第3話 サボテンの相談内容
「で、相談なんですけどね……」
サボテンのマスターが事情を話し始めた。
「まあ、見ての通り私は多肉植物で鉢に植わっているので、指示を出してパートさんやアルバイトのみんなに働いてもらうんですよ。昼間はパートさんが多くて、夕方以降になると学生アルバイトに交代するようなイメージで営業してます」
「なるほどな、昼間は主婦の方のパートで、学校が終わった学生が夕方から働くイメージなんだな。まあよくあるパターンだぜ」
「……で、その学生アルバイトの方がですね、女子が1人と男子が2人なんですよ。女子がシロクマで、男子はヒグマとツキノワグマなんですよね」
「それぞれ、お名前は何というのですかねぇ?」
「シロクマの女の子がシータちゃんで、店ではしーちゃん、って呼ばれてますね」
「ラジアン角度みたいなお名前ですねぇ」
「で、ヒグマがベータくん」
「放射線みたいなお名前ですねぇ」
「で、ツキノワグマがチータくんと言うんです」
「
「それでですね、以前はうまく行ってたんですが、なんか最近ギスギスしているというか……とくに男子2人の連携が取れなくなってしまって、悩んでいるんですよ。みんないい子たちだから、辞めてほしくないし……」
「まあ、みんなと話してみないとわからないんじゃない?」
確かに、ボクも姉の言う通りだと思った。
「常連のお客さんの言うには、三角関係かもしれないそうなんですが、私は多肉植物なもので、クマの恋愛事情とかにはうとくて、それでクマの皆さんにご相談しようと思ったんですよ」
「なるほどなぁ。とりあえず、おれ達で話を聞いてみるか……」
「夕方になれば、パートの方と交代するので、様子を見て行ってもらえないでしょうか?」
「わかったぜ」
とりあえず、交代の時間までまだ時間があるので、マスターがサービスでケーキを出してくれた。
「このコーヒーロール、美味しい!」
熊子ちゃんはコーヒーロール、姉はガトーショコラ、クマーリャはモンブランを食べている。男性陣は左党が多いのでケーキは遠慮していた。
「ところで、ここのお店のコーヒーはどうやって淹れているのか、教えていただいてもよろしいですか?」
当然だが、クロジさんは相談事よりもコーヒーの淹れ方の方が気になるようだった。
「うちはバイト主体で回さないといけないから、サイフォンとか操作の難しい機器は入れてないんですよ。最近は出来のいいコーヒーメーカーがあるから、それを使えば下手なハンドドリップよりも美味しくできます。うちは昔からの純喫茶スタイルに近いので、エスプレッソマシンとかは置いてないです」
「なるほど。豆の挽きかたはどうされてるんですか?」
「豆は、このカリタのハイカットミルを使っています。グラインダーミルよりもカットミルが断然いい」
「伝説の業務用名機ですね……」
「カットミルと他のミルでは、全然味が違います。手回しのグラインダーミルなんかよりもカットミルの方が断然美味しいです」
「僕もカットミル好きなのでわかります。ところで、マスターはコーヒーをどうやって味わってらっしゃるんですか?」
「ああ、アルバイトくんたちに根に少したらしてもらって、根から味わってますね。砂漠の植物なんで沢山は飲めないんですが」
サボテンがどうやってコーヒーの味を見ているのかずっと謎だったボクたちも、これを聞いてやっと納得できた。
「あとは焙煎ですが……」
「ある程度まとめて焙煎して、密封して保存しています。豆の種類と焙煎度合いはマニュアル化してあるので、アルバイトくんたちは時間と量をチェックして回すだけで大丈夫です。真空包装機もあるので、豆でも販売してます」
「うちの店もマスターの所から買ってみようかな……」
「しかし、こういう話を書いている分にはいいけど、この先が心配だぜ!」
「またしてもメタ発言ですが、どういうことですか?」
「いや、この話、読者が考えてくれたキャラを入れた特別編ってことで始まったんだけど、学生の恋愛事情だぜ?おれやクマイやクロジがそういうのうまく解決できると思うか?」
「死ぬほど苦手な分野ですねぇ……」
「僕もわりと職人的生き方をしてきちゃってるからね」
「まあ、始めた以上先へ進めるしかねえんだが」
「また途中で休載にならないといいですけどねぇ……」
※ 「365歩のマーチ」で有名な演歌歌手の水前寺清子さんの愛称は「チーター」
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