バカな方は自分だった。
羊丸
喧嘩 前編
「ねぇ、和真」
彼女の美香がスマホをいじっている俺に冷たく声をかけた。
「ん? どうした」
俺はスマホで返事を返しながら返事をした。
「あんた、人が声をかけている時にスマホいじってさ。それ、また相談してくる女の人」
美香の言葉にそうだよと返事をした。
「その人、あなた以外に相談とかしないわけ」
「さぁ、わかんねぇけど、どうしたんだよ」
俺は顔を向けると彼女は多少の怖い目つきをさせていた。
「怪しいからそう言っただけよ」
「怪しいって、まさかお前俺が浮気しているとか思っているわけ」
俺は思わず起き上がって言った。
「あなた、おかしいと思わないの?」
「だーかーらー、ただ話を聞いているだけで彼女とは愛人とかそうゆう関係じゃあないんだって何度言ったらわかんだよ」
美香にそう叫んだ。
美香は俺の怒りを無視して話を続けた。
「だって私たち付き合っていることをしたなかったらまだしも、もしも知っていたら相談メールを頻繁するの、おかしくない。ときどきならまだわかるよ。時々ならね。だけど、他にもいるはずなのになんであなただけに」
「あー、もぉ。うっせぇなお前。人の心とかねぇのかよ」
俺は髪を掻きむしりながら叫んだ。喧嘩の理由は会社の後輩でもある女性からの相談のことだった。自身のメールアドレスを彼女から相談ということで交換をして頻繁にその相談に乗っていたのだった。
相談理由は彼氏関連や人間関連に、仕事関連など様々なことだった。
「俺は紳士に相談を聞いているだけなんだぜ。お前も分かれよ」
「……私の話は聞かないくせに」
美香は小さい声でつぶやいた。
「は? なんだよ」
俺がガン強くいうと、美香は叫んだ。
「私の時は話なんか聞かないくせに!!!! 彼女のことなら話はいつだって聞くんでしょ!!! その人との差を感じている私の気持ち、わかるの?」
美香は涙目で訴えかけた。涙目になる姿に少し動揺したものの、俺はそんな彼女がひどい嫉妬をしているもんだと思った。
「……あぁ、わからねぇよ。ただこっちは親身に話を聞いているだけなのにさ。何お前、嫉妬してんの? それで俺が相談女と話すんなーとかいうわけ。お前マジで最低だな」
俺は蔑んだ目をして言い放った。その言葉を聞いた彼女はひどく悲しい表情をさせた。
「私は、私はただそう指摘しただけだよ」
「あぁ、そうだな。でもお前、完全に嫉妬している顔じゃん。まぁいいよ、お前がそうゆう奴ってことがつくづく感じられたぜ」
俺は呆れながらため息を漏らした。
「……もぉ、いいよ。何度話しても私の話は聞き入れてもらえないんだね」
美香は寂しそうな目を向けながら別れようとつぶやいた。
その言葉を聞いた俺はそこまでの女なんだなとつくづく感じながらいいよと返答をした。
美香は荷物をまとめると、合鍵を置いて部屋を出た。
「なんだよあいつ。ただ俺は紳士に話聞いているだけだってのに。わかんねぇ女だぜ。全く」
俺はそう言いながら合鍵を棚の中にしまい、相談に乗り続けた。
「たくっ、あいつ何度もあぁ言ってんのになんで否定ばっかなんだよ」
彼女と別れてから2ヶ月、俺は後輩の相談を終えて疲れたと思いながらベットに転げた。
あれから一向に後輩は俺の話を聞いては半分賛成しつつも、行動なども起こしても半分は否定ばっかするようになった。
あれ以来、彼女と別れてから1週間に休日を含めめて3日来るようになっていき、話を聞くのも疲れて半分は出ないようにしていた。
冷蔵庫を開けようとするとスマホが鳴った。見てみると、友人でもあり、会社の同期の
待ち合わせ場所に行くと、すぐさま飲み屋に入り、酒をすぐさま頼んだ。
「どうしたんだお前、結構疲れている顔だぜぇ」
颯は意地悪そうにニヤニヤしながら揶揄った。
「まぁな、実はさぁ」
颯は注文してきたビールを煽り、愚痴り始めた。
「前はそうじゃあなかったんだけどよ。あいつと別れてから急に頻繁に相談し始めてさぁ、なんか彼女気取り」
俺はそう言いながら颯のことを見た。颯は驚きと呆れの表情が入ったのを見せた。
「おい、どうし」
「お前、何してんだよ」
「は?」
「何、後輩のことばかりかけて彼女の忠告の話は信じなかったんだよ。彼女さんのこと言っていたこと、完全に合ってるぜ」
颯の言葉に俺はますます意味がわからなかった。
「いや、どうゆうことだよ。合ってるって」
俺はそういうと、颯は「しらねぇの? その後輩の噂」と口にした。
「あいつ、相談とかって頻繁に男をあさっているっていう話だよ。結構会社の中じゃあ半分知ってるんだぜ。というか女子は全般知ってる。中には彼氏をマジで取られかけたっていうやつもいるんだぜ。その話を聞いて俺はあいつと関わらないようにしてんだよ。それに、お前は感じなかったんだよ。あいつのメールの頻度がおかしいこと」
颯の言葉に、俺は考えた。
確かに彼女と別れたことを後輩に言った瞬間、まるで彼女気取りかのようにメールで相談を頻繁にするようになって言った。
自身は付き合っているというのを感じていないのに、おまけに彼女の言葉が頭をよぎった。
『他に相談する相手が他にもいるはずなのに』
その言葉に「あっ」と声を漏らした。俺の表情と言葉に颯は大きなため息を漏らした。
「やっと気づいたかよ。お前、後輩がおかしいことにさ。それにさっきも言ったけど、なんで後輩だけの話だけは聞いて彼女さんの言葉は聞かなかったんだよ」
颯の正論の言葉に俺は何も言えなかった。ただ、初めて後輩に相談というのを持ちかけられて思わず正義感を感じていたため、彼女のことを半分放置をしていた。
その差を感じていた彼女はどれだけ辛かったのか今更感じられた。
颯の言葉と共に重くて苦しい後悔と彼女に言った言葉での罪悪感がのしかかった。
「俺、俺」
「お前さ、こんなこと言うと鬼畜だけど、後悔したって遅いぜ。何せ別れているんだろ。おまけにその感じだと、メールもブロックされているはずだしさ。ともかく、街中で出会ったら謝罪をしろよなー」
颯は目の前にある串焼きにかぶりついた。俺はその間、何も手をつけられないでいた。ただ聞こえてくるのは飲み屋で日常に聞こえる声だけだった。
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