第2話 シータ·ロウ·シーバイ!?
僕の名前はシータ。
シータ·ロウ·シーバイ、五歳。
シーバイ公爵家の次男だ。
でも僕のお母さんは愛妾で、僕は妾腹の子としてお父さんや継母で正妻のマリアナさんからは蔑まれている。
お母さんは僕が二歳の時に流行病で亡くなった。
兄さん(八歳)は僕に無関心だ。
今日は授けの儀の日だ。ここで僕がせめて魔道士という職を得なければ、成人とともにこの家から放逐される事が決定する。シーバイ家は魔導の家系で、お父さんは賢者、継母は魔導師、兄さんは大魔導師だ。
魔導系の職は、上から大賢者、大魔導師、賢者、魔導師、魔道士、魔術師、魔術士となっている。
兄さんは上から二番目の大魔導師の職を授かったからシーバイ公爵家の跡取りとして教育を受けている。
でも、僕から見ても詰め込みすぎだと思う。兄さんは常に疲れたような顔をしているからね。八歳で常時疲れている状態なら僕に無関心なのも当たり前だよ。
「それではシーバイ公爵、ご子息の授けの儀を始めます」
全能の神様の神殿から来た司祭がお父さんにそう言う。
「高い金を払ってるんだ!! さっさと始めろ!」
こういう所が嫌われる所以だよね。シーバイ公爵は
「シータよ、こちらへ」
いくら神殿は俗世の地位と関わりが無いとは言っても実際にお金を払ってるんだからもう少し言いようはないのかなとも思う。
司祭は死災とも世間では呼ばれてるんだってさ。
おっと! ギロリと睨まれたから早く行こう!
僕が目の前に立つと司祭は僕の額に手を伸ばして
「全能なる全能神様にお頼み申す! この者、シータに授けるべき職をどうか我らの目に示し給え!
うわぁ〜…… 本当に
司祭の祝詞が終わると僕の授けられた職がお父さん、継母、兄さん、司祭の目にも見えるように表示された。
❨シータ·ロウ·シーバイに授けられし職は【アクター】である❩
その表示にお父さんをはじめ、他のみんなの顔もなんだ、それは? という顔になっている。
かくいう僕もその中の一人だ。【アクター】って何?
「司祭よ、何だそのアクターという職は? 魔導系の職なのか?」
問われた司祭も困惑気味に答える
「いや、シーバイ公爵。私も初耳の職だが、魔導系では無いのはわかる」
初耳なのに何で分かるんだよ! と心の中で突っ込みながらも僕自身も違うだろうなぁとは思っていた。
「フンッ! やっぱり出来損ないか!! シータよ、お前は成人までは面倒を見てやるが、それ以降は放逐だ!」
「やっぱり母親が下賎の身だとその子供もそうなのるのね」
継母の言葉にカチンと来るけど今の僕は何の力も持たない子供だ。今の自分の非力さに仕方なく俯いてしまう。
「良し、司祭よご苦労だった! シータ! 今日は離れの懺悔小屋にて過ごせ! 明日の朝までそこで反省するのだっ!!」
お父さんにそう言われ「分かりました」と答えて屋敷を出て懺悔小屋へと向かう僕。
この懺悔小屋は亡くなった母さんが良くお祈りに入っていた小屋で、僕は初めて中に入るんだけど思ってたよりも清潔で綺麗だった。
で、中に入った途端に僕は白い空間に立っていたんだ。
ここは何処?
『シータ·ロウ·シーバイ、いいえ
気づけば僕の目の前にとても綺麗なお母さんに似た女の人がいて、そして僕は全て思い出したんだ!
「おお! 女神様! またお会い出来るとは!?」
『約束したでしょう。貴方が職を授かった時にまた会いましょうと。それで、貴方の職について説明しようかと思ったのですが……』
「フッフッフ、説明は要りませんよ女神様! 僕の職は
力いっぱいそう断言した僕に女神様はにこやかに否定した。
『いいえ、違いますよ、シータ。貴方にはこの職の力で世界を救って貰わないとダメなのです』
「えっと役者の力でどうやって世界を救えと……」
『貴方は前世でそうだったようにその役になりきる事が可能です。なので貴方が勇者を演じれば勇者の力がその身に宿り、聖女を演じれば聖女の力をその身に宿す事が可能なのです。もちろん、全く未知の役を貴方が作り出して演じればその力も宿る事となります。但し、演じるのを止めれば宿った力は無くなりますけどね』
「なるほど! 分かりました! 僕は演じる事でその職の力を演じている間は自由に使えるという訳なんですね!!」
『飲み込みが早くて助かります。そういう事です。これから十年後に封印されし邪竜が復活します。その時に貴方の力が必要なのです。ですので貴方は邪竜を倒す力を持つ者をイメージして、その役を演じきって邪竜を封印するのではなく倒して下さい。よろしくお願いしますね……』
そこで僕は自分が懺悔小屋に立っている事に気がついた。
「夢? いいや、違う! 夢じゃないや! 良し! 僕は十年後には邪竜を倒す役を女神様から貰ったんだ! 見事に演じきって見せるぞ!」
そう心に誓い、僕その日は懺悔小屋で眠った。
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