episode 5.信長(受)✖️ 光秀(攻)

 光秀は落ち着かない様子で、御簾みすの向こうを覗き見た。

 ここは信長の寝所、普段は御簾の外に護衛の侍が控えている。


「どうした?人払いはしておる、心配ない」


 信長は光秀を後ろから抱きしめて、うなじに唇を這わせながら右手を着物のあわせに差し入れる。


「あっ‥‥‥」

 その手の冷たさにびくっと身を引く。と、尻の辺りに信長の強張こわばりが当たった。


 信長は胸元から手を抜いて、光秀のはかまの紐にその手を伸ばした。


「本当に良いのですか」

 袴の前に伸びてきた手を握って、信長に背中を向けたまま光秀が問う。


「ああ、ずっと願ってた」


「殿‥‥‥」

 光秀は、身体の向きを変えて、信長と向かい合う。


「二人だけだ、その呼び方はやめろ。昔のように呼んでくれ」


「‥‥‥ノブちゃん」

「嬉しい、ミッちゃん!」


 二人は固く抱き合って敷いていたしとねに転がるように倒れ込んだ。


 ‥‥


「あ、そこ‥‥」

 信長は、身悶える。


「ここがいいのか」

 光秀はさらに攻めたてる。

 ‥‥


 目眩めくるめく濃密な時間が流れ、信長は光秀の腕の中で眠った。


「ううん‥‥‥」

 目を覚ました光秀は、伸ばしていた腕の痺れを感じ、信長の頭の下から腕を抜いて寝返りを打った。


 光秀が動いた気配を感じて、信長も目を覚ました。光秀が背中を向けている。



「やだミッちゃん、寝返らないで!」

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