第18話
事故から2ヶ月後、俺は無事に先に退院していた彼女に迎えられ、退院した。
(病院とは無縁だと思ってた俺がまさか秋さんに迎えに来て貰うことになるなんて…)
自分の情けなさに頬をかく俺に、彼女が俺の荷物を運ぼうとするもんだから俺は慌てて立ち上がった。
「秋さん!なにしてんの!荷物は俺が運ぶから車乗ってて」
「だって、からちゃん治りたてでやわやわなんでしょ?」
(やわやわ?)
「いや、安定するまで居させてもらったし、リハビリもバッチリしたから大丈夫だよ」
「治って良かった!」
「そうね」
無邪気に微笑む彼女と同時にニコニコと頷きながら桐也も車へと乗り込んでいく。
(やっぱりお前も来んのかよ…)
心でため息をつきながら荷物を運び終わった俺は運転席へと乗り込もうとしたが、そこには既に彼女が座っていた。
「え…秋さん?」
「今日は私が運転するよ、行きたい所あるし」
「行きたい所?そんなのナビ使えば俺だって運転出来るよ、秋さんより慣れてるし」
俺の言葉に彼女は頬を膨らませると「事故った人の"慣れてる"は信用しません!」とそっぽを向いた。
そう言われてしまうと俺も反論が出来ず、渋々助手席へと座る。
(厳密に言えば俺の運転ミスではないんだけどな…)
あの事故は逆走車と俺の車が衝突し、衝突した車2台は両方とも廃車となったが、俺も相手も無事に生還出来た。
警察が言うには衝突直後の俺の咄嗟の判断でのハンドル操作のお陰でお互いに人体への影響を軽減できたのだという。
(まあ…あれは桐也がハンドル操作してたようなもんだけどな)
俺は相変わらずの笑顔で後部座席に座る桐也をミラー越しにチラリと観察していると、スピーカーから彼女の歌声が流れてきた。
流れてきた音源に俺が無意識に体を揺らしていると、彼女が不思議そうな声を出した。
「あれ、この曲聴いたことあった?」
「え?ああまあ、事故の時たぶん全部割れちゃったと思うけど、俺の車にCDあったから聞いてた。あれ、秋さんが入れてたんでしょ?」
「………入れてないよ」
「え?」
「この頃の私のCDを持ってたのは私じゃないよ」
「え…でも今は…」
「これはスマホから流してるから。あのCDはこの世に1枚しかなかった」
「……………」
(どういう…)
俺が考え始めようとしたその時、ふと桐也が自分を指さして微笑んでいるのが見えた。
(お前かっ!)
原因は分かったが、だからといって俺が桐也の話を彼女に投げかけることが出来ず、しばらく沈黙が続いた。
そしてCDに収録されている13曲がちょうど流れ終わった頃、ある寺の駐車場に車が止まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます