第9話 町に広がる噂
幹線道路での不可解な体験を繰り返し、三木の心はますます謎に引き寄せられていった。しかし、恐怖と不安もまた、彼の胸を蝕んでいた。特に吉田の手帳に書かれていた最期の言葉が頭から離れず、同じ運命をたどるのではないかという危惧が、日に日に大きくなっていく。
ある朝、三木は情報を集めるため、再び町のカフェを訪れた。地元の人々の間で広がっている噂を聞き出そうと思ったのだ。彼がドアを開けると、店内には数人の客が座っており、低い声で何かを話しているのが聞こえた。話の内容に耳を傾けると、彼の調査対象である幹線道路についての噂だった。
「最近、あの道が狭くなってるって話、聞いたか?なんだか妙に息苦しいらしい」
「そうそう、鈴の音が聞こえたなんて人もいるってよ。夜になるとますます不気味だっていうじゃないか」
三木は黙ってその話に聞き入っていた。幹線道路の噂がじわじわと広がっていることに気づき、胸の中で一層の緊張が高まった。もしかすると、自分の知らない情報や目撃証言が得られるかもしれない。彼は一歩進み、話していた男性たちに声をかけた。
「あの、すみません…その幹線道路についてもっと詳しく教えてもらえませんか?」
二人の男性は驚きながらも、幹線道路の噂について知っていることを話してくれた。彼らは夜道で鈴の音を聞いた人や、道路が異様に狭く感じられたと話す人が増えていることを教えてくれた。さらに、不気味な影が目撃されているという話も耳にしたことがあるらしい。
「影が現れるって話は本当か?」
三木は興味津々に聞いた。男性の一人は、少し顔を青ざめさせながら言った。
「俺の友達がね、夜中にあの道を通ったんだ。そしたら、前方に誰かが立ってるように見えたらしい。でも近づいてみると、それは人じゃなくて…ただの影だったって。それが動くたびに鈴の音が響いて、どんどん道が狭くなってきたって言うんだ。恐ろしくなって逃げ出したらしいよ」
三木の心臓が早鐘を打った。自分が見た影と同じ現象を他の人も目撃していたのだ。話はますます真実味を帯び、幹線道路に隠された謎への関心が一層深まった。
「じゃあ、その友達は無事だったのか?」
三木がそう尋ねると、男性は一瞬言葉を濁し、そして低い声で答えた。
「ああ、しばらくは大丈夫だったみたいだが…それから様子がおかしくなってしまったらしい。夜中になると、急に道のことを話し始めたり、鈴の音が聞こえるって言い出したりしてな。それから、ある日ふっと姿を消してしまったんだ…」
「行方不明…?」
三木の口から思わず声が漏れた。行方不明になった探検家、佐々木、吉田、そしてこの男性の友人。道に囚われた者は皆、最終的に同じ運命を辿っているかのように消えてしまっていた。これらの失踪事件がすべてつながっているのだとしたら、幹線道路にはいったいどんな力が働いているのか。
三木は深い沈黙の中で考え込んだ。そして、彼は強く決意した。この幹線道路の真実を突き止めることで、消えた人々の運命を明らかにしなければならない。
カフェを出た三木は、再び幹線道路へ向かう準備を始めた。夜が来るたびに道は狭まり、鈴の音が彼を呼び寄せている。吉田や佐々木、そして行方不明になった人々が最後に見た景色に、自分も近づきつつあるのかもしれないという不安を抱えながらも、彼は足を止めなかった。
その夜、鈴の音が再び彼を誘うように響き渡った。
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