第11話:デルタ
:獣人ッッッ!?
:待って、これマジ!?
:合成じゃねえよな!?
:バカお前、ウミコちゃんが合成なんかするわけねえだろ殺すぞ
:スクショしますた
:いやこれコスプレでしょ流石に……。
:有害胞子飛んでる環境でマスク無しコスプレは正気じゃねえだろ
「人間……じゃないんだよな……ッ!?」
「見て分かんねーかナ!!」
「人間みてぇな姿してるくせに、何をいまさらッ!!」
「人間じゃないヨ!! デルタは……デルタダ!!」
……配信のコメントなんて読んでいられるわけない。
俺はハンマーで殴られたような衝撃を受けて、動けないでいる。
いや何やってんだ馬鹿野郎、動かなきゃ──殺されるッ!!
「お前、力強いナァ!! 人間にしては、ダケド!! ダケド、デルタの方が強イ!!」
「ッ……やっば──」
ハンマーでカチ上げて足を払い除ける。
だけど、そのままアクロバティックに側転した獣人は──尻尾で地面を支え、思いっきり足を曲げる。
「飛び、ナァッ!!」
ズドォンッ!!
腹の中のもの、全部ぶちまけるような衝撃。
そして、身体が重力を無視して吹き飛ぶ感覚。
「いっでぇ……!?」
鉄の匂いがする痰を吐き捨てる。ハンマーは……握ってて良かったな。我ながら根性あるぜ。
「ああクソ目障りだヨ……飛び回る羽虫はサッ!!」
大きく跳んだ獣人が──1つ目のドローンを掴む。
なんだあいつ、やっぱり人間の跳躍力じゃない……!
「ッラァッ!!」
ぶん、と腕をフルスイング。
掴んだドローンを、浮いているもう1機に投げ付けたのだ。
火花が散ると共に二つは墜落、地面に落ちて爆散……ど、どれだけ肩強いんだよ……!?
『さ、撮影用ドローン、破壊されました……2機共……!!』
「ンなこと分かってるよ!!」
『よ、予備は!? こっちから、そちらの状況が分かりません!!』
「そんなもん打ち上げる余裕あるわけねえだろ!!」
超人化で強化された身体が、鎧で守られているはずの身体が──ダメージを受けてる。
アバラは多分何本か折れた。内臓もヤバいかもしれない。
カンガルーの蹴りは──人間が喰らったら命が無いくらいの威力だ。オマケに、尻尾で身体を支える所為で、足までもがフリーになる。
両手、両足、全てを使ってカンガルーは戦える……!
「はっ、はは……」
あれ? 俺もしかして笑ってんのか?
俺今立つのもやっとなんだぜ? 目の前の敵は──とてもヤバイ。調さんも、ウミコちゃんもこのままだとヤバい。
全部ヤバいのに……笑いが止まらねえや。
「ははははッ!! すげえ!! すげえすげえ!! やっぱり俺は……俺の見たモンは本物だった!!」
「何笑ってやがんダヨ!! 大人しく食われなッ!!」
そりゃ、そうだよな。
やっぱ俺があの時見た竜人は見間違いなんかじゃなかった。
獣人が居るんだ、竜人だっているに決まってるよな……!
「──第7音奏……”
爆音が鳴り響く。
電気の檻が──デルタの周囲に現れる。
調さんの”魔音奏”だ!
「あっぎ、うるさいうるさいうるさいッ!! ちょっと、その不愉快な音楽止めろヨッ!!」
「ウミコちゃん、今のうちだぜ──ッ!!」
耳を抑えるデルタ。
そしてその背後からロングソードを抜いたウミコが切りかかる。
「オーケーッ!! 覚悟だよッ!!」
檻が消え、当然デルタが後ろ蹴りを見舞うがそれをしなやかに舞ってウミコは躱す。
だが──ロングソードによる斬撃は──デルタの毛皮に食い込むが切り裂くには至らない。
「うっそ、硬すぎ──!?」
「うざったいナ──ッ!」
鈍い音が響き、ウミコの身体が崩れ落ちる。
拳だ。カンガルーの武器は──足だけじゃない。
同族同士の喧嘩に用いる拳の威力も凄まじい。
「ごっは……!?」
「お前は邪魔だから……どっか行ってロッ!」
ウミコの頭を掴んだデルタが、思いっきりウミコの身体をぶん投げた。
その華奢な身体は遠い後ろの方でぼちゃん、と音を立てて──しまった!! 川の中!!
「さあ、次はどいつダァ!?」
マズい、流石にあのパンチ喰らって川の中は──溺れる!!
助けに行きたいが、このままじゃ調さん一人に任せる事になっちまう──ッ!!
「第3演奏ッ!! ”
ズドンッ!!
落雷がデルタに落ちる。
恐ろしい事にこれでもまだピンピンしてやがるが──立て続けに調さんは更に曲を変える。
さっきと同じ、電気の檻をデルタが覆った。
「第2音奏……”
「だぁあああああ!! また、これかヨ!! さっさと出セェ!!」
「今のうちだッ!! ウミコを助けにいけやァァァーッ!!」
調さんの絶叫が聞こえてくる。
時間を稼いでくれてる──今のうちだ!
特殊ゴーグルを付けて川へ飛び込む。
……良かった! 割とすぐそこにウミコが沈んでる!
足をバタ付かせ、彼女を抱え、力いっぱい泳ぐ。
そして引っ張り上げ、岸に寝かせる。
……鎧の所為で、ちょっとした泳ぎも一苦労だ。いや、むしろ超人化の恩恵でこの程度で済んでるのか?
「おい、ウミコ!! ウミコ!! 聞こえてるか!?」
「ごほっ……ごふっごほっ」
ウミコのマスクを外すと、水を吐き出してはいるが──気を失ってしまっている。
あのパンチ、大分効いたみたいだ。鎧が凹んでしまってる。
「ウミコ、ウミコ、しっかりしろ……!?」
「う、ぅあう……」
あのフィジカルの化物、倒すのはかなり難しいぞ。
かと言って、テイムはウミコが気絶しちまってて無理だろうし……。
「あークソ、折角出会えたのにな……強すぎるぞ、アイツ……!!」
竜人じゃなくて獣人だけど、漸く見つけられたんだ。
諦められるわけねえだろ。
倒す?
いいや、出来りゃあこのまま仲間にしたいくらいだ。
こんな状況じゃなきゃ跳び上がって喜びたいくらいなんだぜ。
だけど倒せねえならいっそのこと懐柔してテイムした方が速いまであるんだよ。懐柔出来れば、の話だけど。
「……テイム、か……」
俺の視線は、横たわるウミコに向いていた。
……待てよ──粘膜接触ってそもそも、エッチである必要は無いのでは──?
体には粘膜沢山あるわけで……。
今まで酔った末に襲われたり媚薬香水吸わされて襲われたパターンが極端だっただけで……エッチである必要はあるのか……?
おい待て、俺。
幾ら緊急時とはいえ大分最悪な事考えてるぞ。
「きゃあああああ!?」
「よくもやってくれたナァ!! こんな小細工でデルタを殺せると思ったのカァ!?」
マズい。調さんの電気檻が壊された。デルタのヤツ、調さんの首を掴んでる──!!
ッ……やるしかねえ。
気を失っているウミコの唇に──俺は自らの唇を重ねる。
本当にゴメン。だけど……正攻法で勝てないなら邪道でも何でも使うしかない。
「おらぁ、カンガルー女!! テメェの獲物は俺だろが!!」
「ッ……!!」
ウォーハンマーを構え、地面に思いっきり振り下ろす。
雷鳴が真っ直ぐにデルタに向かって飛ぶ!!
「チッ、まーだ動けるのカヨ!!」
調さんを投げ捨て、デルタは掌で雷鳴を弾き、俺目掛けて思いっきり跳びかかった。
やる事は変わらないッ!! ハンマーで受け止めるッ!!
「ッ……ルカ!! 聞こえてるかッ!!」
『……おにーさん!! 今、配信を中止して江戸川の大穴に向かってます!! そっちは──』
「それよりも”契約”だッ!! ”契約”のスキルについて分かる事を教えてくれ!!」
『はぁ!? まさか、あの獣人テイムするつもりなんですか!?』
「いいから、教え──ゴハッ!?」
「腹が留守だヨッ!!」
ズドン、と重い拳がめりめりと音を立てて鎧に入る。
や、ばい。滅茶苦茶口が酸っぱい。今日食ったモン、全部戻す……!
「おぇっ、ごほっ……!!」
『おにーさん!? 今凄い音が──』
「いいから、教えてくれ……!! お前だけが頼りなんだ──ルカ!!」
「さっきから誰と喋ってやがんダヨ。デルタと死合ってんだ、デルタだけを見ロッ!!」
そりゃこっちの台詞だ。
目の前の獲物ばっかりに目が向いてるから、本当に見ないといけないもんを見逃すんだぞ!!
「第3演奏ッ!! ”
「がぎッ──!!」
落雷が的確にデルタの脳天を直撃する。
調さんだ。辛うじてだけど、まだ戦えてる……!!
「この野郎──さっき、殺しとけばよかっタッ!!」
「ロックンローラーはなァ!! 死ぬまでロックに生きるんだよッ!!」
フラついたところに、俺もハンマーを振り回してデルタに攻撃する。
「よしッ、今のうちだ!!」
『”契約”は前提として、使用者が相手の生き物を強く仲間にしたいと思ってるのが条件です!』
その条件なら問題ない。
この生死が掛かった状況でも、俺はコイツを仲間にしたい。
未知が。俺の追い求めていたものへの手掛かりが。目の前のコイツから感じられる。
『そして”契約”を発動した場合、相手の動きが一時的に止まるので──その間に相手の好物……それも、クリティカルに今食べたい物をあげれば、相手を懐柔させることが出来ます!』
「ははーん、”好物”ね──ッ!!」
『でも、その好物を正確に把握しないと、相手を懐柔させることは出来ません!! ですが、失敗すれば当然反撃を受けます……!! 後、すっごく疲れます!!』
好物、それも今食べたい物──あるじゃねえか。
すぐここに!
「発動条件は!!」
『相手を縛り付けるようなイメージをしてください!』
「やらなきゃこのまま全滅だ!!」
強烈なキック、そしてウォーハンマーがぶつかり合う。
互いの目が合った──縛り付けるイメージ……強く、縛り付ける──鎖とかどうだ!!
「──何だヨ、コレ──!?」
じゃららら、と音が鳴り、デルタの身体に青白いエネルギーの鎖が現れる。
よし──スキルはちゃんとコピー出来てる!! 成功だ!!
「ッ──巡さん!?」
「よう、デルタ……お前──欲しいんだよな!! 俺の肉がッ!!」
籠手を外し、デルタの眼前に俺は左腕を差し出した。
「──ッ!! 喰わせ、ろッッッ!!」
ぐちゃっ、と肉が潰れるような音。
そして腕が握り潰されるような強烈な痛みが襲い掛かる。
デルタの長い犬歯が俺の腕に深々と刺さっている。
だけどこれで良い。
俺の事が食いたかったんだろ──たっぷりと食えよ!!
「あっぐッ──!?」
「巡さん!? 今助けます!!」
「手を出すなッ!! これで──終わりだッ!!」
間もなく、デルタの首元に輪が現れる。
「ギィッ……!? こ、これは……!!」
「……半ば無理矢理だけど……これで”契約”成立だ……!!」
「この野郎、何しタァ……!」
ふらりと意識を失い、デルタは倒れ込んだ。
……せ、成功だ。
「は、はは……やったぜ……テイム成功だ」
あ、ヤバイ。
頭に酸素がいかない。
腕がめっちゃ赤い。
いや、辺り一面、全部赤い気がする──
『おにーさん!? どうなったんですか、おにーさん!?』
「ル、カ……」
駄目だ。
……立って、られねえ……。
「巡さん……あ、しゅ、出血がひどい……!! 巡さん!! しっかり!! 巡さんッ!!」
※※※
「……さん」
……誰かが、呼んでる。
誰だ?
天国じゃ、ないみたいだけど……。
「……おにーさん」
天井が、白い。
ベッドがある。
体が──とても痛い。
「おにーさんッ!! やっと起きた……ッ」
「……ル、カ……?」
俺、結局どうなったんだ……?
「わりィ、ルカ……此処は」
「病院ですッ! あの後、爆速で駆けつけて……おにーさんとウミコさんを運んだんですよ!! それからおにーさん、2日くらい起きてなくて……」
「マジか……結局、お前に助けられちまったな」
「何かあった時に助けられないんじゃあ、鍛えた意味がありませんから!」
……そりゃ頼もしいや。
うちのプロデューサーは最強だもんな。
「ウミコは──大丈夫そうか?」
「すっかり平気だそうです。配信を見て救助したってあの子には説明しました」
「なんて言ってた?」
「私を見て悲鳴を上げて……昇天してましたね……」
「……だろうな」
曰く、今回のダンジョンではエラい目に遭ったが、憧れのルカに助けて貰ったので全部良しとする、とのことだ。
ついでにキラーカンガルー達3匹も無事らしい。
「調さんは?」
「一番ピンピンしてましたよ。よく調を守ってくれましたよ、本当に」
「いや、逆だ。調さん居ねえと俺は一方的に蹴られて終わってた。ウミコを助ける時間を稼いでくれたのも調さんだし」
「なら……完璧な前衛と後衛の連携だったと思います」
「だと良いな。……で、包帯ぐるぐるに巻かれてる俺の腕は……どうなってんだ?」
「再生スキルと手術の併せ技のおかげで、なんとか元には戻るようですよ。バイキン入ってたんで何本も抗生剤の注射打ってますけど」
「そりゃあ……まあ、デンジャラスだけど……生きてるから良いか」
「良くない!!」
潤んだ目で──ルカはこっちを見下ろす。
「……よくない、です。出血酷くて、おにーさんが死んだらどうしようって何度も思いました」
「……悪い、心配かけた。でも俺、無我夢中で……」
「分かってます。だから、責めるのはお門違いですよね」
ルカは──俺の胸に顔を埋め、ひくっ、ひくっ、と啜り泣いていた。
そうか。そりゃそうだよな。俺達の事、助けに来てくれたんだもんな。
今でこそ俺は普通に喋ってられるけど──俺、死にかけてたんだよな、きっと。
「相手が自分を狙ってるからって、自分の肉を食わせるなんて……あんな無茶苦茶なテイム、見た事無いです」
「……へへ、俺バカだからそれしか思いつかなかった」
「……生きてて、良かったよ……おにーさん……」
……ああ、良かった。
死んだら多分、本当にこの子……ショックだっただろうな。
分の悪い賭けなんてやるもんじゃねえや。
「ただいま、ルカ」
「……おかえりなさい、おにーさん……!」
※※※
「で、此処にデルタが収容されてるのか」
……いつものスキル開発センター。
だけど、施設はスキル研究を行う本館だけではない。
ダンジョンに生息する危険生物の研究を行う「生物館」もあるのだ。
見た目は完全に人だが、やっぱり動物扱いなんだなアイツ……。
「世間では、世紀の大発見だの何だのって言われてますが……デルタ本人はおにーさんを連れて来いの一点張りみたいで」
「何だろうな、怖いな……」
「そもそも、あの獣人は何でおにーさんを狙ったんでしょうか? テイムの餌は、余程その生物が今食べたいものじゃないといけないんです」
「──厳しいんだな」
「……てかちょっと待って下さい。冷静に考えたら、あの火事場でどうやって”契約”のスキルを習得したんですか? まさか──」
「俺は何だと思われてんだ!? 唇も粘膜だろーが!!」
「キスしたんですか!? 寝てる女の子の唇に!?」
「しゃーねーだろ、あそこで”契約”使わなきゃ、どの道俺達が先に倒れてただろーからな」
……これでスキルは3つ目。
やむを得なかったとはいえ、本当にウミコには申し訳ない事をしたと思っている。多分彼女は何も知らない。
「体目当てならぬ……スキル目当てだったんですね」
「やめろ、人を嫌なヤツみたいに言うな」
「心配させた仕返しですよーだ」
「あのー……こっちですね」
係員に案内された先には、拘束具を取り付けられ、歯をむき出して威嚇するデルタの姿があった。
うーん、やっぱ見れば見る程獣人だ。だけど退院したての所為かテンションが上がりきらねえ。
病院食……マズかったからかな……。
「……オイ!! どうなってんダ!! 力が出なイ……前はこんなの簡単に引き千切れたのに……!」
きゃいきゃいと騒ぎ立てるデルタ。
無理もない。”契約”でテイムされた生物の力は多少なりとも抑え込まれる傾向にある。
枷を外せるのは主人の俺だけだ。
しかも、主人の力量に見合わない力は発揮させられないというのだからよくできている。
「オマエのあの術の所為カーッ!! 元に戻セ!!」
「お前が俺の質問に答えたら考えてやるよ」
「ホントか!?」
元に戻すとは一言も言ってねェけどな。
「……何で俺を狙った?」
「分かんねーのカ? オマエ……すっごく狙われてルゾ」
「バカ言え、何ならオメーが最初に襲って……」
「あの場所の生き物、皆ダ!」
「……」
俺もルカも顔を見合わせた。
「おい。どういう意味だ。俺は狙われ系ヒロインか?」
「オマエからは、竜王の血の匂いがスル。おっかなくて殺したくナル奴も居るダロな。ま、デルタは……戦いたかったダケだけどナ!!」
「……竜王? 何だそりゃ。俺は大昔のゲームのラスボスになった覚えはねーぞ」
「おいおい何も知らないンダナ」
カカカ、とデルタは笑う。
……待てよ。嫌な予感がしてくる。
「王が居るって事は、貴女みたいな姿の獣人が沢山居るって事ですか!?」
「居る。ただ、デルタが目覚めたのが一番乗りだったダケさ」
「そりゃカンガルーだけってのはちゃんちゃらおかしい話だが……!」
係員も「私達は今、とんでもない事を聞かされているのでは?」と顔を合わせていた。
「その中でもすっごく強いのが……王様!! デルタたちの王様は獣王って呼ばれてテ……トカゲ共の王様は”竜王”!! そして、オマエには竜王の血が流れてル!」
んなわけねーだろ!! 俺ァ人間だ!!
「……おい待てよ。ちょ待ーてーよ。何で俺にそんなおっかねえモンの血が流れてんだ、俺の家族は皆人間だ!!」
「……ねえ、おにーさん」
「何だよ!! お前まで俺の事を竜王だって言うのか!? 悪いけど火も噴けねえし竜の姿にも変身できねーよ!!」
「幼い頃、竜の姿をした女の子に助けられたって言ってませんでしたか?」
「……」
「その時、どうやって助けられたんですか?」
……。
助けられたと言っても、俺は迷宮に落ちた後は意識が朦朧としててあんまり覚えてない。
ただ、目の前にあの娘がやってきたのは分かったんだ。
「俺は……あの時、何された……?」
だけど、出血が酷い傷なのに妙に治りが速いのを不思議がられてた。
それこそ本来なら輸血でもしないと死んでそうだとか言われてた。
救助隊に救助されたころには傷が塞がりかけてたらしい。
その後、そんな風に傷が速く治ることなんて無かったから、気にも留めなかったけど……。
「そういうことか!! クソったれ!!」
血を分け与えられたんだ!! どうやったのかは分かんねーけど!!
じゃあ、だとしたら──
「おいデルタ、その”竜王”って自分の血を他のヤツに分けたりとかって出来るのか?」
「出来るらしいゾ。噂で聞いタ。そいつを啜ると、もっと強くなれるって噂ダ!! 新しい力が目覚める、トカ、翼が生えるトカ!!」
「数え役満じゃないですか!」
……血液検査でも何も言われた事無いのに。危険生物共にしか分からねえニオイとかあるのか。
「じゃあ何だ、あの時のアースロも、カルノも、全部俺を狙って襲ってきてたのか……!!」
アースロは草食だから純粋に脅威として俺を排除しに、そしてカルノは俺を食いに、って事か!!
「ところで、デルタ。貴女、おにーさんの肉を食べたんですよね?」
「ああ、そうだケド」
「……強くなりました? 翼が生えたり新しい力目覚めました?」
全員は──沈黙する。生えていないな……翼。
「食った時も……”味はフツーだな”って思っタゾ。新しい力も目覚めたカンジがしないゾ」
「狙われ損じゃねーか俺!!」
「所詮、噂は噂だったって事ですね……」
ただただ狙われやすくなるだけかい!!
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