第2話 プライドと絆
新田誠と沢村遥香の勝負の日々が続き、周囲も彼らの関係を面白がるようになっていた。互いに負けん気を剥き出しにし、時には火花を散らしながらも、どこか微妙なバランスを保っている二人に、クラスメートたちは密かに期待と興味を抱いていた。
ある日、放課後に遥香が誠の席へやってきた。「今度の土曜日、学校でボランティア活動があるの知ってる?」
「知ってるよ。でも、僕は別の用事があって参加しないつもりだったんだ」
遥香は不服そうに彼を睨む。「ふーん、逃げるんだ」
その一言に、誠は思わず反応してしまった。「……逃げる? 僕が?」
「そうよ。だって君、勝つ自信がないから参加しないんでしょ?」
誠はカチンときたが、同時にその挑発に乗るのも尺に触る気がして、冷静を保とうとした。「別に僕が勝ちたいわけじゃないんだ。単に他の予定があるだけさ」
しかし遥香はニヤリと笑みを浮かべ、「じゃあ、その予定、少しずらしてみたらどう?一日くらい、私と一緒にボランティアをしてみない?」と、誠を試すように言った。
土曜日、二人は学校のボランティアに参加することに。近くの公園での清掃活動だったが、二人の性格がここでもぶつかり合った。
「誠君、ほら、ゴミの分別ちゃんとできてないよ」と遥香が指摘する。
「そんな細かいことをいちいち気にしなくてもいいだろ?」誠は少しイラついたように返すが、遥香は全く動じない。「完璧主義なら、こういうところも完璧にやらないとね」
「……分かったよ」と言いながらも、誠は密かに彼女に負けまいと張り切り始めた。
二人は息を合わせるようにゴミを分別し、次第にその作業が心地よいリズムとなっていった。やがて、クラスメートも混じり、笑い声が絶えない楽しい雰囲気に変わっていく。誠はふと、これまで感じたことのない、皆で一つの目標に向かって協力する喜びを覚えた。
休憩中、誠はベンチに座りながら遥香に話しかけた。「君って、どうしていつも僕に勝負を挑むんだ?」
「どうしてかって?」遥香は少し驚いたような表情を見せ、それから照れくさそうに微笑んだ。「私ね、誰かと本気で向き合って競い合うことが好きなの。新田君は、その相手として最高なんだよ」
その言葉を聞いた誠は、内心動揺しつつも自然と顔が緩んだ。「そうか。じゃあ、これからも勝負に付き合ってやるよ」
遥香は嬉しそうに笑い、「負けないからね!」と宣言した。
夕方になり、二人は清掃活動を終えて校門を出た。遥香が一歩、二歩と誠に近づいてきたかと思うと、ふいに誠の肩を叩いた。
「今日は楽しかったね、誠君。また一緒にやりたいな」
その言葉に、誠の胸が少しだけ温かくなるのを感じた。勝負という形をとっていても、彼女との日々が少しずつ楽しくなっていることに気づいた瞬間だった。
二人はそのまま並んで帰り道を歩く。何か特別な言葉を交わさなくても、心の中に新しい感情の欠片が芽生え始めていた。
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