第3話 疑惑と友情
誠と遥香の絶え間ない勝負の日々は、クラスメートたちの間でも話題となっていた。二人は成績やスポーツだけでなく、ボランティア活動や趣味でも競い合い、互いに認め合う関係を築き始めていた。
そんなある日の放課後、クラスメートの佐藤が二人の元にやってきた。「おい、新田と沢村、ちょっと相談したいことがあるんだけどさ」
佐藤は野球部のエースで、強豪校との練習試合が迫っている。佐藤の表情は真剣そのもので、二人を校庭に呼び出した。
「実は、部内でちょっと問題があってな。最近、部員同士の信頼関係がうまくいってないんだ」
誠は少し驚きながらも、「どうして僕らにそんな話を?」と尋ねた。佐藤はため息をつき、「お前らみたいに正面からぶつかり合って信頼関係を築くのって、大事だなって思ったんだよ。だから、アドバイスが欲しいんだ」
遥香が微笑んで、「つまり、私たちが参考になるってこと?」と冗談っぽく言うと、佐藤は少し照れながら頷いた。
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翌日、誠と遥香は佐藤の提案で、野球部の練習に参加することに。佐藤の狙いは、二人の競い合う姿を通して部員たちが互いに刺激を受け、チームとしての一体感を取り戻すことだった。
誠と遥香は、最初は慣れない野球に戸惑いながらも、次第に競い合いながら練習を楽しむようになっていた。遥香が軽快にボールをキャッチする姿に、誠もつい熱くなり、負けじとバットを振り始めた。
「見てろ、今度はホームランだ!」と誠が言い放ち、思い切り振り抜いたバットがボールを捉えると、ボールは高く宙に舞い上がった。結果は惜しくもフェンス手前で落ちてしまったが、彼の全力を尽くす姿に、部員たちは感嘆の声を上げた。
それを見た遥香も負けじとバッターボックスに立ち、力強くバットを振り抜く。「負けないわよ!」と宣言し、彼女もボールを勢いよく飛ばした。
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練習が終わると、部員たちの表情はどこか晴れやかだった。佐藤が二人に礼を言い、「お前らのおかげで、なんかみんなのやる気が戻った気がする」と感謝の言葉を口にする。
誠は少し照れた様子で「まぁ、僕らができることはこれくらいだけど、君たちもちゃんと信頼し合わなきゃダメだぞ」と言い、遥香も「そうよ。信頼がなければ、どんなに力があっても勝てないから」と優しく笑った。
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その帰り道、誠と遥香は校門を出た後も並んで歩いていた。ふと、遥香が小さく呟いた。「ねぇ、新田君。今日、佐藤君に頼まれたとき、どう思った?」
誠は少し考えてから、「正直、僕にできることがあるのか不安だった。でも、君と一緒にやったからこそ、なんとか役に立てた気がする」と答えた。
遥香は満足そうに頷き、「そうだね。私たちが一緒にいることで、少しでも誰かの力になれたら嬉しいよ」と微笑んだ。
彼らは自分たちの競い合いが、周囲に良い影響を与えたことを感じ、互いの存在がますます大切なものになっていくのを自覚した。
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