第3話 目撃された影

三木は鈴の音を追い求めるように、夜ごと幹線道路に足を運ぶようになっていた。何かに取り憑かれたかのように、彼はこの道の謎を解き明かしたいという強い衝動に突き動かされていた。夜の静寂に包まれた道を一人で歩くと、道が自分をじっと見つめているような気さえする。


ある夜、三木は道の先で人影を見た。それはまるで霧の中から浮かび上がるように、ぼんやりとした影だった。暗がりの中で、その影はゆっくりと歩いているように見えるが、何かが不自然だった。彼は息を潜め、影に近づこうとした。


「待て…!」


思わず声をかけたが、影は振り返ることなく、すっと霧の中に消えてしまった。三木は慌ててその場所に駆け寄ったが、そこには何もなかった。影の痕跡もなく、ただ静寂が広がっているだけだった。


「今のは…?」


三木は頭を抱え、困惑した。自分が見たものは幻だったのだろうか?だが、あの影には確かに存在感があった。まるで誰かが自分を誘うように、道の奥へと引き込もうとしているかのような…。


その時、再び「チリン」と鈴の音が耳元で鳴った。三木は反射的に振り返るが、やはり誰もいない。鈴の音はただ、遠くの闇の中で響き、そして消えていく。


不気味さに耐えかねた三木は、その場から一歩後退ろうとしたが、足元が妙に狭く感じられた。ふと見下ろすと、彼が立っている場所がわずかに窮屈になっているように思える。気のせいではなかった。道は、確実に少しずつ彼を閉じ込めるように狭まっている。


「まさか…本当に道が狭まっているのか?」


心臓が早鐘を打ち、冷や汗が背中を流れる。三木は慌ててその場を離れようとしたが、背後で再び鈴の音が鳴った。音は途切れることなく続き、まるで彼を呼び寄せるかのように響き渡る。


「チリン…チリン…」


逃げ出すように歩き始めた三木だったが、背後から影が彼を見つめている気配を感じた。振り返る勇気は出ず、ただ前へと進むしかなかった。


家に戻った後も、三木の耳には鈴の音が残響のように響いていた。闇の中で見た影と、狭まる道——これらの出来事が意味するものは一体何なのか。次第に恐怖が現実味を帯び、彼の中で何かが少しずつ狂い始めているのを感じていた。


それでも、三木は確信していた。この道には、何かが隠されている。そして、それを暴くまでは、この鈴の音から逃れられないだろうということを。

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