十月二日 七時 水曜日

 昨日は思うように寝付けず、いつもと同じ時間に起きた俺は目を擦りながらいつも母親のいる居間にきた。


「おはよう。」

 と言うとおはようと返ってくる。


 眠たそうな俺を見てなのか変な夢でも見たと聞かれ、少しと答えた。母は今朝食を作っている真っ最中だった。


「目玉焼き?それとも玉子焼き?」


「玉子焼き」


 好きな食べ物は玉子焼きで間髪を入れず答えたことにいつも通りだなと思われたのか、朝食を作るのに集中し始めたそのタイミングで母の携帯の着信音が鳴った。


 母に着信の内容教えてと言われたのでメールの内容を読み上げた。


「学校から今日は諸事情のため休校いたしますって。」


佑也ゆうや何言ってんの?外は晴れだし警報なんてでないから。ちゃんと教えて。」


「本当のこと。」


 母は信用してないのかこちらにやってきたので、ほらーと言って携帯を見せると驚いて本当に休校だと驚いていた。


 キッチンに戻った母はあっという表情をして、玉子焼きだったものを差し出してきた。


 ごめんと手を合わせてきたので許すことにした。


 朝食はトーストと玉子焼き(仮)とサラダを食べた。


 母とは朝食を食べることはほぼない。


 母は朝食を作り終えるとすぐに仕事に行く支度を始める。


 それは、母子家庭とであることと単純に仕事が忙しいからだ。


 父は小さい時にどっかに消えたらしい。


 そんな父親のことはなんとも思っていない。


 強いて言うなら、自分のことを優先しやがってくらいだ。


 忙しい母のため自分の分は自分で作ると言っても、朝食は一日の活力だからちゃんと食べて欲しいということで母は譲らず、俺が起きてから作ってくれる。


「今日は、休校になっちゃったから冷蔵庫にあるものを適当に食べてね。」


 あとサラダが少しになった時、玄関から聞こえたので、はーいと返事を返す。


「行ってきます。」


「いってらっしゃい。」


 玄関の鍵をしまった音が聞こえてから一度大きく息をついた。

 

 母との関係は悪くないと思っているし、母子家庭で大変なのに支えてくれる母に感謝してる。


 母のことを心配にさせたくない。


 いつも猫を被って必死に真面目な自分を演じている。


 昨日人を殺したから、ちゃんといつも通りの自分を演じられていただろうか。


 表情に出ていただろうか。


 少し不安になる。


 昨日の夜は母が残業のため、出会わなくて良かった。


 出会っていたら猫を被り切れなかったと思う。


 それから今日の休校も昨日の件だろう。


 メールには学校の諸事情と書かれていたから十中八九間違いないだろう。


 自分が殺したことは隠し通さなければ、蓮にも母にも他の人にも迷惑をかける。

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