十月二日 九時 水曜日

 私は今悩んでいる。


 佑也と一緒に勉強にしようかしないか。


 いつもは学校で約束をするからハードルが低い。


 今回は電話だ。


 電話に彼の親がでたらどうしようとか。


 どうやって誘いに繋げようとか。


 何より電話で彼の声しか聞こえないことで、どんな表情をしてるのか分からない。


 不安になる要素がたくさんある。


 答えが出ず、頭を抱えて、電話の前を行ったり来たりしていた。


「さっきから何やってんの。」


 その様子を見ていたお母さんに言われた。


「…佑也くんを勉強に誘おうか悩んでて。」


「あ〜例の男の子ね。」


「そうその子。」


 前に少しだけ佑也くんの話をしたら、「青春ねー。」と言われた。


 そんな感じで言ったつもりはなかったはずなのに。


 私より長く生きてるお母さんの勘だろうか。


 別に年がとっていると言いたいわけじゃないよ。


 お母さんは、周りの人から年齢詐欺とか言われるくらい若そうな見た目をしてるけど。


 決して歳のことをいっているわけじゃないからね。


 大事なことは二度ね。


「誘えるうちに誘っておきなさいよ。」


 驚いた顔を見せると。


「いい男ほどいつの間にか取られちゃうんだから。」


 お母さんのトンデモ発言に開いた口が閉じなくなってしまった。


「あれ。そんなにいい子なの?」


「とてもいい人。真面目で努力家で周りを見れてるし…」


 食い気味に言っていていた。


「ベタ惚れじゃん。」


「別にそう言うのじゃない。」


「本当〜?」


「本当。」


 少し苛立ちを感じてしまう。


「実里が怒ったー。お母さんはさっさと立ち去ろ〜。」


 小走りで台所の方に消えて行ってしまった。


 一度はぁ〜とため息をつくとお母さんが離れた場所から


「大事なことだから二度言うけど、誘えるうちに誘ったきなさいよ。」


 この言葉に返事はしなかった。


 それから悩むこと二時間決心をつけた。

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