謝罪 後編
友人の言った通り、彼女に電話をしてみるも着信拒否をされていた。もちろんメールもだ。
翌日の朝、彼女の知り合いにあらゆる連絡をとってどこに行くのか聞いたものの、話を聞いたのか全員が教えてくれなかった。
休みの日は町中探して行った。探しながらも謝りたいと言う気持ちだけが胸いっぱいに広がってた。
そして、美香が好きだった場所。主にショッピングらへんの所に行った。
息を切らしながら周りを見ていると、見慣れたシルエットがいた。
「美香!!!!!」
俺は声をかけると、美香は振り返ると冷たい目線をして立ち去ろうとした。
「あっ! 待って! 待って、本当に待って! 話したいことがあるんだ」
俺の声に美香は足を止めると振り返った。
「……話したいことって何」
美香は冷たい視線と共に言葉を発した。それもそのはずだ。別れ際にあんなことを言ったのだ。そんな態度をされるのも仕方ないことだ。
「まず、久しぶりなのと、突然だけど謝罪をさせてくれ」
俺はそう言って頭を下げた。
「本当に、あの時はごめんなさい。お前の言うとおりだった」
「言う通りだった? どうゆうこと」
美香は強めの口調で俺に話しかけている。
「実は、あいつなんだけどさ、俺がお前と別れたことを伝えたら急に彼女ツラっていうか、そうゆう感じで相談を頻繁にかけてきて。疲れながらも、知り合いの同期と一緒に飲みに行ったんだ。それで、それで、あいつが結構いろんな男に俺と同じことをしているって聞いたんだ」
「へぇやっぱり、通りで胡散臭いと思った。じゃああなたはそのターゲットの一部ってことね」
美香は呆れながらため息をついた。
「うん……本当に、本当にごめんなさい。俺がバカだった。お前の話を聞かずにあんな言葉を言ってしまって。もっと、もっと話を聞いていれば」
俺は頭を下げたまま謝罪をし続けた。どんなに罵声を浴びせられていてもそれがしたものの罰なのだからと。
「…そうね、あなたがもっと私の話を聞いてくれたら、こんなことにはならなかったかもね。だけど、一つだけきかして」
「なんだ、なんでも」
俺は彼女の顔を見た。彼女は見たことがないほどの悲しい表情を浮かべていた。
「私、そんなに信じられる彼女じゃあなかった? 時々見せる嫉妬も、あの時言った通り醜かった?」
美香は悲しい表情をし、まっすぐな目で俺を見つめた。
言葉を聞いた俺は「違う」と言った。
「信じている。今も、だけどあの時の俺は大馬鹿野郎だっただけでお前は何も悪くない。今考えれば当然の反応と言葉だった。彼女持ちのやつに頻繁にメールするやつがおかしいとさえ感じなかった。それに、俺は初めて後輩に仕事や友人関連の相談を受けた時、ヒーロー気取りになっていたんだ。だから、あんな風に」
俺は言葉を出しつつも、彼女が感じた苦しみが胸に突き刺さるような感触が広がっていく。美香は唇を一度だけ噛み締めた。
「……あの時、私の話をもっと聞いて欲しかったよ」
美香はそういうと、「ありがとう」とお礼をの言葉を口にした。
「謝罪をしてくれただけでも、私は満足だよ」
美香は小さく笑みをこぼしながら俺にお礼を言った。お礼を言われる筋もない自身に向けて。
「……なぁ、美香。今」
ふいに質問を仕掛けたとき、後ろから一人の男性が美香に声をかけた。
「美香。なんでここにって、この男は」
男は俺を厳しい視線で見つめた。誰だろうと思っていると。
「元カレ。前のことで謝ってくれたの」
「あぁ、あのね。何、まさか美香を」
男は警戒しつつ、美香を自身の背中に移動させた。
その行動と共に美香はすぐに違うと否定をすると男を紹介した。
「和真、この人は私の彼氏の
彼氏という言葉に胸に鋭い刃が突き刺さった感覚と共に寒気を感じたが、それを感じるのは当たり前だとすぐに考えを出した。
「あっ、あぁ。今の彼氏か。それじゃあごめんな。デートの時に変な気分にさせちまって」
「いいよ。むしろ謝罪をしてくれたんだもん。じゃあ私たちは行くね」
「うっ、うん。幸せにな」
俺はそう言って背をむけ、歩き出した。思わず振り向くと、彼氏と彼女はキスを交わしていた。
美香は真っ赤な顔をさせながら菖太の肩を叩きつつも、すぐに笑顔になって手を握って歩き出した。その光景に胸が締め付けられるのが一層強くなった。
そして、気づいたらいつの間にか俺は走り続けていた。息苦しくなっても走りつづけ、自身の家の玄関に倒れ込んだ。
息を整えつつも、目からじわじわと涙が溢れ出し、自身の手に落ちた。
「くっ、うっ、あぁぁぁ」
嗚咽をしつつ、涙を流すたびに彼女の笑顔が浮かび上がる。
(なんで、なんで俺はあいつのことを信じれなかったんだよ。好きで、付き合ったのに。心の底から、好きだったのに。そしてなんで、あんなことしたのに。また付き合えると)
何度も後悔してももぉ遅い。そんなことをしても美香は戻ってくることなんて2度とない。
俺は、一番手放してはいけないものをひどい言葉で罵って傷つけ、自身で手放した。
「あぁぁぁ、戻りたい」
チャンスがあったあの日に戻りたいと、俺は心の中で思い続けるのだった。
最後まで読んでくださりありがとうございます。よろしければ評価・レビューお願い致します。
バカな方は自分だった。 羊丸 @hitsuji29
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます