第4話 最初の行方不明者

三木は夜ごと幹線道路に通うようになってから、日中も落ち着かない日々が続いていた。鈴の音、霧の中の影、そして狭まる道…。それらの不可解な現象が頭から離れず、彼の心をじわじわと蝕んでいく。ある夜、彼は行方不明者のことをさらに詳しく調べることに決めた。


地元の図書館で古い新聞記事を調べていると、数年前に失踪したある男性の記録が目に留まった。その男性は地元の探検家で、「幹線道路の謎を解明する」と言い残して失踪したと記されている。彼の名前は佐々木隆史、道の狭まりと鈴の音について地元で最初に言及した人物だった。


記事には、佐々木が鈴の音の謎に惹かれ、夜な夜な道路を歩いていたことが書かれていた。最初は町の人々も興味深く聞いていたが、次第にその話が不気味さを帯び、誰も関心を持たなくなったという。最後に彼が目撃されたのは、霧が立ち込める夜だった。それ以来、彼の行方を知る者は一人もいない。


「佐々木隆史…」


三木は、その名前を呟きながら考え込んだ。自分が今体験していることと、佐々木がかつて感じたものが同じだとすれば、彼もまた同じ道をたどることになるのだろうか?


それでも、三木は一歩引く気にはなれなかった。むしろ、その失踪者の足跡をたどり、彼が見つけられなかった真実にたどり着きたいという思いが強くなっていく。


その夜、三木は再び幹線道路に向かった。道はいつもと変わらず暗く、静寂に包まれているが、どこか異様な気配を感じる。佐々木が最後に見た景色を、自分も見つけられるかもしれないという期待と不安が入り混じっていた。


歩を進めると、ふと道端に何かが落ちているのが見えた。近づいてみると、それは古びた手帳だった。表紙には「佐々木隆史」と名前が書かれている。三木の心臓が激しく鼓動し始める。手帳を拾い、震える手で開くと、そこには鈴の音についての詳細な記録が記されていた。


「鈴の音が聞こえるたび、道が狭まっている気がする。この道には何かが潜んでいる。夜毎に姿を変え、私を飲み込もうとしているようだ。真実に近づくほど、音は強くなる」


三木はページをめくる手が止まらなかった。手帳の最後のページには、かすれた字でこう書かれていた。


「私は…この道に引き寄せられている。戻ることができない。だが、もし誰かがこの手帳を見つけたなら——」


そこで文章は途切れていた。まるで佐々木が、何かに襲われたかのように。


三木は冷や汗を拭い、周囲を見渡した。そこには何もない。だが、背後からかすかに鈴の音が聞こえる。


「チリン…チリン…」


心の奥底に恐怖が染み込み、彼は無意識に後退りした。しかし、その瞬間、足元が妙に狭く感じられた。まるで道が少しずつ自分を閉じ込めようとしているかのようだった。


佐々木隆史が見た真実に、自分も近づきつつあるのだろうか。三木の心には、道に潜む何かが自分を誘っているような不気味な感覚が広がっていた。

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