行方
@bossyu
彼との出遭い
とあるファミレスで彼を待っていると、向かって左側にある入り口のドアが開く。
席を立ち彼に合図を送ると、軽く会釈をしてこちらへ向かってきた。
彼は席に着くなり机の端にあるタブレット端末を手に取り、ドリンクバーを注文する。
彼はただのフリーターなのだが、とあるものに遭遇してしまったらしい。
そこでホラー作家の僕に話を持ちかけてきたそうだ。
まだ5月と言うのに、既に半袖短パンの彼をここからは「Aさん」と呼ぶ。
Aさんは少しため息を吐く。
そのため息は、心なしか少し恐怖を感じているようにも受け取れた。
一呼吸置いたあとにAさんは話し始めた。
「あれはある日、深夜に散歩してた日なんですけど......」
コンビニで夜勤のバイトをしているAさんはただ凪のように流れていく人生にどことなく鬱屈な感情を抱き始めていた。
そんなAさんはこう続けた。
「まぁいつもの通りで、いつもの道を通ってたんですけど、いきなりなにか違和感があったんですよね。 「なにかいつもと違う」そんな気がして、少し戻ったんです。 そしたら電柱に行方不明のポスターが貼ってあって、ライトで照らしてみたんです。
そしたらそのポスターにこんなことが書いてあったんです。」
ここからはAさんの証言を元に書き起こした文章の抜粋である。
行方不明者 小川みきとくん 11さい
失踪時期 3月中旬
特徴 身長140~5cm、長い髪、離れ目、首が長い。
連絡先「●●●-●●●●-●●●●」
「初めてそれを見たときに、得体のしれない恐怖を感じてすぐさま家に帰ったんです。
顔写真も暗くてよく見えませんでした。
4日後くらいですかね、また散歩していて、「流石に昨日とは違うルートで行こう。」と思って、ぶらぶら散歩をしていると、また見つけたんです。 捜索願い。」
Aさんは食い気味に少し前傾姿勢でこちらへ寄ってくると、心なしか少し口角を上げながらすぐさま続けた。
「しかも今後は少し変で、顔写真が明らかに違ったんです。 写真撮ってあるんですけど、見ます?」
僕は得体のしれないものを見てしまう恐怖で少し躊躇いながらも見せてもらうことにした。
「これね、見てくださいよ。 これが、1回目に見つけたポスターで、これが、2回目。 あ、1回目のは同じところにまた行って撮ってきました。」
Aさんの言う通り、2枚の顔写真は明らかに違った。
明らかにだ。
1枚目は少し髪が長い男の子だった、子供部屋のような場所に座りカメラ目線の笑顔でピースをしている。
どこにでもいると言ったら嘘になるが、至って普通の男の子と言う印象だ。
問題は2枚目だった。
背景は1枚目と同様、子供部屋のような場所なのだが、ピースをしている男の子の顔には真っ黒くペンのようなもので塗りつぶされており、よく見たら男の子から笑顔が消えている。
特徴の欄には、
特徴 身長140~5cm、長い髪、離れ目、首が長い、おそってくる。
と書き足されていた。
「何なんですかこれ...?」
Aさんに聞く。
僕はどこか不安げな表情を見せつつ、内心はワクワクして堪らなかった。
行方不明の彼は一体何者なのだろうか。
行方 @bossyu
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