確に理解できているのか不安になり、再び情報を求めてカフェを訪れることにした。
カフェに入ると、マスターが彼に気づき、いつものように静かに微笑んだ。しかし、三木のやつれた様子に気づくと、心配そうな顔をした。
「どうしたんだい?何かに憑りつかれたような顔をしているが」
三木は思い切って、これまでに体験した不可解な出来事、鈴の音や行方不明者の影について語り始めた。マスターはしばらく黙って聞いていたが、話が終わると、静かに言葉を紡いだ。
「昔から、あの道には何かがいると言われてきたよ。幹線道路が整備される前、あの場所には古い寺院があってね。その寺院の跡地がちょうど今の道のあたりにあるんだ」
「寺院…ですか?」
「そうだ。その寺院は、鈴を用いた儀式で悪霊を封じ込めていたと言われている。けれど、その寺院は突然廃墟になり、やがて消えてしまった。幹線道路が整備される際に、その跡地を通ることになったという話を、祖父が語っていたよ」
三木は背筋が凍る思いだった。鈴の音が悪霊を封じ込めるための儀式だったとしたら、今聞こえている鈴の音は、封印が解かれつつあることを意味しているのかもしれない。
「それから、奇妙なことにあの道を通った者たちが姿を消すことが増えた。多くの者は夜中に鈴の音を聞き、その音に引き寄せられ、二度と戻ってこなかった。そう、君のようにな」
マスターの言葉に、三木はさらに不安を抱いた。もし鈴の音が封印を守るためのものなら、自分もその音に引き寄せられ、行方不明になった者たちと同じ運命を辿るかもしれないという恐怖がよぎった。
しかし、それでも彼の中にはどうしてもこの謎を解き明かしたいという衝動があった。行方不明者の謎を解き、幹線道路に潜む真実を暴くためには、封印の詳細を知る必要があると考えた。
「その寺院について、もっと知ることができる場所はありませんか?」
マスターはしばらく考え込んだ後、頷いた。「古い記録なら、町外れの神社にあるかもしれない。そこにはこの町の歴史に関する資料が保管されている。寺院についての記述もあるかもしれないよ」
三木はマスターに礼を言い、その神社へ向かうことに決めた。幹線道路に眠る真実と鈴の音の謎を解き明かすための鍵が、そこにあるかもしれないという希望を胸に抱きながら。
その夜、再び鈴の音が響き渡る中、三木は神社へと足を運んだ。幹線道路と鈴の音に囚われた運命から逃れるため、そして行方不明者たちの謎に迫るために——。
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