おそらくは最難関であると思われる「オープニング」も、改めて読み直してまいりました。先に述べましたとおり、私は【旧版】の方が好みでございます。今回は、私が【改稿版】よりも【旧版】を推す理由をお伝えさせていただきたいと思います。
まず第一の理由は、【旧版】では「読者のユーキへの好感度」が下がらないといった点ですね。ここから物語を引っぱっていくユーキが嫌われた状態では、なかなか読者はついてきてはくれないのではないかなと。【旧版】ではアレクが自分勝手にも見えますが、明らかに深い事情があることを察することはできますからね。アレクの好感度が下がることもないのではないかなと考えます。
第二の理由は、【改稿版】の方には、タイトルにもあります「嫌い」という言葉が出てこないといったものですね。私自身は「タイトル回収」にはあまりこだわらないのですが、数々の批評や感想を拝見するに、多くの評者さまが「タイトルが回収されているか」を見ておられるようです。いずれ「嫌い」は登場するのだとは思うのですが、やはり「決別」のシーンにおいても「嫌い」は欲しいと感じました。
そして第三の理由は、【旧版】には〝2人の目的はまだ果たされていない。既に目的の為に代償も支払った後だ。その犠牲を、決して無駄にはできない。〟という文章が入っていたことですね。これがあることによって、この別れは単なる「追放」ではないんだということを察することができました。
上記の文章を頭に入れたうえで【改稿版】を読みますと、たしかに「ユーキはアレクを守るために、願いを叶えさせないようにしている」と受け取ることができます。おそらく願いを叶えることによって、アレクに災いが降りかかるのでしょう。
単純に「死ぬ」というわけではなく、たとえば「最も大切な人を失う」や「化物に変わる」などといった、周りを巻き込む系なのだろうと推察します。ですが、私がこのように好意的に読み取ったのは、【旧版】の件の文章が記憶にあったからに他ならないんですよね。したがって【改稿版】の方にも、それに類する一文があれば良いのではないかと感じました。要は「ユーキにも事情があるんだ」といったものですね。
やはり皆さまのコメントを拝見するに、ユーキの好感度を第一に考えておられる印象です。もちろん、私自身もです。〝主人公のユーキに特徴がなく、魅力がない〟と仰られていたのですが、少なくとも私には、旧版のオープニングや第1話だけでも彼の魅力は充分に伝わってまいりました。だからこそ、彼が嫌われてしまうのは忍びないと感じてしまったわけですね。もしかすると、今後の読者さまからは「ユーキがどんな感じに〝闇堕ち〟するのか楽しみです」といったコメントも寄せられてしまうかもしれません。あくまでも私の感覚ですと、これは不本意な感想なのではないかなと。
ちなみに私が感じとったユーキの魅力は、「正義感が強い」「年齢の割に達観している。つまりは決断力があるのだと感じる」「家事などが得意。おそらくは面倒見も良く、仲間思いであることが推察できる」「ガサツな言葉遣いとは裏腹に思いやりがあり、心優しい性格である」といったあたりですね。この最序盤だけでこれだけの情報が読み取れます。主人公としての魅力も適正も、充分ではないでしょうか。
こうして改めて理由を挙げてまいりますと、ユーキに対するフォローさえあれば、【改稿版】の方がインパクトもあり、掴みとしては最適ではないかとも思えるようになりました。やはり主人公が嫌われるリスクは極力避けるべきではないかと考えますね。私が代表作を投稿する際にも、酷評動画などのコメント等で「主人公が敬語を使わない。タメ口で話してるだけで読む気が失せる」などと言われており、主人公の好感度管理に大変苦労した経験がございます。せっかく改稿されるのであれば、この「地雷」をわざわざ踏む必要はないのではないかと考えます。
こちらも読者の一つの意見として、お納めいただけますと幸いです。
こうして作品について真剣に考えることは、私としても楽しかったです。貴重な経験の機会をくださり、本当にありがとうございます。
作者からの返信
幸崎 亮さま、本当に何度もありがとうございますっ。
クドいかも知れませんが、何度でもお礼を申し上げますっ。
オープニングは、正直に申しますと予想外でしたねぇ。
まさかここまでハッキリと「【旧版】の方が良い」と言われるとは……。
それも幸崎 亮さまを始め、皆さんが仰られるように「ユーキの好感度」が問題なのだという事ですね。
確かに、「初対面での印象は大事」と言いますからねぇ。
【改稿版】のオープニングを見て、第1話のアレクのシーンから、ユーキのシーンへと移っても「こいつがアレクの敵か」ってなりますよねぇ。
ユーキが闇墜ちする予定はありませんし、例えのようなコメントを言われたら困惑してしまいますねぇ……。
そしてまとめて下さった結論からすると、「ユーキの事情」などのフォローがあれば【改稿版】は悪くないと……。
なるほど。そこさえ上手く出来れば、他の方々も同じように言ってくれそうな気がしますね。
そちらの方向性で考えてみようと思いますっ!
あと、「ユーキの魅力」を取り上げて下さってありがとうございますっ。
ほとんど仰る通りでビックリしました。
予想外のキャラデザインを目指した訳ではないので、ある程度は予想しやすいかとは思いますが……。
それでもこれだけユーキの特徴を正確に挙げて下さったのは嬉しいですね。
私などの作品に、ここまで手間と時間を割いて頂いて本当にありがとうございましたっ。
幸崎 亮さまたちのアドバイスを受けて、多くの読者さまが「面白い」と言って下さるような作品を目指して頑張りますっ!
こんにちは。失礼ながら初めて読みました。いつもの感覚で、あまり深い考察などはせずに読んだ結果として、めちゃくちゃ個人的な好みで勝手なことを言うので話半分に読んで頂ければ幸いです。
まず私は改稿版派です。
旧版と比して動きがあるからです。
私は動きがなくても会話ベースでキャラの掛け合いがあればいいと考えていますが、旧版はよく分からない2人がよく分からない言い争いをしているという印象でした。
この「よく分からない」というのは作者にとっては心外かもしれませんが、読者にとっては昔からの親友としか情報がないのです。もう少しキャラ付けや背景がほしい。初回からあまり説明過多だとくどくなるのでバランスが難しいところですが…。
これは改稿版にも言える点で、どういう人物であるのか多少の肉付けは欲しいと感じました。
さらに、2人が袂を分かつ謎ですが、物語的にはすぐ明かすわけにはいかないというのは分かります。ですが、何かしらの匂わせすらないのは置いてけぼり感がありました。関係する過去の記憶が一瞬過ぎるとか、葛藤する心理描写を挟むとかで、より「どういう事情なんだろう?」と引き込めるのではと思います。
作者は2人のこれまでを知っているので、あの2人が袂を分かつなんて! とすぐに思えるのは理解できます。
ただ、読者的には登場したばかりの旧友らしい2人がケンカ別れをしたところでさほど興味は惹かれません。2人に思い入れがあって初めて、あの2人が? となるのではないでしょうか。
ですので、例えばですが、身寄りがなく家族同然に暮らしていたとか、共に冒険して強大な魔物を幾度も倒したとか、そういう多少の掘り下げがあると親友という言葉に説得力を持たせられますし、別離の重要さを際立たせることができるのではと素人ながらに思いました。
……で、すみません、ところどころ主語がでかかったですね。読者=私です。
他の方の感想とぶつかる点もあるでしょうし、この辺でやめときます。
もっと書きたいことあるけど、めっちゃ長くなってしまった…。
作者からの返信
千日越エルさま、お久しぶりですっ。
ご意見、ありがとうございますっ。
まずは改稿派という事で、ありがたいご意見です。
【旧版】は動きが全くありませんでしたからね。そこを褒めて下さったのは素直に嬉しい意見です。
そして、今までの企画でもよく言われていた「よく分からない2人」という意見ですが、実は私にとっては心外ではないんですよ。
千日越エルさまの仰る通り、読者にとっては情報がほとんど無い状態で「2人が別れる」という事しか分からないので「よく分からない」と思われる事自体は問題ではありませんでした。
問題なのは、「読者がそれを問題視している」という事ですね。
私としては本編の始まる第1話から、ユーキとアレクの絆を深めていき、ふとした瞬間にオープニングを思い出して「こんなに仲の良い2人が、どうしてあんな事に?」と思って頂くのが狙いでした。
ですが多くの読者さまはそうはならず(そう思って下さった読者さまもいらっしゃいますが)、「あのオープニングは結局なんなの?」という事になってしまっているように感じます。
これは千日越エルさまの仰る「別離の重要さ」をオープニングでは語らず、後に持ち越すという手段を取った弊害ですね。
もう少しオープニングで、2人の関係を語る表現などがないかを熟考してみますっ。
こういったご指摘を下さる場合、主語が「読者」となってしまうのは分かりますので大丈夫ですよ。
私も『激辛批評』ではよく「読者」と言ってますし。
他の方のご意見とぶつかるのも、私としては色々な意見が聞けてありがたい事です。
何より、同じ意見ばかりだと方向性が固まってしまいますからね。
最終的にどうするのかは作者である私次第ですが、みんなが「右がいい」と言っているのに私だけが「左を選択」してしまうと、意見を下さった方々も「せっかくアドバイスしたのに……」と思ってしまうかも知れません。
色々な意見があればこそ、私も自由に取捨選択がしやすくなりますね。
ともあれ、大変貴重なご意見ありがとうございましたっ。