第2話 鈴の音の初音
三木はその夜の鈴の音が頭から離れなかった。翌朝、彼は町の図書館に向かい、幹線道路についての記録や歴史を調べ始めた。だが、資料には目立った記載はなく、道に関する古い記録もほとんどが散逸しているようだった。
「これは意図的に消されているのか…?」
ふと疑念がよぎる。記録の空白に対する違和感が、彼の探求心を一層刺激した。だが、そんな彼の背後から、図書館の司書が声をかけてきた。
「あの、もしこの道について調べているなら…少しお話ししたいことがあります。」
司書の名は佐野だった。年配の彼女は、三木を少し陰気な目で見つめていた。
「昔、この幹線道路は別の名前で呼ばれていました。『狭道』と…ね。その名前がどういう意味か、わかるかしら?」
「狭道…?」
「この道は昔から何度も改修されているけど、毎回どこかで異変が起きているの。ある時は道が突然崩れたり、ある時は人が消えたり…。けれど、必ず鈴の音が聞こえると言われているわ。」
三木は興味深く佐野の話に耳を傾けた。鈴の音と失踪——彼が昨夜体験した不気味な音は、ただの幻聴ではなかったのかもしれない。
「それにね、行方不明者も少なくないわ。皆、何かの謎を追いかけようとして、そのまま戻らなくなるの」
佐野は語りながら、彼に一枚の古い新聞を手渡した。それは何十年も前のもので、「鈴の音と共に消えた人々」と大きく見出しが書かれている。
記事には、かつて行方不明になった人々の名前が載っていた。彼らもまた、「道が狭くなっている」と語り、鈴の音を聞いたと最後に証言していた。しかし、誰一人として帰ってくることはなかった。
「あなたも、その道の謎を追いかけようとしているのね…気をつけることよ。道は私たちを見ているかもしれない」
佐野の言葉に、三木は不意に背筋が凍る思いがした。見えざる何かが、彼を引き寄せ、そして飲み込もうとしているかのようだった。
その夜、再び幹線道路に向かった三木。昼間の明るさと異なり、夜の道には不穏な気配が漂っていた。歩を進めるたびに、まるで道が自らの意思で狭まり、彼を閉じ込めようとしているように感じられた。
そして、再び「チリン」と鈴の音が響く。
三木の心臓が一瞬跳ね上がり、耳を澄ますが、音はすぐに消えた。不安と恐怖が混ざり合う中で、彼は心に決めた。この道に隠された真実を突き止めるため、進み続けることを——どれほど危険であろうと。
夜の闇に包まれた幹線道路で、彼の孤独な探求が今、深まっていこうとしていた。
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