幼馴染の恋愛相談に乗っていたら、好きな相手が私だった件について

ぽむるん

プロローグ

学校の屋上は何時の時代においても告白のスポット。近年では安全面を考慮し、屋上を解放しない高校が増えてくる中で、うちの高校は交流の場所として屋上を解放していた。


(話があるって何だろ……?)


金子椎奈は屋上への階段を歩きながら、手には朝の登校時に下駄箱に入っていた便箋が握られている。


『椎奈へ。放課後に話があるので屋上に来てください。待ってます』


最近はラインで異性に思いを伝えるとは聞いたことがあるけど、差出人は手紙で私を呼びだすことにしたみたい。


(今日、ずっとそわそわしてたような……)


放課後が早く来てほしい。時間よ。早く進めといっているように落ち着いている様子はなく、話すなら今でもいいよといったら、放課後の方がいいといわれた。


(好きな人が出来た……とかかな?)


屋上への最後の階段を上り終えてから、私を呼びだした理由を考える。


(今までそういう話は聞いてきたけど、相手はいないよっていってた)


今までの人生で複数回、好きな相手がいるんじゃないかと友人通しの会話で話題になったけど、本人は好きな相手はいないよと笑っていた。


(それしか思いつかないんだけど……なんか緊張する)


屋上の扉へと手をかけると私の緊張が伝わるように心臓の鼓動が激しく脈打つ。緊張を和らげるように、深呼吸を繰り返してから、気持ちを落ち着かせてから扉に手を伸ばす。


屋上の扉を開くと太陽の光と重なることで視界を奪う。


「椎奈は来てくれると思ってた」


視力が徐々に回復すると、屋上の中央では亜麻色の髪をしている女の子が両手を組みながら、私がやってきたことに安心するように笑みを浮かべながら振り向いた。


「来なかったらどうなってた?」

「明日、何で来なかったのって怪文書を入れる」


私を呼びだした女の子の名前は早川実里。私とは幼稚園からの付き合いで、お互いのいい所も悪い所も理解している幼馴染だ。


「怖いって……」

「だって……これでも勇気を振り絞ったんだよ。その誘いを無視するんだもん。椎奈は責任を取るべきだから」


実里ちゃんは特徴的な八重歯を見せながら、来てくれると信じてたけどねといった。


「話って何?」

「……ちょっと待って。気持ちの準備するから」


実里ちゃんは話し始める前に心臓に手を当てて、深呼吸を繰り返す。


「うん……もう大丈夫。来てくれてありがとね」


実里ちゃんは閉じていた瞳をゆっくりと開いていき、目の前にいる私を見る。


「好きな人が出来た」

「……………そうなんだ」


予想はしていたけど、実際に言われるとどんな風に反応していいのかわからずに、私たちの間には風の音のみが存在するするように静寂の時が流れる。


「驚かないんだね」

「………驚いてるよ。これでも」


反応としては無反応だったけど、実里ちゃんを好きと思う子はいるみたいだし、実里ちゃんが好みに思う子がいても、大きく取り乱すことはなかった。


「椎奈はアタシの隣にいてくれたから……。だから最初に話そうと思った」

「その人は私が知ってる人?」

「知ってる人だよ」


私たちの知り合いってことはちょっと複雑かも……。近くにいる相手が幼馴染の思い人になるわけで応援する立場になるわけだから。


「アタシ……こういう気持ち、初めてなんだ。好きになったのは随分前なのに、自覚したのは最近っていうか」

「私たちが子供の頃からの付き合いがあるって子ってこと?」

「うん」


私たちが子供の頃からの付き合いがあると実里ちゃんが好きと思う子は何人か思い浮かぶけど、好きって聞いたことない。


「気持ちを伝えたいのに……上手くできなくて、アタシ、不器用だよね……」

「実里ちゃん、そういう所あるよね」

「今まで彼氏が出来たことがない人に言われたくないなぁ」


仕方がないじゃん……。好きな人がいないんだもん。


「だからさ……アタシの恋が上手くいくように、椎奈に手伝ってほしいんだ」

「私でいいの……? 他にもいろんな人がいると思うけど」

「椎奈はアタシのいい所も悪い所も全部知ってる。そういう相手の方がいいでしょ?」


実里ちゃんの頬は夕焼けに照らされるように赤みを帯びていた。


「それに……椎奈なら理解してくれるかなって」

「理解?」

「椎奈……に近い考えを持ってるから。ほら、同じタイプの人なら理解しあえるだろうし安心できるでしょ?」


確かに……安心できるけど、私と同じタイプの人ってどんな人だろ……? 想像できないや。


(私、今まで好きな相手がいなかったし……いるとも聞いたことがない)


正直、恋愛経験0の私にどこまでできるのかわからないし、私が思ったことが相手にとっては不快に感じることもあるかもしれないし、そのことで実里ちゃんを傷つけるかもしれない。


(……いつかはこうなるかもしれないって思ってた)


子供の頃から一緒に過ごしてきた幼馴染。同じ時間を過ごしながら、大人になっていくにつれて、お互いに好きな人が見つかって離れ離れになる。


(……何処まで出来るかわからないけど……私を頼ってくれているなら協力したい)


2人で歩いてきた道、大人になっていくにつれて、違う道を歩くとしても後悔しないようにしたい。


「いいよ」

「え……!? ほんとに……!? ほんとに手伝ってくれるのっ!?」

「手伝うよ。上手くいくようにサポートしてあげる」


実里ちゃんは私の返答を聞き、嬉しそうに私の手を握る。


「ありがと!! それじゃあ、明日からよろしく!」

「え……。明日からなの……?」

「ゆっくりしてると他の相手にその人が取られちゃう。明日から、アタシの相談に乗ってもらうから!」


実里ちゃんは用事があるからと明日からよろしくねと手を振って屋上を出ていき、私は明日からかぁと上手くできるかなと思いながら帰宅した。

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幼馴染の恋愛相談に乗っていたら、好きな相手が私だった件について ぽむるん @pomuponpuri

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