反対の列車に乗って旅に出る(改訂・まとめ版)
小阪ノリタカ
第1話 反対方面に行く!
直属の上司に「おい、太川!お前のせいで〇〇になったじゃないか!どう責任を取ってくれるんだね!?」と毎回毎回、よくわからない理不尽な理由で怒られる。別にオレ自身が仕事で何か大きなミスをしたとかではなく、明らかに上司自身のミスを、毎回難癖をつけて押し付けてくる。たぶん上司はオレのことが嫌いなのだろう。だから、こうやって嫌がらせをして来るのだと思う。
この、度重なる上司からの意味不明な叱責で、完全に精神が疲れて遂に病んでしまい「あの人(上司)から逃げたい!」という思いが日に日に強くなり、自然と自分の足が会社のある都内方面とは反対のホームに向かっていた。
そして、反対方面のホームに停まっていた4両編成の「列車」に飛び乗って、上司から逃れるように乗車駅を離れる…
乗車した駅から数駅ほど過ぎたあたりで、列車の外をふと眺めると、そこには「田園地帯」が広がっており、花や野菜などの田畑が列車が走る路線の周り(一帯)を囲んでいた。
都内方面へ向かういつもの路線とは違う非日常感のある世界に、久しぶりに「ワクワク」という感情が芽生えた。
そして、停車した途中の駅でいったん列車を降りて途中下車。その駅は見た感じ、駅前には個人商店(食堂)のみで、スーパーやコンビニといった店舗は見当たらない。俗に言う「田舎の駅」って感じだろうか?
ここなら、あの上司から理不尽な叱責や難癖をつけられる心配はない。だからだろうか?上司からの「呪縛?」から解放されたような気分。
とりあえず、駅前の個人商店に入って、ゆっくり休憩することにするかな!
「いらっしゃい!遠方からのお客様とは珍しい!ゆっくりしていってね!」と店主のおじさんが気さくに話しかけてくれる。
お店に来るお客さん自体、地元住民くらいと少ないせいか、店主のおじさんは親切にこの地域の特産品や観光名所などを事細かく教えてくれた。
そして、個人商店の店主のおじさんから渡された手書きの地図には、滝や湖といった自然の観光スポットのほか、路線の周りを囲んでいる花や野菜が売られている直売所についても書いてあった。
店主のおじさんのメモ曰く「直売所の野菜は新鮮でおいしいので、おススメです!よかったら覗いてみてください!」と書かれており、滝や湖の名所についても「この地域では有名な滝・湖なので、夏の時期は涼しくて最高の場所です!」と書かれており、それくらいおススメの場所ということなのだろう。
駅前の個人商店のおじさんと別れて、再び列車に乗って次の駅へと向かう。
列車は駅を出ると、山の中へ進みトンネルが続く風景に変わる。トンネルを出た!と思っても、またすぐにトンネルに入る。だから、この区間はほとんど「真っ暗闇」となっている。
度々、トンネル内で対向列車とのすれ違い(交換)作業を行うため、列車は一旦停止する。停まるたびに乗務員さんが「対向列車との行き違いを行います。発車までしばらくお待ちください」とアナウンス。
どちらかの駅で行き違いをしてもいいのでは?と思ったが、まあなにか理由があるのだろう。
また、山の中で標高が高いせいか、気圧の影響を受けて耳が「キーン」と鳴り、商店で買った・もらったお菓子の袋もわずかながら膨らむ。
そして、列車は長いトンネルの区間を抜けて次の駅に停まる。この駅は係員のいない駅。いわゆる「無人駅」ってヤツ。
他に降りたお客さんは居らず自分だけが、この駅のホームにポツンと立っている。
駅の周囲は山で、商店もなければ人家も見当たらない。というか、人っ子一人見当たらない。
むしろ、熊とか鹿が突然、目の前に現れてもおかしくない、そんな雰囲気すらある。駅前の道に設置されている道路標識にも「動物飛び出し注意」と警告されていることから、いきなり現れる可能性はあるようだ。
そして、列車は終点の駅に停まる。二面三線の駅で、これまで通ってきた主な駅と比べると、大きな駅。
「当駅でこの列車は終点です。また、全員降車後、回送となりますので、引き続きのご乗車はできません。乗り越しなどのお問い合わせは駅係員へお申し出ください」
乗務員さんがアナウンスで乗客に、終点であることを告げる。
自分が乗っていた列車の行先表示はすでに「回送」へと変わっていた。
駅の改札を抜けて、駅前広場へ。この駅の近くには、これまでの他の駅にはあまりなかった、お土産屋・飲食店・コンビニがある。そして、この町の観光客向けなのか、駅前にはレンタカー店や観光案内所管理のレンタサイクルなども整備されていた。
そして、駅や役所の建物の側面には垂れ幕で「歓迎!ようこそ、わが町へ!」と大々的に観光客を歓迎していた。
反対の列車に乗って旅に出る(改訂・まとめ版) 小阪ノリタカ @noritaka1103
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