第19話

「お世話になってます。少しお伺いいたいのですが、先日、トレーナーがなくなったのと発信されていた方がおられましたが、その後、見つかりましたか?何となく気になりまして…。」

クラス役員の人に個別にラインを送ってみた。

しばらくして返信がきた。

「こちらこそお世話になってます。

先日のトレーナーは犯人が見つからなかったので、幼稚園側で対応をしてもらいました。気にかけていただき有難うございます。

もう犯人を詮索することも無いと思いますので、終わったことと受け止めております。

ご安心ください。

失礼します。」

え。

どういう事。

犯人?

しかも、最後の「安心ください。」って、何?まさか、家の子、疑われて、本当に犯人にされてる?まさか…💦💦

私は焦った。

どうしよう。

ほんとに、冗談じゃないっ💦💦

とにかくアイミにもう一回確認した。

「ねえ。トレーナーの事って、その後、誰か何か言ってた?アイミがトレーナー着て帰ったの?って、先生に聞かれたの?」

「ううん。聞かれてない。誰も何も言って無い。」

「アイミが着て帰ったって、思われたままだったら、どうする?違うよ!って、先生に言っといた方が良い?」

「うん。」

そうだよね。

幼稚園側で対応してるという事は、担任に確認するか…。

あんまり担任の事、信用してないけど…。


次の日、担任の先生に聞いてみた。

「先日、お友達のトレーナーがなくなったと聞いて、家の子が、着て帰ったと、誤解されてたようなのですが、実際、どうなったのですか?」

ハッキリと聞いてみた。

「えー。太郎君のトレーナーですよね。見つからなくて…。結局、幼稚園側で、新しいトレーナーをお渡ししました。私が、お教室内を管理できてなかったのが原因なので…。お騒がせしました〜✨ご心配なく〜。」

ん?

ご心配なくって、何だ?

もしかして、家が犯人で、犯人にされてるかどうか確認してると思われているのか?

最後のご心配なく〜。は、家が犯人ってわかってて、黙ってあげてるんやで〜っていう風に思われてる感じがする。

モヤモヤするけど、その場をやり過ごして、園庭で遊ぶ事にした。

副担任の先生が通りかかったので、さっきと同じ事を、聞いてみた。

しばらく考えた後、副担任の先生は、話し始めた。

「太郎君は、教室のロッカーにトレーナーをしまってたらしいんです。チエちゃんと、アイミちゃんが外遊びの帽子を忘れて2人で取りにお教室に入って…。その後、トレーナーが、なくなってたんです。いろんな子に聞いたんですけど、アイミちゃんが着て帰ったと、みんなが言ってたので、間違いないと思います。園児といえども、口を揃えて同じ事を、言うという事は、そうなんだと思います。」

「え。え。え。ちょっと、待ってください。家は、自分のトレーナーを着て帰っただけで、他の人のものなんて、着て帰ってないですよ?何かの間違いです。きちんと調べてください。」

「お母さん、申し訳ないですが、大人も、子どもも、あなたが犯人ですか?と聞いて、はい。そうです。なんて答える人は、いません。でも、お教室の管理を怠った担任、副担任、園側の責任がありますので、個人を責めることなく、再発防止に努めるという事で事なきを得てます。」

な、な、何でそうなる〜?

私はアイミが言ったことを正直に話した。

「チエちゃんが、お教室の真ん中に落ちてたトレーナーを寒いから着て帰ろうと言って、着て帰ったと聞いています。聞いてみてください。」

副担任は、ムッとした様子で、

「人のせいにされるとは思いませんでした。チエちゃんは、お父さんが大学病院の助教授、お母さんは、看護師をされていて、立派なご家庭です。落ちているトレーナーを着て帰るようなご家庭ではありません。

申し訳ないですが、アイミちゃんは、ご家庭での環境に問題があるのでは無いですか?寂しかったり、注目を浴びたくて、人のものを取ってしまうという子もいますよ。もっと、子どもさんをみてあげてください。」

え、え、え、何でそうなる?

はらわたが煮えくりかえったが、

「違うはずですが、もう一回、確認します!」

その言葉を発するのがやっとだった。




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