十月二日 十四時 水曜日
図書館の自習室で同級生の女の子と二人きりで勉強をしていた。
中学三年生にもなり、受験まであと五ヶ月ほどしかない。
勉強をするのも必然と言えるだろう。
しかし、この状況になったのは彼女からの誘いがあったからだ。
学校が休校になり朝食を食べた後は自分の部屋に戻り、ベッドに倒れ込んだ。
一度倒れ込むと起きたはずの体は簡単に沈んでき眠りについた。
沈んでいった体を覚醒させたのは、固定電話のなる音だった。
自分の部屋から離れているリビングに設置された固定電話は、自分以外いない家にはとても大きく聞こえた。
朝起きた時より眠気はとんでいてすぐに体を起こし、電話に出ることにした。
「もしもし。
「実里おはよう。」
「祐也くん。おはようっていうには遅いんじゃないかな。」
えっ。と驚いた。
「今、十一時だけど、寝てたんじゃない。」
食べてからすぐ寝たから三時間ほど寝ていたことになる。感覚的には一瞬だった。
「もう休校だからって休んでちゃ受験が心配になるよ。」
図星だから返す言葉もなかった。
しかし、こっちにも手札がある。
「そんな事言ってるけど、実里こそ勉強できてないでしょ。」
電話越しからぐぎぎという声が聞こえてくるような感覚がした。
「そ、そ、んなこと、ないし…。べ、べ、べ勉強してないことな、いし。」
図星だったようであからさまに分かるように返してくれる。
「そんな勉強できない君に私と勉強する権利をあげよう。」
相手のことを棚に上げて自分を上にしようとしいくる。
軽いノリだからこそ許せるものだ。それに合わせるのも楽しい。
「じゃあ、その権利を使わせてもらおうかな。」
にひひ。と聞こえてすぐ、
「じゃあ今日の一時半に図書館で。」
少しキーが上がり、早口になっていた。
「分かっ…。」
返事をする途中で電話が切れた。
えー。と思いつつ、彼女のこういうところがいいなと思う。
友達とのコミュニケーションを心がけていて、場を盛り上げるところはさすがだと思う。
自分はそこに恋愛感情は存在していないはず。
女友達であり、同じ高校を受験する仲間だと思っている。
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