第5話:仲間が増えるよ!やったね!
「コ、コホン……お、おはようございます……」
「……ああ、おはよう」
2回目でもやはり照れは出てしまう。
こんな爛れた関係、外に公表できるわけがねえだろ。
「昨晩の事は忘れて下さい……」
「忘れようがねぇんだわ、だって誰かにバカスカ飲まされた所為で覚えてねーんだからな!!」
珈琲をズズ、と飲み──ルカは大袈裟にちゃぶ台へ突っ伏した。
酒が本当に大好きなのだろう。それは分かる。だが、理性がトんでしまうなら、きっと飲まない方がいい。
「ほんとーに、ごめんなさい」
「誰かれ相手にでもこうなるなら、マジで酒はやめた方がいいぜ」
「……まだ、おにーさん相手にしかこうなってないです……」
「なら猶更やめろ!! 好きでも何でもない相手と、なんてマジでよくねえって!! 親御さんに何て説明すれば──」
「居ないです」
「え」
顔を上げ──ルカは言った。
「心配してくれる親も、兄弟も……私には、居ません。皆……私が物心つく前にダンジョン災害で死んじゃいました」
「……そう、だったのか……悪い。俺、何にも知らずに」
「ううん。誰にも言ってないんだから知ってる訳ないです」
ダンジョン災害の恐ろしさは、俺も良く知っている。
突如、住み慣れた町が崩壊していき、後に残るのは──巨大な空洞。
インフラも、住処も、大切な人達も、全部破壊されていく。
(……家族が生き残った俺は……きっと、ラッキーな方なんだ)
ダンジョン黎明期には、これが世界中で多発し、世界の文明は──退廃し、衰退した。
何処で起きるかも、いつ起きるかも分からない。そんな恐怖を人々に与えた。
「私、施設育ちなんです。そんな私が此処まで稼げたのは生まれつきスキルを持ってたから。皮肉ですよね。両親を奪ったダンジョンで、今は……稼いでる」
ルカの刹那的な生き方に、少しだけ俺は得心が言った。
彼女は天涯孤独。心配してくれる家族が、何かあった時に戻る場所が──無いのだ。
「私……寂しかったのかもしれません。……お酒を飲んでる時だけ、私は……寂しさを誤魔化せるから」
「そんな飲み方してたら、いつか破滅するぞ」
「はは、もうしてますよ……行きずりの男の人を、2回も襲って……誰か私を殺してください……」
相手がまだ俺で良かったまである。世の中にはもっと悪い男が沢山居るのだから。
「……私の周りには、人が沢山居ました。友達も、リスナーも、会社の人も……沢山」
「じゃあ、せめて友達やリスナーに心配かけさせるような真似はするなよ」
「でも、彼らに迷惑も心配も、かけられないじゃないですか。寂しい、なんて言って……重い女だって思われたら、嫌だったんです」
「だから……酒に逃げたのか」
「私、世間で思われてるような良い子じゃないんです。すっごく面倒くさくて、重くて……嫌な事があったら、すぐに逃げて……配信で良い子のフリするのも、良い子を強要されるのも、すっごく嫌だった」
だけど──それを悟られて、距離を置かれるのも嫌だった。
……ルカは、ずっと無理してたんだ。
「だから、おにーさんも……私が邪魔になったら、いつでもお別れしてくれて良いです。私は……JURAみたいに、貴方を雁字搦めにするのは望まないですから」
つとめて明るく、ルカは言ってる。
だけど──本心は絶対にそうじゃないことくらい、俺にも分かった。
「私の事は心配しなくて良いんです。今までも1人だったし──」
「……じゃあ何で話したんだよ。ずっと、我慢してたんじゃねーのか」
そうやって誤魔化すなよ。
辛くて寂しいのにヘラヘラ笑うなよ。
「……付き合いの長い友達より、会ったばかりのおにーさん相手の方が……幻滅されてもダメージ少ないかなって」
「幻滅なんかしねーよ。……いや、酒癖の悪さには幻滅したけど……ルカ、自分で思ってる以上に限界が来てるんじゃねーか」
「……貴方に何が分かるんですか」
「寂しいって思う事なんて誰だってあるだろ。俺だって、ある」
「でも、おにーさんには家族が居るじゃないですか!! 帰る場所が、あるじゃないですか!!」
「……あんま、家族仲……よくねーんだよ」
「……え?」
……折り合いってヤツが悪くないんだよな。
「分かるだろ? この年まで、攻略者になれるはずもねーのに石掘りばっかしてたからな……親も俺の事、半ば見放してんだ。弟は優秀で、デカい企業に入ったから、さぞ誇りに思ってるだろうけど……俺なんて夢追い人紛いの出涸らしだ」
だから……家族に頼れないのは、俺も同じだ。
せめて生活費は自分でやりくりするって条件で今まで1人でやってきたから……今更親には頼れない。でも、諦めきれなかった。
あの日見た竜の女の子は──それほどまでに脳裏に鮮やかに焼き付いて、今も爛れて離れない。
「結局人それぞれ、何かしら孤独を抱えてるモンなんだよ。表に出さねえだけだ。だけど、寄り合える誰かを見つけて……割り切って、生きていくんじゃねーか」
「……ごめん、なさい。何も分かってないのは……私の方、でした」
「良いんだ。家族が生きてるだけ俺はまだラッキーな方だ。でも……ヤケクソになるのはやめろよ」
少なくとも、今の俺には──ルカが必要だ。それに、放っておけない。そこまで男は廃れてない。
「俺達もう、ただの行きずりじゃなくて……配信仲間だろ。誰にも頼れねえって思った時は、せめて俺を頼れ」
……どっか他の悪いヤツについていくよりは、多分その方がよっぽど良い。
最初は間違いから始まったけど……俺は丁度独り身だし。
「その代わり、俺もルカを頼る。それで──貸し借りも、負い目もナシだろ?」
「……良いんですか?」
「折角君のおかげでダンジョン攻略者になれたんだ。これくらいさせてくれよ」
多分、俺に出来る事はそれなんだ。折角手に入れた力は、有効活用しないとな。
「それに、俺のスキルは君のコピーだ。まだまだ教えて貰いたい事、沢山あるんだよ」
「私で良ければ──」
「何言ってんだ。君じゃないとダメだ。”抜刀絶技”は君のスキルだろ」
「ッ……も、もう! 初配信の時もそうでしたけど、恥ずかしい事を言わせたら一級品ですね!」
「ああ!? お前、折角人が慰めてるのに──」
「──良いです。そこまで言うなら、乗ってあげます」
赤い瞳が、俺を真っ直ぐに見つめた。
「改めて、よろしくお願いしますね──おにーさん」
※※※
「──じゃあ、早速昨日の反省点からです。ダンジョン配信の良い所は、後で自分の良くなかった所も見返せる点です」
「剣を使うのが下手、か……」
「それだけじゃありません。人には相性の良い武器というものがありますので」
「ピッケルは武器にはならねーぞ」
「壁は壊せましたけどね」
面と向かって言われると凹む。
だけど、やはり長年ピッケルばっかり振っていた所為で変な癖がついてしまっているという。
「当初、私はこれを矯正しようと思ってたんですけど、もっと良い方法があってですね」
「良い方法?」
「自分に合った武器を使う事、です」
ネットの通販サイトを漁っていくと、あまり見慣れない武器が出てきた。
「……ウォーハンマー。別名を戦槌です」
「なんだこりゃ」
見ての通り大きな金槌のような武器だ。
「打撃武器であり、刺突武器でもあります。金属をも砕くピッケルを武器として転用したものです」
「成程な。これなら俺でも使いやすそうだ」
「剣、斧、槍、刀これらに比べるとマイナーですが、石掘上がりの人は戦槌がオススメなんです」
「配信文化の弊害か……絶対需要はありそうなのに、人気な武器にどうしてもシェアを奪われちまう」
「人気な武器は使ってる人も多く、教えられる人も多いですから。でも、戦槌は──重さに慣れれば、ピッケルの動きがそのまま使えるはずです」
「力仕事なら任せてくれ。これでも一人で魔鉱石運んでたからな」
それに加え、スキルが覚醒した今は、更に重い物でも楽々運べるようになった。スキルが覚醒した人間は例外なく身体能力の高い超人となるからだ。
「その代わり”抜刀絶技”とは若干相性が悪いかもしれません。納刀の動きが取りにくいので、基本的に振り回しっぱなしになると思います」
「……”抜刀絶技”は切札で取っておく、って感じか……」
「そうですね」
結局、強いスキルを手に入れても生かせるかどうかは当人の素質次第、か。
世の中そんなに甘くないってワケだ。
それにルカは、長年刀の技術も”抜刀絶技”のスキルも鍛えている。熟練度も高い。
「んじゃあ、手ごろなヤツを次の配信までに注文しておくよ。昨日の配信で手に入れた中級魔鉱石を売れば、資金は簡単に調達できるだろうし」
「ええ。そうしてください。それと──もう1つ準備をしないといけないですね」
「というのは?」
「仲間です。……あの深層に行くなら、1人では厳しいでしょう?」
「良いのか!?」
「おにーさんの目標を考えれば、いずれは避けて通れない道ですから。私だって見たいんです。おにーさんの言ってた──人型の竜を!」
となると、思ったより早く、あの場所に行くことにはなりそうだ。
あのエリアは今まで誰も行った事が無い場所だ。度々内部構造が変わるダンジョンでは珍しいことではないのだが、当然中には見た事のない危険生物、そして──宝が埋まっている可能性もある。
是非、探索はしたい。しかし、洞窟ばかりだった中層とは違い、深層は──何が起こるか本当に分からない場所でもある。
俺も1人だと不安が残る。
「……アテはあるのか?」
「あると言えばあるし、無いと言えば無いです」
「どっちなんだよ」
「……あ」
ピピピ、とルカのスマホが鳴った。
誰からだろう、と疑問を挟む間もなく通話が始まる。
「もしもし──」
「あ、ルカちゃーん!? き、聞いてよぉ……また、オーディション落ちちゃったぁ……」
「……あー、どんまいですよ」
「ぐずぐずぐずっ、調のギターって何で理解されないんだろう……世界が憎いよ、闇落ちしちゃうよう……」
「……あははは。ところで、それに伴ってお話したい事があるんですけど、良いですか?」
「なぁにぃ……?」
「調にとっても、悪い話ではないと思いますっ! 続きはそっちの家で!」
「ちょっとルカちゃん! 何にも説明しないのはルカちゃんの悪い癖──」
ぷつり。
通話が切れて、ルカは悪い顔で俺の顔を見た。
今度は何を企んでやがんだコイツ。
「今、アテが出来ました!」
「誰だったんだ?」
「私の──年上の友達です。音石 調……ネットではそこそこ有名なギタリストなんですけど、色んなレコード会社や企画のオーディションを受けて度々落ちてて……」
「可愛そうに……」
「でも、同時に──彼女は昔、私と一緒にダンジョンに潜ってたんです。戦力としては申し分ないですよ。こっちに引き込みたいですね」
「オーディションに落ちたのを喜んでないか?」
「失礼な! 彼女がメジャーデビューしたなら、それはそれで喜びましたとも! でも、そうはならなかったので、早速彼女の家に行きましょう!」
……「良い子じゃない」を自称するだけあって、やはり腹に一物抱えてるなこの子……。
ただ、俺としても仲間が増えるのはありがたい。どんな子なんだろうな、ルカの友達。
※※※
「──ねえ、ルカちゃん……男の人を連れてくるの、聞いてないんだけど……」
「まーまー、彼は思いっきり今回の話に関係あるので!」
「すみません、此奴がいきなり言い出したことで……何なら俺は外でも構わないんで」
「い、いえ! ちょっとビックリしただけで……こっちこそルカちゃんがごめんなさい」
マンションの部屋から飛び出してきたのは、長い黒髪で眼鏡を掛けた、何処かおっとりとした女性だった。
雰囲気も大人びている。ルカが子供っぽいから猶更際立つ。
「俺は日比野 巡って言います。今は──えーと、なんて言ったら良いのかな」
「私がサポートしてダンジョンの攻略と配信をやってるんです」
「相方みたいなモンで」
「そ、そうなの……!? ルカちゃん、裏方なの!? むしろ、攻略する側って思ってたけど」
「一回、裏方やってみたかったんですよ。ワケを話すと長いんですけどね」
「取り合えず、お茶を出すね。先に行ってるから!」
どたどた、と慌てた様子で彼女は奥の方へ走っていく。そして間もなく「きゃああ!! 痛いっ!! あだだだだ!?」と悲鳴が聞こえ、何かが割れる音。
それを聞いて取り乱しはしないものの、ルカも追うように走っていった。
「全くもう!! 相変わらずドジなんですから!!」
「だ、大丈夫か!?」
「あ、あうう、見ないでぇ……」
フローリングで滑って転んだのだろうか。
調さんが台所の前で転んで、尻を突き出したまま起き上がれないでいる。
スカートがめくれ、黒いレースの下着が嫌でも目に入ってしまい、俺は目を反らす。
「ほら、今助けますから!」
「割れた食器、片付けとくぞ」
「ごめんなさぁい……」
……この人とギターっていまいち結びつかないな。ギタリストって、もっとロックンロールなイメージがあったんだが……。
「……見苦しいところを見せてごめんなさい……ちょっと、緊張しちゃって」
「いや、悪かったよ。いきなり押しかけるような真似して」
大体何も説明していないルカが悪いんだけども。
「それでルカ。その人を連れてきたってことは……」
「ええ。私がプロデュースする、新しいチャンネルを立ち上げたんです。いずれはJURAに負けないような配信グループを作りたいんです!」
「大きく出たなぁ……この子、自分の言ってる事、分かってるのかなあ……」
「大丈夫。このおにーさんは、見所は多いですよ! 昨日、江戸川の大穴で深層への道をこの人が見つけたんです」
「ウソ!? 深層への道!? そりゃそっか、ダンジョンってたまーに見つかるよね新しいエリア……」
「そこで、その場所の探索をするために、調の力を借りたいんです」
「頼む。昔、ルカと一緒に攻略やってたんだよな? 強いんだろ?」
「……ルカちゃん程ではないです」
「いやいやー? そんな事はないですよー?」
チッチッ、とルカが指を振った。
こいつはこいつで偉そうだな……。
「調のスキルは”魔音奏”。音に魔力を乗せて攻撃出来るんです」
「そりゃ凄い! 音が……攻撃になるって事か!?」
「昔の調は、特注の専用ギターをかき鳴らしてラプトルの群れを全滅させてましたからね。でも、本当にギターにハマっちゃって今ではこの通り」
「今は音楽一筋のつもりだよ」
成程、最初は武器として使ってたギターを、楽器としても愛着がわくようになってしまったのか。普通は逆な気がしないでもないが。
何故なら本来ギターは武器ではないからである。
「もし、配信で有名になったら、メジャーデビューのお声がかかるかもしれないんだよ?」
「正直練習に専念したいんだけど……」
「でもほら、この防音室のマンションで資金もカツカツなんでしょう?」
「それは……そうだけどぉ……」
……ルカの奴。詐欺師の才能があるな……人の弱みを握る才能だ。
友人と言うだけあって、懐事情も把握しているのだろう。
「なあ、もし良かったら演奏の方を聞かせて貰っても良いか?」
「え! 興味あるの!? 調のゴキゲンギターに!? 嬉しいな!」
「あ、ああ……折角だし聞かせて貰いたいんだけど」
ぐりん、とルカが俺の方を見た。何だそのマズいものでも見るような顔。
「では、こっちが防音室なので」
「えーと……ちょっと覚悟が必要かもですよ、おにーさん」
「何の覚悟だよ」
「あ、フレグランスが切れてる! 替えないと」
防音室に入ると、すん、と良い匂いの残滓。
焚くタイプの香水が置かれていたが、もう中身が残っていないのか、調さんはそれを取り換える。
「香水が好きなんだな」
「あの子、昔から練習の時はエッジの効いた香水をガンガンに焚くんです」
「エッジって何だエッジって」
「先鋭的とかそんな感じのサムシングです。多分彼女も自分でよく分かってるか怪しいです」
そんなもんを焚くなよ。アバウト過ぎるだろ。
「……しばらく匂いは消えないものと思っててくださいね」
「覚悟ってそういうことか?」
「いや、そっちもあるんですけど……」
「取り合えず最近買ったこれにするね。スイッチオン、と」
お、仄かに花のような香りがしてきた。
きっとギターも穏やかなバラード的なアレなのかもな。
防音室の椅子に座り、ギターを構える調さんを見た俺は──この時はそう思っていたのだ。
「うん?」
がたり。
ギターを構えるなり、調さんは──前髪を思いっきり掻き揚げ、目をカッと開く。
「テメェらァァァーッ!! 今日は調のライブに来てくれてサンキューッッッ!!」
ギュイイイイイイイン!! ギャリギャリギャリギャリギャリーッ!!
重低音、そして──さっきまでとは打って変わってのデスボイスが防音室に反響した。
オイ待て。誰? 今喋ったの誰?
あの、調さん? キャラが変わり過ぎでは?
狂気的な笑みを浮かべた調はピックを握り、ギターをかき鳴らし始める。
「チェェストォオオオオオオオオオオオオオオ、イッパァァァツッッッ!!」
そこから先は──もう凄まじかった。
とんでもない勢いとスピードの超絶技巧。
こりゃあ……危険生物共も死ぬわ、という演奏だった。
終わった後、息を切らせた調さんは、前髪を下ろしぺこぺことお辞儀する。
「あ、ありがとうございました……」
「ああ……ガンガン来たぜ……鼓膜に……」
満足げにギターを下ろす調さんだが、正直こっちはビックリした。
どうやら、ギターを握ると人が変わるタイプみたいだ。「覚悟しろ」ってのはこういう事だったんだな……。
「あー、気持ちよかったぁー♪ どうだったかな?」
「心なしか体もあったまった気がするぜ。良い演奏だった」
「そう? 良かった! ああー、人に喜んでもらえるのなんていつぶりだろう!」
「ギターだけでもやってけそうなもんなのに、世間の目は冷たいよなあ」
「上手い人は……他にも沢山いるから、仕方ないよ」
調さんは何処か諦観しているようだった。
……やっぱり音楽の世界も厳しいってことなのかもしれない。
「にしても暑いなこの部屋……暖房、切っていいか?」
「え? 暖房なんて付けてないけど……そういえば、さっきから調も暑い……」
「ルカ。お前は大丈夫か?」
隣に座るルカ。しかし──既に彼女は耳まで顔を真っ赤にしていた。赤い瞳は涙で潤んでいる。
「ル、ルカ!?」
「う、うにー……体、熱い、ムズムズします……」
もじもじと股をすり合わせながら、ルカは俺に寄りかかってくる。
そういえば、さっきから部屋中に充満した香水の匂いがやけに脳に響いてるような……。
頭がボーっと……。
「な、なあ、調さん!? この香水、大丈夫なヤツなのか!? 本当に……ッ!?」
「あ”ッ」
「どうした!?」
香水のラベルを見た調は──引き攣った笑みを浮かべながら言った。
「ご、ごめん……”エッジの効いた香水”じゃなくて……”エッチな気分になる香水”だった、コレ……!」
「ファーッッッ!?」
今までどうやって生きてきたんだ、この子は──ッ!? ドジっ子が過ぎるだろーッ!!
オイ待てよ。なんか俺まで変な気分になってきたんだけど。拒みたいのに、拒めない!
体中がジンジンするし、ルカの身体が触れてる場所がこそばゆくて──
「うにー、おにーさーん、ゴロゴロゴロ」
「おい!! ルカが様子おかしいんだけど──」
「ごめんなさい……コレ、媚薬入りで──もう限界……」
「何でそんなもん買っちゃったんだ、この子ーッ!?」
──ダメだ。
俺の理性はこれで終わりだ。全身が熱い。今更止められない。
「……おにーさん……」
「巡さん……」
服をはだけさせ、下着を露出させた女の子二人が迫ってくる。
ルカの、未成熟で凹凸の無いボディライン。
そして調さんの、大人な下着が似合うくっきりとしたワガママボディ。
こんなの見せられたら、もう体の自由が効かない。
「……滅茶苦茶に、してください……」
「滅茶苦茶に、して……?」
……此処から先の記憶はない。ぷっつり、と糸の切れたような音が頭の中で響いたのを最後に……本当に覚えていないのだ。
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